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第2章
身体と記憶(※R18)
しおりを挟む「力を抜いて、楽にしてていいですよ」
ライノアはベッドに乗り上げると、アルフォルトの身体を背後から抱き締めた。
言われるまま寄りかかると、耳元にライノアの吐息がかかり、思わず身をすくめる。
「怖かったり、嫌だと思ったらすぐ言って下さい」
「······うん」
素直に頷けば、項に唇が触れる感触がした。
「んっ」
柔らかい唇の温かさに、ピクっと身体が小さく跳ねる。
「これから触りますけど、良いですか?」
つぅ、と太腿をライノアの指が辿る。
擽ったくて思わず膝を閉じかけるが、どうにか思いとどまり「大丈夫」と消え入りそうな声でアルフォルトは答えた。
心臓が壊れるのではないかというくらい、鼓動は早く、背後から感じるライノアの体温すら熱い。
ナイトウェアの裾を捲り上げたライノアの指が、下着の中へと入り込み、アルフォルトは思わずライノアの腕に縋りついた。
「大丈夫、痛い事はしないですから」
アルフォルトが落ち着くようにライノアは優しく囁く。
深呼吸して縋りついた腕を恐る恐る離すが、心許なくてシーツをぎゅっと握りしめた。ゆっくりと下着を下ろされ、反応した性器が露わになる。
「あ······」
恥ずかしさに思わず目を瞑る。
入浴や着替えを手伝ってもらう為、裸を見られる事にそこまで抵抗は無かったが、反応した昂りをさらけ出すのは訳が違う。
「っ、ごめんなさい······」
「ルト?」
アルフォルトは、再び涙を零しながら、ライノアに謝罪した。
「こんな······気持ち悪い、よね。変な事頼んで、ごめ······っひぁ!?」
涙で掠れた声で、謝罪を繰り返していたアルフォルトは、急激に訪れた刺激に目を見開いた。
視線の先、アルフォルトの昂りにライノアの指が絡みついているのが見えた。
そのまま、指がゆっくりと上下に動かされ、アルフォルトの身体が跳ねる。
「ぁっ、ゃだッ、ライノアっ······っ」
腰の奥に電流が走った様な感覚がする。
ビクビクと震えるアルフォルトに構わず、ライノアの指が動く。
「さっきも言いましたけど、気持ち悪いなんて思ってないです」
ライノアの声は少し怒っているようで、アルフォルトは怯えた。
「ごめっ、なさ······んッ、おこってる·····ッ?」
アルフォルトの問いにライノアは、はっとして刺激し続けていた手を止める。
項に、ライノアの額が触れた。
「ルトが謝る事は何もないのに、ずっと謝るから·····すみません、怖かったですよね」
アルフォルトは「少し」と呟く。
ライノアは緩くアルフォルトを抱きしめて「申し訳ありません」と再び詫びた。
首筋に唇の濡れた感触がし、アルフォルトは思わず甘い吐息を零す。
「寧ろ私は、ルトに触れられて嬉しいですよ」
「え?」
こんなあられもない、はしたない姿を見せつけられ、嫌じゃないのだろうか。
振返ろうとしたアルフォルトの目を、ライノアの大きな手が覆った。
「ライノア?」
「······恥ずかしいなら、目を瞑っててもいいですよ」
止まっていた動きが再開し、アルフォルトは甘やかな刺激に身悶えた。
先走りの蜜がこぼれる。ライノアはそれを指で掬い、塗りつけるように手を動かされると腰の奥が疼く。
