スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第102話 ネッガーの家でブギーな胸騒ぎ #4

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スターの合図で始まった二本目の『何でもあり』。それは開始直後から想定外の異様な様相を見せる。
(何だこれは……魔力? 道場全体を魔力で覆ったのか?)
見た目には双方ともに動く気配を見せない静かな立ち上がり。だがその裏ではカルアの発した魔力が周囲を覆い尽くした、だと!

(おそらく攻撃魔法ではあるまい。だがこの感覚、何やら覚えがあるような……はてさて一体何をしでかすつもり……何っ!?)
カルアの真意、そしてこの先の展開を推測しようとしていたスターの前で、辺りを覆っていた魔力がどんどん小さくなってゆく。
(やろうとしていた何かを止めたのか? いや違う、集束しとるのか。とするとその先は――)

突如、目の前でベスタがバランスを崩して倒れる。その様子を目にしたスターは――
(っ!? 【結界】であったか!!)
ようやくその魔力の正体が過去の記憶と繋がった。だが……
(まさか閉じ込めて勝ちを宣言するつもりではなかろうな)

結界は身を守るための魔法、それで相手を囲うのだからそれなりの技量であるだろう。だがそのような手段で拾った勝ちに一体何の価値があるというのか!

だが事態はまたもスターの考えを上回る。
なんとその【結界】はベスタを閉じ込めたまま宙に浮かび上がり、そして上下左右へと激しく動き始めたのだ。

(あ……あり得んっ!! 【結界】は張った場所から動かす事が出来ぬ筈。それを宙に浮かべ、しかも此程に激しく動かす事なぞ――)

【結界】に閉じ込められたベクタは、その中で成す術もない。しかし状況が掴めたのか動きに慣れたのか、徐々に受け身による対応が出来るようになってきている。

(む、ベスタも対処してきたか。しかしこのままでは決め手がないまま決着がつかぬか。流石に【結界】の中へはカルアも攻撃出来んだろうからの)

この【結界】が実は外から中へはやりたい放題出来る、という事実をスターは当然知らない。だが、これから更なる恐ろしい攻撃がベスタを待ち受けている、という未来もまた……知る由もない。

「回転」

目の前で激しく回転を始める息子。
その回転軸は不安定に移ろい、【結界】の中央であったり隅であったり。そしてその向きもまた、縦であったり横であったり。そしてその身体は激しい回転に翻弄され、結界の四方八方の壁に押され圧され殴され……

こうなればもう慣れも読みも関係ない。生物として対応できる範囲を逸脱した動き続けるその見えない牢獄の中で、息子の顔は徐々に青ざめ、そして限界を超えた身体は弛緩してゆき、そして――
「そっそれまでえ! 終わり終わり! もう止めいっ!!」
我に返ったスターは慌てて終了を宣言したのである。

地面に降ろされた【結界】が解除された。辛うじて意識を保っていたベスタは一瞬立とうとするも、足元どころか全身の一切に力を入れる事かなわず、文字通りその場に崩れ落ちた。
「ベスタっ!」
その変わり果てた姿の息子に駆け寄るスター。
と同時に――
「「父上っ!」」
彼の孫達もまた、変わり果てた父の元へと駆け寄った。



とりあえず、道場の床を汚す事態にならなかったのは幸運だっただろう。
もしも道場が酸っぱい匂いに包まれたなら……
その場を一歩も動かぬままの子供によって師範代が一方的にボコられ、そして何も出来ぬまま敗れた――という事実が、より強く印象づいてしまっただろうから。

そしてスターはと言うと――
(此奴に剣など不要……か。此程の強者に剣を教えたいなど儂も随分と思い上がった事を。その前にどうやってこやつに勝つかを考え――というか勝ち筋が見えん!!)
その自信を木っ端微塵に打ち砕かれていた。

それでも――
「かかかかかっ、これは何と言う初見殺し! 恐らく儂でも防げなかったであろうよ。その上、これ程の力を持ちながらも驕る事なく謙虚に構える、か。うむ、ネッガーよ、実によい友を持ったな」
何とかいい感じに話をまとめる事が出来たのは、実に僥倖であったと言えよう。

「はい。カルアと出会えた事、人生最大の幸運だったと考えています」
「うむ。愉快愉快、実に愉快よ。かっかっかっ」

その笑顔の裏で――
絶対にカルアと敵対する事が無いよう、ネッガーには後で固く言い聞かせよう――と、数日前とは真逆の決意を固めるスターであった。



▽▽▽▽▽▽
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