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ただし、結果的にはそれで正解だったようだけれど。
翌日、侍女のユリを伴って街へ出た際、偶然目に留まったので。ウルフイット第三王子にお似合いと思われる栞とブックカバーが。
もっとも、本人が気に入るかどうかは分からないけれど……
そんなことを考えながら、私は父が語ったウルフイット第三王子の姿を思い描いてみる。必死に集中しながら。目の前に現れるかのように——と、ふと少し離れた場所に立つ人物に目を向ける。
しばらくその人物を見つめた後に首を傾げも。流石にそんなはずあるわけがない、そう思いながら。
「だって、私は御伽話のように魔法なんて使えるわけが……」
そんな呟きの直後、私はすぐにあることに気付いてしまったが。
あっ、と手を打ち、思わず後ずさりながら。
何しろ、その人物こそ御伽話の魔法で現れたわけでなく、ウルフイット第三王子本人だと気づいてしまったので。私が想像した通り鋭い眼光を携えた。
しかも、こちらへ歩み寄ってきて拳ではなく……
「買い物中か?」
ただの質問をしてこられて——と、私は「あの、その……ええと」と、即座に返事することができずに口ごもる。慌てて紙袋をそっと隠しも。
だって、せっかく焼いたクッキーと一緒にプレゼントを渡したかったので。
「アルバンへのプレゼントか。全く見る目がないな」
なんともいえない表情を浮かべてくるウルフイット第三王子にそんなことを言われとも。
「うっ……」
まあ、ただしダメージはかなりあったので深く項垂れてしまったけれど。今の自分にその言葉は深く刺さったから。
貴方の仰る通りですと。
まったくもって……
「本当に自分が嫌になります」とも。
ただし、そう愚痴った直後に状況を思い出して口元を慌てて隠したが。ウルフイット第三王子が私の顔を覗きこむまで。
「勘違いするな。見る目がないのはあいつの方だ」
何しろそんなことを言ってきたのだから——と、思わず驚き顔を上げるとウルフイット第三王子が頭をかく。
「だが、お前も少し見る目がないのは確かだな。よし、ちょっと来い。良いものを見せてやる」
そして、こちらが何か言う前にさっさと歩きだしてしまいも。なので、私は焦ってしまうが。ユリが背中を押してくるまで。
「お嬢様、付いていきましょう」
更にはそんなことを言ってきて——と、私は少しだけ冷静さを取り戻しながら口を開く。相手の状況を考えながら。
「でも……」
「私がついていますので、あらぬ疑いは持たれませんから」
「いいえ、私じゃなくて……」
「はいはい、向こうが良いって言ってるんですから行きますよ」
まあ、結局はユリに押し切られる形で背中を押されながら強制的にウルフイット第三王子の後を歩かされてしまったけれども。
近くにあるカフェまで。
しかもゴシック様式のお洒落な——と、思わず視線を向けてしまうとウルフイット第三王子は頬をかきながら言ってくる。
「ここの紅茶はな、王宮で出されるものより香りが良いんだ」
「えっ、王宮よりもですか?」
「ああ、それで王宮にもおろせないだろうか交渉してみたんだが……あっさり、断られてな。飲みたきゃ足を運んで来いって。まあ、だから、こうやって通ってるんだが」
「お、王族にそんな態度とは……。ずいぶんと強気なお店なのですね……」
「だろう。まったく恐れ知らずだよ。ホイット子爵が経営してる店はな」
そして、お店の看板を指差してくる。ブランド・ホイット子爵、父の名と家紋が入った異国の字でフィーネと書かれた看板を。
「えっ、嘘でしょう……ユ、ユリ?」
「本当ですよ。ここはお嬢様が生まれたタイミングで旦那様が作られたお店なんです」
「そ、そんな、じゃあ……」
色々とやらかしているのはダナトフ子爵家ではなく、うちじゃない——と、一瞬で血の気が引いていきながら。
ついにはフラついてしまいも。
「大丈夫か?」と、ウルフイット第三王子が慌てて抱き止めてくれたが。
「え、ええ。でも、うちがとんだご無礼を」
「無礼? ああ、別にあれぐらいたいしたことないだろう。気にするな」
「じ、じゃあ……」