「あぁっ·····ゃ······ふ······ッ」
ぐちゅぐちゅ、と指が上下するたびに卑猥な水音がする。耳元にライノアの熱い吐息がかかる。
目をぎゅっと閉じているからか、逆に神経が過敏になっているような気がして、アルフォルトは狼狽えた。
ひっきりなしに出る自分の物とは思えない甘い声は止められず、アルフォルトは口を抑える。
こんなの、知らない。
そう、思ったのに。
「ん、身体が、変······」
身体中の血液が熱くて、力が入らない。
「変、じゃなくて気持ち良いんですよ」
ライノアの答えに、既視感を感じた。
先程よりも少し早く手を動かされ、アルフォルトの身体はどうしようもなく甘くグズグズに溶けてゆくような錯覚に陥る。
「気持ち良いですか、ルト?」
ライノアの低く掠れた声が、鼓膜を犯す。
「んっ······気持ち良いと、思っても、いいの?こんな、いやらしい僕、嫌じゃない?」
アルフォルトの問に、ライノアの笑った気配がした。
「気持ち良い事は、罪じゃない。今、アルフォルトをいやらしくしてるのは他でもない、私なんですから······嫌なわけないでしょう?」
そう言って、今度は唇を塞ぐ。ちゅっと軽い音を立てて離れたライノアの顔は、今まで見た事もない程艶めかしくて、アルフォルトは目眩がしそうになる。
「今は余計な事を考えないで。気持ち良くなる事だけ考えて」
空いていたもう片方の手が、そっとナイトウェアの上から胸を撫でる。
布越しに指先が胸の飾りに触れ、アルフォルトは目を見開いた。
「あっ!?」
ボタンを慣れた手つきではずし、長い指が薄い胸を撫でる。直に触れられると、擽ったいだけではない感覚に戸惑う。気まぐれに乳首に軽く爪を立てられ、甘やかな痛みに身体を震わせた。
同時に昂りも刺激され、アルフォルトは訳が分からないほどの快感に怯える。
「んんッ、一緒にさわるの······だめぇ······ッ」
アルフォルトが首を振っても、ライノアの愛撫は止まらなかった。
呼吸が荒くなり、内腿が震える。
先端を刺激され、アルフォルトの爪先がシーツを引っ掻く。
高みに昇ったまま、降りられない感覚が怖くて、ライノアに手を伸ばした。
「アルフォルト、可愛い」
吐息と共に囁くライノアの声。
伸ばした手を絡め取られ、そのまま掌に口付けられる。
一際強く先端を抉るような刺激に、アルフォルトの身体が大きく跳ねた。
「ッ、ぁああーーっ······」
ドクン、と脈打つ感覚。
アルフォルトの背中が弓なりにしなる。
吐き出された白濁が、ライノアの手に受け止められた。
頭が一瞬真っ白になり、遅れて甘い疲労感が身体を支配する。
はぁ、はぁと荒い呼吸を繰り返すアルフォルトの目の前で、ライノアはあろう事か掌に吐き出された白濁を舐めた。
「!?なっ」
「······ははっ美味しくない」
なぜだか嬉しそうに笑うライノアの奇行にアルフォルトは狼狽えた。
「あっ、当たり前だろ!?馬鹿っ」
あまりの衝撃に、疲労感や倦怠感は一瞬でどうでもよくなる。
慌ててライノアの手を自分のナイトウェアの裾で拭った。顔から火が出そうだ。
呼吸も整わず身体は重だるいのに、ライノアのせいでそれどころではない。
慌てるアルフォルトをどこか楽しそうに眺めるライノアを睨み付け──。
(──ん?)
