二度目の初恋は、穏やかな伯爵と

柴田はつみ

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第十一章 絶体絶命の危機

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「リーシャンから離れろ!」

アランの叫び声が、馬車の中にこだました。彼の腕からは血が流れ、白いシャツに赤い染みを作っていく。

しかし、アランは、痛みを感じていないかのように、リーシャンを守る盾となっていた。男たちは、アランの隙を突こうと、さらに攻撃を仕掛ける。

剣がぶつかる鈍い音、男たちの荒い息遣い、そしてリーシャンの心臓の音が、馬車の中で響くようだった。


「アラン様っ!」

リーシャンは、思わず叫んだ。アランの動きが、わずかに鈍ったように見えた。その瞬間、一人の男がリーシャンの腕を掴んだ。

「動くな、女!」

荒々しい手つきに、リーシャンは恐怖で身が竦む。だが、その恐怖よりも、アランへの心配が勝っていた。


「離してください!アラン様を傷つけないで!」


リーシャンは必死に抵抗するが、男の力には敵わない。腕を掴まれ、馬車の外へと引きずり出されそうになる。


「リーシャンっ!」

アランが叫び、男に向かって剣を振り上げた。しかし、別の男がアランの背後から迫り、彼の肩を深く斬りつけた。

「ぐっ‥‥‥!」

アランの口から、苦しい声が漏れた。彼は膝を突き、その場に崩れ落ちそうになる。リーシャンは、アランの姿を見て、全身から血の気が引いた。

「アラン様!しっかりしてください!」

リーシャンは男の手を振り払い、アランのもとへ駆け寄ろうとした。しかし、男たちはリーシャンを力ずくで捕らえ、アランから引き離した。


「おい、伯爵!無駄な抵抗はやめろ。女の命が惜しくないのか?」

男はリーシャンの首筋に刃を突きつけ、アランを脅迫した。アランは、血塗られの顔を上げ、リーシャンを睨む男に、燃えるような憎悪の眼差しを向けた。

「リーシャンに指一本でも触れてみろ‥‥‥必ず、後悔させてやる」

アランの声は、低く、そして恐ろしいほどに冷徹だった。リーシャンは、その声に、かつての冷酷なアランの面影を感じた。

しかし、それはリーシャンを傷つける冷たさではなく、彼女を守ろうとする、強い怒りの現れだった。

男たちは、アランの剣幕に一瞬ひるんだ。その隙を、アランは見逃さなかった。彼は残された力を振り絞り、手に持っていた懐中時計を地面に叩きつけた。

時計のガラスが砕け散る。

「何をする!」


男たちが戸惑った瞬間、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。複数の馬が、こちらに向かってくるようだった。


「ちっ、増援か!撤退するぞ!」

男たちは舌打ちをして、リーシャンを解放し、森の中へと逃げ去っていった。リーシャンは、その場にへたり込んだ。
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