「どうこうしようなんて思ってないから安心してくれ。むしろここは俺が一番気にいってる店だからな」
「そ、そうなのですか。良かった……」
私はウルフイット第三王子の話を聞き心底ほっと胸を撫で下ろす。
それから今の状況を思い出し、おずおずと口を開きも。
「あの……」
「なんだ?」
「あ、いえ……」と、やっぱり度胸のない私は口を閉じてしまったが。
ただし、視線だけはと、必死にユリに助けを求めて。日頃の関係で私の想いは彼女にきっと届いているはずだと信じでいたので。
まあ、結果は予想外の反応だったけれど。ユリはなぜか余裕の笑みを浮かべ、片目をウィンクしてみせる。そして、まるで舞台の幕が静かに閉じるかのように、ゆっくりと動いて私の視界から消えたのだから。
つまりは望みは絶たれ、私が想像してしまった通りにウルフイット第三王子にエスコートされ、当然のように店員に婚約者同士と間違われて入店することに……
◇
なので、今の私の頭の中は色々なことが起き過ぎ、いっぱいいっぱいだけど。
それこそ今も……
ユリが後ろにいるにしても休みの日に個室で王族と紅茶を一緒に飲んでいるので。
しかも渦中の人物、ウルフイット第三王子……美しき銀狼と。
ちなみに私には冷酷な牙のイメージの方が強いけれども。何しろ、いくら美しいお顔でも例の件があるので今だ恐怖の対象でしかないのだから。
それは先ほどのことがあっても。
それこそ個室に長くいればいるほどに——と、必死に震えそうになる手を押さえながら味の全くわからない紅茶を無言で飲み続ける。ウルフイット第三王子が口を開いても。
「……俺が怖いか?」
何しろ、その問いに答えられるわけないので。
本当の事を言えば今度こそ貴族としては終わりだと思っているから。たとえ王家出身のお方が不敬な言葉を許していようとも。
すると、そんな私の考えを察してくれたのかウルフイット第三王子は苦笑する。
「今のは忘れてくれ」
そして、紅茶を一口飲み今度は別の話題を……
ただし、私が声を出して驚いてしまうものだったが。
「あのクッキーはこの紅茶を使ってるのだろう。しかも曜日で茶葉を変えている。月曜と水曜はダージリン、火曜と木曜はカモミール、金曜はセージだ」
「えっ……」
「アルバンが食べないからいつも俺がもらっていた」
「ああ、そういうことでしたか」
そして、その説明ですぐ腑に落ちてもしまいも。
やっぱり、アルバン・ダナトフという人物はこちらのことを金蔓としか思ってないのだと。それも出会ったあの日から——と、父の経営する商会のパーティーがあった日を思い出す。
参加者のダナトフ子爵が私の話し相手にとアルバンを連れてきたのあの日を。
もちろん最初はただの話し相手だったのだ。
それが、いつの間にか……
いいえ、やっぱり私が単純に馬鹿だっただけよね——と、過去の自分の単純さに呆れているとウルフイット第三王子が怪訝な表情を浮かべてくる。
更には「落ち込まないのか?」とも。
まるで、私が悲しまないのがおかしいとばかりに。
だから……
「なぜ、落ち込むのですか?」
不敬だと思ったけれど逆に聞き返してしまったが。
「婚約者じゃないか……」
そう指摘されるまで——と、私は思い出し顔を顰めてしまう。
「まあ、確かに婚約者ですけれど……」
「けれど?」
「ええと……」と、今ではウルフイット第三王子の立ち位置がわからないのでどう説明してよいか迷っていると彼は更に怪訝な表情を浮かべてしまう。
「なあ、お前はアルバンの事をどう思っている?」
逃れられない質問をしてきながら。
ただ、すぐに咳払いした後、続けてこちらが心底、驚くようなことを言ってきたが。
「も、もし、お前があいつと婚約関係を解消したいなら手を貸そうと思ってるんだが」
つまり耳を疑ってしまうような言葉を。
「えっ……」
今、この人は何を口にしたのだろう? と。
まあ、こちらの状況を察してウルフイット第三王子が再び言ってきてくれたことでやっと理解することができたが。
「お前がアルバンと婚約関係を解消したいなら手を貸す」
しかも、はっきりと……
「私とアルバン様が……」
おそるおそる視線を向けると第三王子は力強く頷いてくる。
