すれ違う心 解ける氷

柴田はつみ

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第二章 すれ違う心と新たな疑念

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波留のデスクには、相変わらず冷たい空気が漂っていた。だが、この日の波留の視線は、書類ではなく、愛菜に注がれることが多かった。正確には、愛菜と蓮の間に向けられていた。

前日、偶然にも愛菜と蓮がカフェで親密そうに話してるのを目撃してしまった波留は、胸の中にざわつくような違和感を覚えていた。

幼馴染だと聞いているが、あまりにも楽しそうな二人の様子が、波留の心に波紋を広げた。

愛菜は仕事中、蓮からのメッセージに気づき、こっそり返信していた。その様子を、波留は鋭い視線で見据えていた。

「香山さん」波留の声が、静かなオフィスに響き渡る。

「はい!」愛菜はピクリと肩を震わせ、慌ててスマホを伏せた。

「その、先日の会議資料ですが、まだ提出されていませんが」

波留の言葉は、冷たいが、その視線は愛菜の手元に向けられていた。愛菜は一瞬戸惑ったが、すぐに冷静を装って答えた。

「申し訳ありません。本日中に提出いたします」

「結構です。急ぎませんので」

波留はそう言い放つと、すぐに書類に目を落とした。愛菜は、胸を撫で下ろしたが、波留の視線が何かを探るように自分に向けられていたことに気づいていた。

昼休み、愛菜は会社の休憩室で蓮と電話をしていた。

「蓮、今日さ、波留がなんか変だったんだよね」

「え?どうしたの?」蓮の声が少し心配そうだ。

「なんか、いつも以上に冷たいっていうか‥監視されてるみたいな」

「うーん、それは考えすぎじゃない?いつも通りツンツンしてるだけじゃないの?」

「そうかなあ‥。でも。なんか視線がね‥」

愛菜が電話切ると、休憩室のドアがゆっくりと開いた。そこに立っていたのは、波留だった。彼は手にコーヒーカップを持ち、何食わぬ顔で愛菜の方を見た。

「香山さん、休憩中でしたか」

「あ、神宮寺様」愛菜は慌てて立ち上がった。「すみません、少し気分転換に」

波留は無言でコーヒーを淹れると、愛菜の向かいの席に座った。二人の間に沈黙が流れる。愛菜は居心地の悪さに耐えかねて、口を開いた。

「神宮寺様も、お昼休憩ですか?」

「ええ」波留の返事は短かった。「ところで、先ほどの電話、どなたと話されていたんですか?」

波留の言葉に、愛菜は思わず息をのんだ。彼は明らかに、蓮との電話について尋ねていた。

「あ、いえ‥幼馴染と、少し」愛菜は曖昧に答えた。波留の眉が、わずかにぴくりと動いた。

「幼馴染、ですか」波留の声には、僅かに探るような響きがあった。

「ずいぶん親密そうに話されていましたが」愛菜は、波留の言葉の裏に隠された疑念を感じ取った。心臓がドクドクと音を立てる。

「はい、昔からの知り合いなので」愛菜は努めて平静を装った。

「何か、ご迷惑でしたでしょうか?」波留は、愛菜の目を見つめ、じっとその状態を探っていた。彼の表情は依然として冷たいままだが、その瞳の奥には、複雑な感情が渦巻いているようだった。

「いえ、別に」波留はそう言うと、コーヒーカップを手に立ち上がった。

「ただ、集中して仕事に取り組んでいただきたいと思いましてね」

波留はそれだけ言うと、休憩室を出ていった。愛菜は、その場に立ち尽くしたまま、波留の言葉の真意をわかりかねていた。彼の疑念は、一体どこまで深まっているのだろうか。そしてこの冷たい態度の裏に隠された本当の感情は、何だろうか。


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