アルフォルトの腰の辺りに、何かが当たる感覚がして思わず硬直した。
恐る恐る顔を見上げれば、ライノアの瞳は情欲に揺らいでいた。
「ライノア······これは······?」
「好きな人が目の前で乱れたら、こうなるのは当たり前じゃないですか」
少しだけ困った顔で、ライノアは笑う。
「大丈夫、もう何もしないから安心して下さい。コレは──自分でなんとかしますから」
ライノアはアルフォルトの身体を掬うと、バスルームへと運ぶ。
「うわっ」
「とりあえずシャワーを浴びて下さい」
ゆっくりと身体を降ろされる。背を向けたライノアの服を思わず掴んだアルフォルトは、しかし言葉が上手く出てこない。
「アルフォルト?」
「その、大丈夫·····?」
アルフォルトはチラ、と反応したライノアの下半身に視線を向ける。
「大丈夫、自分でなんとかしますから」
「でも······」
手際よく着替えを準備して、ライノアは深く息を吐いた。
「······いや、本当は大丈夫じゃないんです」
「えっ」
背を向けたまま、ライノアは自分の顔を片手で覆った。
「今、なけなしの理性を総動員してアルフォルトを押し倒さないように頑張ってるんですよ」
「ええっ!?」
「だから、あまり可愛い事言わないで」
手の隙間から見えたライノアの顔は赤く、アルフォルトは慌てた。
ライノアの低く掠れた声はやっぱり艶があって、アルフォルトはどうしようもなくドキドキしてしまう。
挙動不審になったアルフォルトに、ライノアは笑った。
「同意もなしに無理矢理襲わないから、安心して。それじゃあゆっくり身体を温めて下さいね。ホットミルクを準備して待ってますから」
そう言って、ライノアはバスルームのドアを閉めた。
一人になり、静かになったバスルームで、アルフォルトはとりあえず言われた通りシャワーを浴びる事にした。
温かいお湯を頭から浴びると少し気持ちが落ち着いて来たが、色々ありすぎて最早感情も脳も追いつかない。
オーバーヒート気味な頭は、ぼんやりとしていて、もう深く考えるのは辞めようと思った。
それに。
(ライノアに触れられるのは、嫌じゃなかった)
性的な事柄に、普段なら嫌悪感が先に来るのだが、ライノアに触れられるのは平気だった。
壊れ物を扱うみたいに優しく、甘やかすような触れ方を思い出し、アルフォルトは思わず赤面した。
頭を振り、ピンク色した思考を追いやる。
(前もそうだったけど胸を触るなんて、反則じゃないか?!)
必要以上に身体が反応してしまった事が恥ずかしくて、アルフォルトは思わず顔を覆った。
「──······ん?前?」
触れられるのは今回が初めての筈なのに、何故か言葉や触れ方に既視感を覚えた。
(前にもこんな事あった?)
途端、頭の隅に掛かった靄が、一気に晴れた。
(······あ、思い出した──!!)
ローザンヌ王妃の嫌がらせで、媚薬入の香水を浴びた後の事が鮮明な記憶として蘇り、アルフォルトは忘れていた痴態に頭を抱えた。
(ライノアにしてもらうのって二回目じゃん······!!)
どんな顔してバスルームを出たらいいのかわからず、アルフォルトは項垂れた。
(──危ない)
壁に寄りかかるようにしゃがみ込んだライノアは、閉めたドアの向こう、シャワーを浴び始めたアルフォルトの気配に、深くため息を吐いた。
余裕ぶってはいるが、それはあくまでも表面上だけで、ライノアの内心は言葉では言い表せないほど様々な感情が嵐のように渦巻いていた。
アルフォルトに触れるのは二回目だが、危うく自制心が効かなくなる所だった。
以前とは違い、最初から同意を得て(?)行為に及んだのだ。タガが外れそうになるのは仕方がない。
寧ろ鋼の自制心を褒めるべきだと、若干頭の悪くなったライノアは、ようやく立ち上がった。
甘えるように縋り付く手、快楽と羞恥に震える瞼。吐き出される吐息は鼓膜を犯し、少しでも気を抜けば押し倒してめちゃくちゃにしそうになるのを、必死に堪えた。
アルフォルトはトラウマのせいで快楽を得る事が罪深いと思って、乱れる事に抵抗があるのだろう。
はしたない自分は嫌じゃないか、と羞恥に震える身体の頼りなさに、なんとも言えない嗜虐心を擽られ、ライノアは理性と戦い続けた。
(怯えさせてしまっただろうか)
快楽に溺れるアルフォルトの壮絶な艶めかしさに、自分の欲望を隠しきれなかった。
アルフォルトに心配される程、昂ってしまった己の下半身の単純さにライノアはため息をつく。
アルフォルトがシャワーを浴び終わる前にどうにかしないと。
それからホットミルクを用意して。
おそらく精を吐き出した疲労感でアルフォルトはまた眠るかもしれない。
(熱、出さなければ良いのだけど)
性的な物に抵抗があるアルフォルトは、精神的な負荷で熱を出す可能性がある。
(とりあえず今は、コレをどうにかしないと。アルフォルトを怯えさせてしまう)
ライノアはため息をつくと、とりあえず自分のを処理しようと、バスルームを後にした。
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