翌日、侍女のユリを伴って街へ出た際、偶然目に留まったので。ウルフイット第三王子にお似合いと思われる栞とブックカバーが。
もっとも、本人が気に入るかどうかは分からないけれど……
そんなことを考えながら、私は父が語ったウルフイット第三王子の姿を思い描いてみる。必死に集中しながら。目の前に現れるかのように——と、ふと少し離れた場所に立つ人物に目を向ける。
しばらくその人物を見つめた後に首を傾げも。流石にそんなはずあるわけがない、そう思いながら。
「だって、私は御伽話のように魔法なんて使えるわけが……」
そんな呟きの直後、私はすぐにあることに気付いてしまったが。
あっ、と手を打ち、思わず後ずさりながら。
何しろ、その人物こそ御伽話の魔法で現れたわけでなく、ウルフイット第三王子本人だと気づいてしまったので。私が想像した通り鋭い眼光を携えた。
しかも、こちらへ歩み寄ってきて拳ではなく……
「買い物中か?」
ただの質問をしてこられて——と、私は「あの、その……ええと」と、即座に返事することができずに口ごもる。慌てて紙袋をそっと隠しも。
だって、せっかく焼いたクッキーと一緒にプレゼントを渡したかったので。
「アルバンへのプレゼントか。全く見る目がないな」
なんともいえない表情を浮かべてくるウルフイット第三王子にそんなことを言われとも。
「うっ……」
まあ、ただしダメージはかなりあったので深く項垂れてしまったけれど。今の自分にその言葉は深く刺さったから。
貴方の仰る通りですと。
まったくもって……
「本当に自分が嫌になります」とも。
ただし、そう愚痴った直後に状況を思い出して口元を慌てて隠したが。ウルフイット第三王子が私の顔を覗きこむまで。
「勘違いするな。見る目がないのはあいつの方だ」
何しろそんなことを言ってきたのだから——と、思わず驚き顔を上げるとウルフイット第三王子が頭をかく。
「だが、お前も少し見る目がないのは確かだな。よし、ちょっと来い。良いものを見せてやる」
そして、こちらが何か言う前にさっさと歩きだしてしまいも。なので、私は焦ってしまうが。ユリが背中を押してくるまで。
「お嬢様、付いていきましょう」
更にはそんなことを言ってきて——と、私は少しだけ冷静さを取り戻しながら口を開く。相手の状況を考えながら。
「でも……」
「私がついていますので、あらぬ疑いは持たれませんから」
「いいえ、私じゃなくて……」
「はいはい、向こうが良いって言ってるんですから行きますよ」
まあ、結局はユリに押し切られる形で背中を押されながら強制的にウルフイット第三王子の後を歩かされてしまったけれども。
近くにあるカフェまで。
しかもゴシック様式のお洒落な——と、思わず視線を向けてしまうとウルフイット第三王子は頬をかきながら言ってくる。
「ここの紅茶はな、王宮で出されるものより香りが良いんだ」
「えっ、王宮よりもですか?」
「ああ、それで王宮にもおろせないだろうか交渉してみたんだが……あっさり、断られてな。飲みたきゃ足を運んで来いって。まあ、だから、こうやって通ってるんだが」
「お、王族にそんな態度とは……。ずいぶんと強気なお店なのですね……」
「だろう。まったく恐れ知らずだよ。ホイット子爵が経営してる店はな」
そして、お店の看板を指差してくる。ブランド・ホイット子爵、父の名と家紋が入った異国の字でフィーネと書かれた看板を。
「えっ、嘘でしょう……ユ、ユリ?」
「本当ですよ。ここはお嬢様が生まれたタイミングで旦那様が作られたお店なんです」
「そ、そんな、じゃあ……」
色々とやらかしているのはダナトフ子爵家ではなく、うちじゃない——と、一瞬で血の気が引いていきながら。
ついにはフラついてしまいも。
「大丈夫か?」と、ウルフイット第三王子が慌てて抱き止めてくれたが。
「え、ええ。でも、うちがとんだご無礼を」
「無礼? ああ、別にあれぐらいたいしたことないだろう。気にするな」
「じ、じゃあ……」
「どうこうしようなんて思ってないから安心してくれ。むしろここは俺が一番気にいってる店だからな」
「そ、そうなのですか。良かった……」
