スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第102話 ネッガーの家でブギーな胸騒ぎ #3

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ピンと張り詰めた空気の中、その場でゆっくりと構えをとるお弟子さん。
その身体には、さっきまでとは違い内側に魔力の流れを感じる。
……これ絶対さっきよりも速くて強い攻撃が来るよね。

うん、まともにやりあうのは絶対無理!
ネッガーの案でいこう。
まずはこの立ち会いの空間――僕とギャラリーを除いた空間を【結界】で囲んでっと。よしっ!

それをだんだん小さく小さく……
よし、お弟子さんの身体よりちょっと大きいくらいの四角形まで縮んだ。
あ、ここからどうやって攻撃したら……確か兄貴ゴブリンの時はワルツの加熱で……
って、それじゃ殺傷力高すぎ。却下却下。
でもじゃあどうしよう……あっ、いいこと思い付いた!

よーし、いくよっ、名付けてシャカシャカ作戦!
まずお弟子さんを囲む【結界】を傾けて……見えない【結界】に押されてお弟子さんがバランスを崩して……転んだ。ここで宙に浮いた足の下も【結界】で囲んだら――
準備完了っ!

傾けた【結界】を縦に戻すと中のお弟子さんも立ち姿に戻る。そしたらそのまま頭より少し上ぐらいの高さまで持ち上げてっと。【結界】が上がればその中のお弟子さんも当然空中に浮かぶから――
うんうん、お弟子さんビックリしてる。それに見てるみんなも。

じゃあ……はっじめっるよぉーーーっ。
「シェイク」

【ベクトル】を操作して【結界】を左右にシャカシャカと。
……よし、大体感覚は掴めたから、そろそろ斜めや上下のシャカシャカも追加してみよう。

【結界】上下左右にシャカシャカシャカシャカ。
お弟子さんは【結界】の動きに合わせて受け身をとってるけど、それでも中の壁にゴッツンゴッツンぶつかりまくってる。
……あ、でもぶつかり方がかなりソフトにマイルドに……
流石は武の人、もう慣れてきたみたいだ。
じゃあ次いってみよう……

「回転」

結界をぐるぐるぐるぐる……
お弟子さんごと、ぐるぐるぐるぐる……
回転の中心をずらしながら回してるから、不規則な動きで上下左右の壁に叩き付けられてる。これなら結構ダメージ入ってるんじゃないかなぁ……?

「そっそれまでえ! 終わり終わり! もう止めいっ!!」

あ、終了?
じゃあ結界を縦に戻して、ゆっくりと床に下ろして……

「解除」

地に足を着けたお弟子さんはフラッと身体を揺らし、足を踏みしめられず持ちこたえられず……そのまま床へとへたり込んだ。
「「父上っ!」」
「ベスタっ!」

慌ててお弟子さんに駆け寄るネッガー兄弟とおじいさん――って、『父上』!?
この人、お弟子さんじゃなくってネッガーのお父さんだったのぉ!?

……どうしよう。初めて会ったネッガーのお父さん、出会い頭にシャカシャカしちゃった。

とりあえず回復を掛けようと一歩踏み出した僕を、ネッガーのお母さんが凄くいい笑顔で制止。
「気にしなくて良いのよ、カルア君。あの人も見た目に騙されて完封されるとか……ふふっ、まだまだねえ。きっといい勉強になったでしょ」

ああ、このお母さんもそちら側の住人……



暫くしてネッガーのお父さんが体を起こし……でもまだ立ち上がるのは無理そうで、座ったまま笑顔を見せた。
「――いや参ったよカルア君。まさかここまで一方的にやられるとは思わなかった。ネッガーが所属するパーティのリーダーだと言うから、どれ程かと試してみたが……いや、その若さで大したものだ」

そっか、ネッガーを心配して……
少しは安心してもらうことが出来た、かな?

「かかかかかっ、これは何と言う初見殺し! 恐らく儂でも防げなかったであろうよ。その上、これ程の力を持ちながらも驕る事なく謙虚に構える、か。うむ、ネッガーよ、実によい友を持ったな」

おー、ビックリするくらいの高評価。
シャカシャカしちゃった事を怒る様子もないし……よかったぁ!

「はい。カルアと出会えた事、人生最大の幸運だったと考えています」
「うむ。愉快愉快、実に愉快よ。かっかっかっ」



数日前の事。
ネッガーが冒険者パーティのリーダーを連れてくる……その知らせを聞いたネッガーの祖父スターは、ある事を決断した。

同級生でありながらネッガーを差し置いてパーティリーダーの座につくカルア。その実力や人となりを、自らが道場主を務める道場で存分に検分してやろう……と。

「――とまあそういう事よ。パーティリーダーとはつまりネッガーの命を預かる身、ならばどれ程の人物か見ておく必要があろうよ」
「では父上、立ち合いを?」
「うむ。ベスタよ、彼奴の相手はお前に任せた。下手に先入観を与えぬよう、名乗らずに立ち合ってみるがいい」
「分かりました」
「かかかっ、如何に子供とは言え孫の命を預ける相手。ネッガーを預けるに値しないとなればその時は――」



そして今日。
ネッガーの母シルに連れられて道場に足を踏み入れたカルア、スターの目に映るその第一印象は――
(ふむ、見た目は普通の子供、いや身のこなしはそれなりに鍛えられておるか。だが洗練されたものではない、つまり実戦で磨いてきた証よの)

一目見てある程度カルアの実力を見て取ったスターであったが、同時に何やら不穏な気配をも感じ取る。
(む? この感覚……この儂がこんな子供に気後れを? いやまさかの。だが此奴から感じる底の知れなさは、まるで自らに枷を掛けておるかのような……いや、それこそまさかよの)

そして――
「立ち会い二本、まずは木剣のみ、魔法、スキルなしとする。さあ始めい」
(此奴が何かを隠しているのは間違いないだろうよ。それは何だ? 足の運びからして剣技ではあるまい。ならば見るべきは二本目の――)

一本目の立ち合いを目にしたスターの心中は……驚愕。
立ち合いとしては数合の交錯でカルアの負けであったが、結果などどうでもいい。それよりも、その数合においてカルアがしっかり戦術を組み立てて挑み、そしてつたないながらも実戦的な動きを見せた事。そして何より――

「その剣、狩人の剣だな。今の振る舞い、ウルフを想定した動きと見た」
冒険者として魔物を相手に研鑽を積んできた剣技、それを剣技の実力が遥かに上であるベスタとの立ち合いの中で、対人の型として使って見せたからだ。

「うむ。素直な良い剣だったぞ。これは次も楽しみよの」
(此奴……きちんと技術を教えさえすれば、剣も相当やれるようになるのではないか? 惜しいの……いや、なれば我らが道場に入門させ、この儂の手で……)
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