すれ違う心 解ける氷

柴田はつみ

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第十六章 波留の拒絶 そして麗華の孤独

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愛菜との別れは、波留の心を深く抉り、彼を絶望の淵に突き落とした。その原因が、麗華との曖昧な関係にあったことを、波留は痛いほどに理解していた。

彼の中で、麗華への信頼は、深い後悔へと変わっていた。愛菜との別れから数日後、波留は執務室に閉じこもり、誰とも顔を合わせようとしなかった。

そんな彼の元へ、麗華がいつものように完璧な資料を持って現れた。

「社長、本日の決裁書類でございます」

麗華は淡々と書類をデスクに置いた。波留は、書類に目を落とすことなく、顔を上げた。その目は、疲労と、そして、麗華への冷たい拒絶の色を帯びていた。


「鈴木さん」

波留の声は、氷のように冷たかった。麗華は、波留のただならぬ様子に、わずかに表情を硬くした。

「愛菜は、もう私の元には戻りません。全ては、君のせいです」

波留の言葉は、麗華の胸に深く突き刺さった。彼女は、波留の苦悩を目の当たりにし、心臓が締めつけられるような痛みを感じた。

「社長‥‥‥それは、私が原因だと?」

麗華の声には、動揺が隠せない。波留は、冷たい視線で麗華を見つめ返した。

「君が私に近づき、私の心の隙に入り込見ました。それが、愛菜との関係を壊しました。君は、私が愛菜を失うことの引き金になったのです」

波留の言葉は、麗華の心を容赦なく抉った。彼女は、波留を支えたい一心で行動してきた。彼の孤独を埋めたいと願っていた。

しかし、その行為が、結果的に彼をさらに深い絶望に突き落としたのだと、波留は突きつけていた。

「社長、私は、ただ社長のお力になりたかったのです。社長の孤独を、少しでも癒したかった‥‥」


麗華の声は、今にも泣き出しそうに震えていた。波留は、その震えを無視し、さらに冷徹な声で告げた。

「君の存在が、私にとって、もう、重荷でしかない。君を見ていると、愛菜を失った後悔が、さらに大きくなる」

波留の言葉に、麗華の顔から血の気が引いた。彼女は、波留に必要とされたいと願っていたのに、今は邪魔な存在だと言われている。

「社長‥‥」

麗華は、何か言おうとしたが、波留はそれを阻んだ。

「君は、明日から会社に来なくていいです。これ以上、君の顔は、見たくないです」

波留の言葉は、麗華の心に決定的な一撃を与えた。彼女は、波留に必要とされないだけでなく、拒絶されたのだ。

「社長‥‥それは‥‥」

麗華の声には、絶望が滲んでいた。しかし、波留の表情は変わらない。彼の目には、愛菜を失った深い悲しみと、麗華への苛立ちだけが宿っていた。

「私の言葉が聞こえないのですか?君の存在が、私を苦しめています。もう私の目の前には現れないでください」


波留の冷徹な言葉に、麗華は力なく膝をついた。彼女の目から、大粒の涙がとめどなく溢れ落ちる。

「‥‥承知いたしました」

麗華は、震える声でそう言い残すと、ゆっくりと立ち上がり、執務室を後にした。波留は、麗華の去っていく背中を、冷たい視線で見送るしかなかった。

彼の心は、愛菜への後悔と、麗華への拒絶でいっぱいだった。

その日の夜、波留は一人、自宅の書斎で酒を飲んでいた。目の前には、愛菜との思い出の品々。麗華を拒絶したにもかかわらず、彼の心は少しも晴れることはなかった。

むしろ、愛菜を失った喪失感が、さらに大きくなったように感じられた。

翌朝、会社では麗華が突然、会社を辞めたという噂が瞬く間に広まった。社員たちは皆、その突然の出来事に驚きと戸惑いを隠せないでいた。

波留は、以前にも増して執務室に閉じこもりがちになり、彼の周囲には、誰も近づくことのできない冷たい空気が漂っていた。

彼は、愛菜を失った痛みと、麗華を拒絶したことへの虚無感に深く沈み込んでいた。

波留は、愛菜を取り戻すために麗華を拒絶しましたが、彼の心は満たされることなく、より深い孤独に陥ってしまった。



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