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第101話 ダンジョンとスラスラと研究者 #3
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ごくり……
「この子……」
ううっ……
「じゃない、よ……?」
……えっ?
「この子は……その新種スライムを……ベースにした……量産型。……最下層への……階段前で……テスト運用、してた子」
呆然とする僕とラル。と、揃って同じ顔を並べる僕達の後ろから――
「あ……やっと、来た。この子が新種の……ブロッケン君……えへへ、可愛い……でしょ?」
沢山の丸い虹が霧色の体の中でゆらゆらと揺らめく――そんなスライムがやってきた。
「はっ……ははは…………よかったぁ……」
安心したよぉ……
だってもう……完全に覚悟完了してたから。
そして――
「うんうん、とっても可愛いスライムです! もう最っ高のスライムですよ! 何故です、涙が止まらないですよ……」
極度の緊張からの反動か、解け掛かった雪ダルマみたいな様子のラル。
……きっと僕も今同じ顔をしてるんじゃないかな。
「ふふ……そんなに……喜んで、くれる……なんて……嬉しい……な」
……ああ、何て純粋な。
「スライム達、に……酷いこと、した……仕返し……だった……のに」
「…………は?」
今、何て?
「一緒に、いた……セントラル……にも……八つ当たり……なのに」
「えっ? です!?」
「ふふ……やーい……ひっか、かったー」
ま、まさかこれって……揶揄われてたの?
「さ……サーケイブお姉ちゃん? まさか、これって冗談だったです? ラルに八つ当たりって……えっ、これもしかして新手の妹いじめ、です?」
「セントラル……怒っていたのは、本当。……それに……さっき通路で、『一緒に謝る』、って……言ってたよね」
……はは……全部見て聞いてたんだ。
「う……それは……そうだったです」
「でももう……いいよ……これで……お相子……ね」
「お姉ちゃん……」
これがサーケイブさんとのファーストコンタクト。
サーケイブさんって、物静かで、でも興味のあることには一生懸命で、そして新種の魔物を作っちゃうような凄いひと。
でもそれよりも何よりも、とっても愛情深くて芯が強いひと。
だって――
「みんな……カタキ……とったよ……土下座……させたよ……きっちり……泣かせ、たよ」
向こうを向いて小さな声で、そう呟く声を聞いたから。
「……さて、それじゃあここからは僕の仕事だね。サーケイブ君、今日僕達がここに来たのは君のダンジョンコアを取り囲む結界を改良する為なんだ」
「結界……の、改良……?」
「そうさ。この結界は悪い奴らからダンジョンコアを守る為のものなんだけどさ、その反面君達の通信やダンジョンの成長までも妨げちゃってるってセカンケイブ君から聞いてね。それで彼女と対応策を練ったんだ」
場が落ち着いたところで、モリスさんが結界の話を始めた。
「そう……セカンケイブ……姉さん、と……」
「うん、そうなんだ。ああ、自己紹介がまだだったね。僕はモリス、冒険者ギルドの本部に所属していて、この結界なんかのダンジョンに設置する魔道具の管理を仕事としているんだ。あと新しい魔道具の研究とかね」
「研究……研究者なら……仲間」
「おっ、嬉しいねぇ……ああ聞いたよ、君もかなりの研究者って話じゃないか。これは是非研究談義でも……と言いたいところだけど、それはまた今度のお楽しみって事で、今は結界の話ね」
「うん……わかった……」
おお、分野は違っても研究者同士で通じるものがある、って事なのかな。
それって何だかカッコいいかも。
「それでさ、ダンジョンコアの保護とどうやって両立させるかって事なんだけど、やり方はふたつあってさ――」
そして、フィラストさんの時と同じように、結界の改良か閉じたコアの部屋を用意するかって事を説明して……
「なら……丁度いい……ダンジョン、コアを……何とか……研究室に……移設、したいと……考えてた」
「ほほう! 研究室だって?」
「そう……この、ダンジョンの……真の最下層、は……私の……研究室」
それを聞いたモリスさんは物凄い前のめりで目を輝かせる。
「いいねいいね。真の最下層が研究室でダンジョンの最重要設備!……うん、実に燃える展開じゃないか! それってサイコーだよ!!」
「えへへ……あなた、なら……そう言って、くれると……思ってた」
「よしやろう。今やろう。すぐにやろう!」
「うん、それじゃ今から……私の研究室、に……ご招待」
……そして僕達は彼女の研究室に転移した。
ダンジョンコアを抱えたサーケイブの手によって。
「ほほう! これはまた随分と立派な研究室じゃないか! 研究対象は……スライムとキノコかい?」
「そう……キノコと……スライムは……実は近い種。研究対象と、して……非常に興味深い」
「へえ、そうなのか……ああ、ひょっとして『粘菌』、かな?」
モリスさんの言葉に、今度はサーケイブさんが前のめり。
「ふふ……すばら、しい……やはり、研究談義、を……」
「うんうん、僕も楽しみにしてるよ。そうだ、今度は僕の研究室に君をご招待しよう」
さっきまで瞳を輝かせてたサーケイブさんだけど、そのモリスさんの言葉に表情を曇らせた。
「それは……無理。……私はこの……ダンジョン、から……離れられない……から」
でもその反応はモリスさんの想定通りだったみたいで、僕の方を腕全体で指す大きなアクションと……うわっ、綺麗なドヤ顔!