私はウルフイット第三王子の話を聞き心底ほっと胸を撫で下ろす。
それから今の状況を思い出し、おずおずと口を開きも。
「あの……」
「なんだ?」
「あ、いえ……」と、やっぱり度胸のない私は口を閉じてしまったが。
ただし、視線だけはと、必死にユリに助けを求めて。日頃の関係で私の想いは彼女にきっと届いているはずだと信じでいたので。
まあ、結果は予想外の反応だったけれど。ユリはなぜか余裕の笑みを浮かべ、片目をウィンクしてみせる。そして、まるで舞台の幕が静かに閉じるかのように、ゆっくりと動いて私の視界から消えたのだから。
つまりは望みは絶たれ、私が想像してしまった通りにウルフイット第三王子にエスコートされ、当然のように店員に婚約者同士と間違われて入店することに……
◇
なので、今の私の頭の中は色々なことが起き過ぎ、いっぱいいっぱいだけど。
それこそ今も……
ユリが後ろにいるにしても休みの日に個室で王族と紅茶を一緒に飲んでいるので。
しかも渦中の人物、ウルフイット第三王子……美しき銀狼と。
ちなみに私には冷酷な牙のイメージの方が強いけれども。何しろ、いくら美しいお顔でも例の件があるので今だ恐怖の対象でしかないのだから。
それは先ほどのことがあっても。
それこそ個室に長くいればいるほどに——と、必死に震えそうになる手を押さえながら味の全くわからない紅茶を無言で飲み続ける。ウルフイット第三王子が口を開いても。
「……俺が怖いか?」
何しろ、その問いに答えられるわけないので。
本当の事を言えば今度こそ貴族としては終わりだと思っているから。たとえ王家出身のお方が不敬な言葉を許していようとも。
すると、そんな私の考えを察してくれたのかウルフイット第三王子は苦笑する。
「今のは忘れてくれ」
そして、紅茶を一口飲み今度は別の話題を……
ただし、私が声を出して驚いてしまうものだったが。
「あのクッキーはこの紅茶を使ってるのだろう。しかも曜日で茶葉を変えている。月曜と水曜はダージリン、火曜と木曜はカモミール、金曜はセージだ」
「えっ……」
「アルバンが食べないからいつも俺がもらっていた」
「ああ、そういうことでしたか」
そして、その説明ですぐ腑に落ちてもしまいも。
やっぱり、アルバン・ダナトフという人物はこちらのことを金蔓としか思ってないのだと。それも出会ったあの日から——と、父の経営する商会のパーティーがあった日を思い出す。
参加者のダナトフ子爵が私の話し相手にとアルバンを連れてきたのあの日を。
もちろん最初はただの話し相手だったのだ。
それが、いつの間にか……
いいえ、やっぱり私が単純に馬鹿だっただけよね——と、過去の自分の単純さに呆れているとウルフイット第三王子が怪訝な表情を浮かべてくる。
更には「落ち込まないのか?」とも。
まるで、私が悲しまないのがおかしいとばかりに。
だから……
「なぜ、落ち込むのですか?」
不敬だと思ったけれど逆に聞き返してしまったが。
「婚約者じゃないか……」
そう指摘されるまで——と、私は思い出し顔を顰めてしまう。
「まあ、確かに婚約者ですけれど……」
「けれど?」
「ええと……」と、今ではウルフイット第三王子の立ち位置がわからないのでどう説明してよいか迷っていると彼は更に怪訝な表情を浮かべてしまう。
「なあ、お前はアルバンの事をどう思っている?」
逃れられない質問をしてきながら。
ただ、すぐに咳払いした後、続けてこちらが心底、驚くようなことを言ってきたが。
「も、もし、お前があいつと婚約関係を解消したいなら手を貸そうと思ってるんだが」
つまり耳を疑ってしまうような言葉を。
「えっ……」
今、この人は何を口にしたのだろう? と。
まあ、こちらの状況を察してウルフイット第三王子が再び言ってきてくれたことでやっと理解することができたが。
「お前がアルバンと婚約関係を解消したいなら手を貸す」
しかも、はっきりと……
「私とアルバン様が……」
おそるおそる視線を向けると第三王子は力強く頷いてくる。
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