すれ違う心 解ける氷

柴田はつみ

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第十五章 愛の結末 そして別れの決意

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愛菜の心は、波留と麗華の親密さに悲しみ、深く傷ついていた。波留がどんな言葉を並べても、愛菜の疑念は晴れることなく、二人の間に生まれた溝は、日ごとに深く、広がるばかりだった。

愛菜は、もうこれ以上、この関係に耐えらないと悟っていた。翌日、愛菜は出社すると、波留の執務室のドアをノックした。

波留は、愛菜の姿を見ると、わずかに目を見開いた。その顔には、昨夜の話し合いの余韻が残っているようだった。

「香山さん、何かようですか?」

波留の声は、どこか緊張を含んでいた。まなは、執務室に入り、波留の向かいに座った。愛菜の瞳は一点の曇りなく、波留を真っ直ぐに見つめていた。


「波留さん。お話があります」

愛菜の声は、静かだったが、その中に揺るぎない決意が込められていることを、波留は感じ取った。

彼の心臓が、ドクンと音を立てる。

「‥‥‥なんですか?」

波留は、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「私、波留さんと、お別れしたいと思います」

愛菜の言葉は、まるで氷の刃のように、波留の心臓に突き刺さった。波留の顔から、血の気が引いた。

「何を言っている、愛菜!?」

波留の声は、焦りを含んでいた。彼は、椅子から立ち上がり、愛菜の元へ歩み寄ろうとした。

「麗華との関係は全て誤解だと説明したはずです!君は私を信じられないのですか?」

波留は、愛菜の手を取ろうとした。しかし、愛菜は、その手を静かに避けた。

「誤解じゃない、波留さん。私には、そう思えません」

愛菜の目には、涙が浮かんでいたが、それはもはや悲しみの涙ではなく、決意の涙だった。

「波留さんは、私を信用していなかったのに、麗華秘書は信用できる。私には見せない優しい顔を、麗華秘書には見せる。そして、私が不安を訴えても、明確な説明をしてくれない」

愛菜の言葉は、波留の心を深く抉った。彼は、愛菜の言葉に反論することができなかった。

「私、一度は波留さんのこと、信じようと決めました。波留さんが変わろうとしてくれるならって。でも、結局、同じことの繰り返しなんです」

愛菜の声には、疲れの色が滲んでいた。

「また、隠し事をする。また、私を不安にさせる。私、もう、波留さんを信じることができません」

愛菜は、震える声でそう告げた。波留は、愛菜の言葉に、絶望的な表情を浮かべた。

「愛菜‥‥‥そんな、私を捨てるのか‥‥‥?」

波留の声は、今にも消え入りそうに震えていた。愛菜は、波留の顔を真っ直ぐに見つめた。

「捨てるんじゃない、波留さん。私自身の幸せのために、この関係を終わらせたいんです。波留さん、もう一度、ご自身の行いを見つめ直してください」

愛菜は、そう言い残すと、立ち上がった。波留は、愛菜の腕を掴もうとしたが、愛菜はそれを振り払った。

「さようなら、波留さん」

愛菜は、そう告げると、執務室のドアを開け、波留に背を向けた。波留は、その場に立ち尽くし、愛菜の遠ざかる背中を見つめるしかなかった。

彼の心は、深い絶望の淵に突き落とされた。愛菜の姿がドアの向こうに消えた後も、波留は、しばらくの間、その場から動くことができなかった。

彼の目の前には、愛菜との思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。その日の夜、愛菜は蓮に電話をかけた。

「蓮‥‥‥私、波留さんと、別れた」

愛菜の声は、涙でかすれていたが、その中には、どこか解放されたような響きがあった。蓮は、電話の向こうで深くため息をついた。

「愛菜‥‥そうか。よく頑張ったな」

「うん。もう、大丈夫。蓮がいてくれて、本当によかった。ありがとう」

愛菜は、蓮の言葉に涙をこぼした。蓮は、愛菜にとって、どんな時も変わらない心の支えだった。

翌日、会社では波留と愛菜の婚約破棄の噂が瞬く間に広まった。波留は、憔悴しきった表情で執務室に閉じこもっていた。

彼の心には、愛菜を失った深い喪失感と、自身の過ちへの後悔が渦巻いていた。愛菜は、心に深い傷を負いながらも、蓮の支えを受け、新たな一歩を踏み出そうとしていた。

彼女は、波留との関係から解放され、自分自身の幸せを追求することを決意したのだ。しかし、波留の心には、愛菜を失った痛みと、彼を縛りつけていた過去の傷が、深く刻み込まれたままだった。



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