「ふっふっふーー、それなら大丈夫! その悩み、このカルア君がどーんと解消してくれるから!」
モリスさんの視線を追ってサーケイブさんも僕に視線をロックオン。
「……カル、ア?」
で、そこからはラルのターンみたい。
「ですです! カルアお兄ちゃんは凄いです! ……ただのスラスラじゃないですよ」
ラル、スラスラはもう忘れよう。ね?
「スラ、スラ……って何?」
ほら、サーケイブさんが興味持っちゃった。どうやら上の階での『スラスラ』関係の会話は聞いてなかったみたいだけど、説明したら絶対嫌な顔するって……
「み、見るです、このラルの体。サーケイブお姉ちゃん、何か感じないです?」
「セント……ラル……ひょっとして……小さくなった? ……ごはん、食べてる?」
「そうじゃなくて……いやそうですけど……この体はラルの体じゃなくって、あの伝説の操化身なんです!」
ラルの言葉にサーケイブさんは軽く首をかしげる。キョトンって感じで。
「操化身? ……ラル……そんなの……どこで……拾った、の?」
「拾ったじゃないです! カルアお兄ちゃんが作ったですよーー!」
「えっ……作った? ……ひとの手で……神の魔道具……を?」
そして再び僕に視線を向ける。
「ですです、そうです。ラルのカルアお兄ちゃんは凄いです。ラルの操化身だけじゃなくって、フィラストお姉ちゃんとセカンケイブお姉ちゃんの操化身も作ったです」
「信じ……られない……それが……スラスラ?」
もうスラスラから離れてくださいって!
「カルア君はね、僕の弟子で魔道具作りの天才なんだよ。それに時空間魔法と錬成、更に付与術までもが天才級なのさ。で、それらを総動員して作り上げたのがこの操化身って訳なんだ」
「そう……つまり、カルアも……研究者……?」
「あ、あははは……まあそういう事、かな? じゃあ早速サーケイブさんの――」
「シル」
「……え?」
「私の、事は……シルと、呼んで。……研究者……仲間として……愛称呼び」
「うん、分かったよシル」
「じゃあ、僕もシル君って呼んでいいのかな」
「……もち……ろん」
そして僕はシルの操化身を作り……
「凄い。これが……スラスラの……力……」
ラル! それにモリスさんも!
スラスラの本当の意味、絶対にシルには秘密だからね!!
▽▽▽▽▽▽
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ううっ……
「じゃない、よ……?」
……えっ?
「この子は……その新種スライムを……ベースにした……量産型。……最下層への……階段前で……テスト運用、してた子」
呆然とする僕とラル。と、揃って同じ顔を並べる僕達の後ろから――
「あ……やっと、来た。この子が新種の……ブロッケン君……えへへ、可愛い……でしょ?」
沢山の丸い虹が霧色の体の中でゆらゆらと揺らめく――そんなスライムがやってきた。
「はっ……ははは…………よかったぁ……」
安心したよぉ……
だってもう……完全に覚悟完了してたから。
そして――
「うんうん、とっても可愛いスライムです! もう最っ高のスライムですよ! 何故です、涙が止まらないですよ……」
極度の緊張からの反動か、解け掛かった雪ダルマみたいな様子のラル。
……きっと僕も今同じ顔をしてるんじゃないかな。
「ふふ……そんなに……喜んで、くれる……なんて……嬉しい……な」
……ああ、何て純粋な。
「スライム達、に……酷いこと、した……仕返し……だった……のに」
「…………は?」
今、何て?
「一緒に、いた……セントラル……にも……八つ当たり……なのに」
「えっ? です!?」
「ふふ……やーい……ひっか、かったー」
ま、まさかこれって……揶揄われてたの?
「さ……サーケイブお姉ちゃん? まさか、これって冗談だったです? ラルに八つ当たりって……えっ、これもしかして新手の妹いじめ、です?」
「セントラル……怒っていたのは、本当。……それに……さっき通路で、『一緒に謝る』、って……言ってたよね」
……はは……全部見て聞いてたんだ。
「う……それは……そうだったです」
「でももう……いいよ……これで……お相子……ね」
「お姉ちゃん……」
これがサーケイブさんとのファーストコンタクト。
サーケイブさんって、物静かで、でも興味のあることには一生懸命で、そして新種の魔物を作っちゃうような凄いひと。
でもそれよりも何よりも、とっても愛情深くて芯が強いひと。
だって――
「みんな……カタキ……とったよ……土下座……させたよ……きっちり……泣かせ、たよ」
向こうを向いて小さな声で、そう呟く声を聞いたから。
「……さて、それじゃあここからは僕の仕事だね。サーケイブ君、今日僕達がここに来たのは君のダンジョンコアを取り囲む結界を改良する為なんだ」
「結界……の、改良……?」
「そうさ。この結界は悪い奴らからダンジョンコアを守る為のものなんだけどさ、その反面君達の通信やダンジョンの成長までも妨げちゃってるってセカンケイブ君から聞いてね。それで彼女と対応策を練ったんだ」
場が落ち着いたところで、モリスさんが結界の話を始めた。
「そう……セカンケイブ……姉さん、と……」
「うん、そうなんだ。ああ、自己紹介がまだだったね。僕はモリス、冒険者ギルドの本部に所属していて、この結界なんかのダンジョンに設置する魔道具の管理を仕事としているんだ。あと新しい魔道具の研究とかね」
「研究……研究者なら……仲間」
「おっ、嬉しいねぇ……ああ聞いたよ、君もかなりの研究者って話じゃないか。これは是非研究談義でも……と言いたいところだけど、それはまた今度のお楽しみって事で、今は結界の話ね」
「うん……わかった……」
おお、分野は違っても研究者同士で通じるものがある、って事なのかな。
それって何だかカッコいいかも。
「それでさ、ダンジョンコアの保護とどうやって両立させるかって事なんだけど、やり方はふたつあってさ――」
そして、フィラストさんの時と同じように、結界の改良か閉じたコアの部屋を用意するかって事を説明して……
「なら……丁度いい……ダンジョン、コアを……何とか……研究室に……移設、したいと……考えてた」
「ほほう! 研究室だって?」
「そう……この、ダンジョンの……真の最下層、は……私の……研究室」
それを聞いたモリスさんは物凄い前のめりで目を輝かせる。
「いいねいいね。真の最下層が研究室でダンジョンの最重要設備!……うん、実に燃える展開じゃないか! それってサイコーだよ!!」
「えへへ……あなた、なら……そう言って、くれると……思ってた」
「よしやろう。今やろう。すぐにやろう!」
「うん、それじゃ今から……私の研究室、に……ご招待」
……そして僕達は彼女の研究室に転移した。
ダンジョンコアを抱えたサーケイブの手によって。
「ほほう! これはまた随分と立派な研究室じゃないか! 研究対象は……スライムとキノコかい?」
「そう……キノコと……スライムは……実は近い種。研究対象と、して……非常に興味深い」
「へえ、そうなのか……ああ、ひょっとして『粘菌』、かな?」
モリスさんの言葉に、今度はサーケイブさんが前のめり。
「ふふ……すばら、しい……やはり、研究談義、を……」
「うんうん、僕も楽しみにしてるよ。そうだ、今度は僕の研究室に君をご招待しよう」
さっきまで瞳を輝かせてたサーケイブさんだけど、そのモリスさんの言葉に表情を曇らせた。
「それは……無理。……私はこの……ダンジョン、から……離れられない……から」
でもその反応はモリスさんの想定通りだったみたいで、僕の方を腕全体で指す大きなアクションと……うわっ、綺麗なドヤ顔!
「ふっふっふーー、それなら大丈夫! その悩み、このカルア君がどーんと解消してくれるから!」
モリスさんの視線を追ってサーケイブさんも僕に視線をロックオン。
「……カル、ア?」
で、そこからはラルのターンみたい。
「ですです! カルアお兄ちゃんは凄いです! ……ただのスラスラじゃないですよ」
ラル、スラスラはもう忘れよう。ね?
「スラ、スラ……って何?」
ほら、サーケイブさんが興味持っちゃった。どうやら上の階での『スラスラ』関係の会話は聞いてなかったみたいだけど、説明したら絶対嫌な顔するって……
「み、見るです、このラルの体。サーケイブお姉ちゃん、何か感じないです?」
「セント……ラル……ひょっとして……小さくなった? ……ごはん、食べてる?」
「そうじゃなくて……いやそうですけど……この体はラルの体じゃなくって、あの伝説の操化身なんです!」
ラルの言葉にサーケイブさんは軽く首をかしげる。キョトンって感じで。
「操化身? ……ラル……そんなの……どこで……拾った、の?」
「拾ったじゃないです! カルアお兄ちゃんが作ったですよーー!」
「えっ……作った? ……ひとの手で……神の魔道具……を?」
そして再び僕に視線を向ける。
「ですです、そうです。ラルのカルアお兄ちゃんは凄いです。ラルの操化身だけじゃなくって、フィラストお姉ちゃんとセカンケイブお姉ちゃんの操化身も作ったです」
「信じ……られない……それが……スラスラ?」
もうスラスラから離れてくださいって!
「カルア君はね、僕の弟子で魔道具作りの天才なんだよ。それに時空間魔法と錬成、更に付与術までもが天才級なのさ。で、それらを総動員して作り上げたのがこの操化身って訳なんだ」
「そう……つまり、カルアも……研究者……?」
「あ、あははは……まあそういう事、かな? じゃあ早速サーケイブさんの――」
「シル」
「……え?」
「私の、事は……シルと、呼んで。……研究者……仲間として……愛称呼び」
「うん、分かったよシル」
「じゃあ、僕もシル君って呼んでいいのかな」
「……もち……ろん」
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