仮面の王子と優雅な従者

emanon

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後日談

帝国の日々⑩(※R18)

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♢幸福論♢



「ねぇ、エルディオス」
 夜も更けベッドに入ったアルフォルトは、自分の腰に腕を回して抱き寄せ、同じく眠りにつこうとしたライノアに問いかけた。
「キス、してもいい?」
 くるり、と身体の向きを変えてライノアを見つめる。
 普段しっかりとセットしている前髪が額にかかっていると、どことなく野性味があって色っぽい。少し頬を染めたアルフォルトに、ライノアは微笑んで顔を近づけてきた。
 そのまま唇を重ねると柔らかく啄み、そっと離れていった。
(──やっぱり)
 触れるだけの優しいキスは、勿論好きだ。でも、今のでアルフォルトは確信した。
「ねぇ、エディ」
「なんですか、ルト?」
 アルフォルトを腕の中に包み込み、頭を撫でるライノアは相変わらず優しい顔で見つめてくる。
「もっと、キスしていい?·····今みたいなのじゃない、激しいやつ」
 途端、ライノアの手が止まった。その隙に、アルフォルトはライノアの寝間着の襟を掴み、唇を重ねる。驚いて半開きになったライノアの上唇を舌でなぞっても抵抗されなかったので、思い切って舌を差し込んだ。そのまま戸惑っているライノアの舌に自分の舌を絡めると、躊躇いがちな手が、アルフォルトの首に添えられる。
「······ふっ······」
 くちゅっと濡れた音が鼓膜を震わせる。自分から仕掛けるのは実は初めてで、アルフォルトはライノアがいつもどういう風に口付けるか思い出しながら、キスに没頭した。
「んぅっ」
 拙いキスに応えるように、ライノアの舌がアルフォルトの舌をなぞり、腰に来る刺激に身体が跳ねた。
 閉じていた瞼を震わせると、ふいに唇が離れ、アルフォルトは思わず目を開いた。
「ふぁ······?」
 肩で息をしてライノアを見つめると、戸惑った表情でアルフォルトから視線を逸らした。
「······もう、寝ましょうか」 
 少し身体を離したライノアに、アルフォルトはしがみついた。
「ねぇ、最近僕にこういう触れ方しないよね?······もう、僕には飽きちゃった?」
「それは違う!」
 思ったよりも大きな声で反論され、アルフォルトは少し驚いて目を見開いた。ライノアは気まずそうに目を逸らし「大きな声をだしてすみません」と謝る。
 アルフォルトはライノアの頬に手を添えて、自分の方を向かせると、戸惑いの色を浮かべた蒼い瞳を覗き込んだ。
「これからは考えている事はお互いにちゃんと話そうって言ったよね」
 心配かけまいと、お互いに抱え込んで余計にすれ違った事を反省し、今後は話し合おうと決めたばかりなのだ。少し責めるようなアルフォルトに、ライノアにしては珍しく視線を彷徨わせ──諦めた様にため息をついた。
「すみません、そうでしたね」
 アルフォルトの頬に触れ、ライノアは苦笑いした。
「······あの日、貴方を無理矢理犯そうとしたから、もしかしたら──また、触れられるのが怖くなっているかもしれない、と思って自重してました」
 後悔を滲ませた顔で、優しく頬を撫でるライノアの手に、アルフォルトは自分の手を重ねた。
「確かに、あの時は少し怖かったけど······あれは僕も悪かったし、それにちゃんと謝ってくれたじゃないか」
 ドレスの少女がアルフォルトだとわからずに嫉妬して、心が離れる事を恐れたライノアが、身体で繋ぎ止めようとした。なりふり構っていられない程、アルフォルトを手放せないというライノアの激情が──アルフォルトは嬉しいと思ってしまった。
 それに、おそらく。
(ライノアにならどんな酷い事をされても、許してしまう気がする)
 勿論、ライノアはそんな事しない。あの時だって、無理矢理最後までする事も出来たのに、涙を流したアルフォルトに気づくと、これ以上傷付けないように身を引いた。
 そんな優しい彼が堪らなく好きで──絆されている。  
「······それと。少し触れただけで、抑えが効かなくなる自分の堪え性のなさに戸惑っていたのもあります。──ライデンにいた頃は我慢出来ていたので余計に」
 困った顔で笑うライノアに、アルフォルトも笑った。
「もう、我慢しなくていいよ?」
「抱かれるの、怖くないですか?······私は、貴方に拒絶されたら立ち直れない自信があるので」
「それどんな自信なの!!」
 思わず肩を震わせたアルフォルトに、ライノアもつられて笑い声を上げた。
「あのね、エディ」
 ライノアの前髪をかきあげて、額にそっと口付ける。
「······僕だって、君に触れたいし触れられたい」
 アルフォルトが倒れてから、ライノアとは身体を重ねていない。体力が戻ってからも、アルフォルトがさり気なく仕掛けてもライノアは上手く躱して避けていた。
 ──でも、そろそろ限界だ。
 だって、自分を抱きしめるあの腕の強さも。普段は澄まし顔の彼が、夜だけは快楽に眉を寄せて、余裕のない表情を浮かべるのも。
 全部、知ってるのはアルフォルトだけだから。
 その温もりに、触れたくてたまらない。 
 蒼い瞳に、自分だけ映して欲しい。
「──ねぇ抱いてよ」
 自分で言ったのに、明け透けな言葉に思わず赤面する。
 そんなアルフォルトにライノアは──眩しいものを見つめるように目を細め、唇を重ねた。



 ライノアの手で衣服を乱され、脱がされ、寝間着のシャツが辛うじて肩に引っかかっている。そんなあられもない姿で、アルフォルトはライノアが与える快楽に、身悶えていた。
 背後から身体を抱き込まれているせいで逃げ場がなく、先程からライノアの指に翻弄されている。
 つぅ、と脇腹を撫でていた指が上へと肌を辿り、胸の飾りを指先が掠めた。
「や、ぁんっ」
 両方の先端を摘まれると、アルフォルトの身体はビクン、と跳ねた。
「相変わらず乳首弱いですね」
 耳元で揶揄うように囁かれ、頬に朱が差す。
「っ、エディの、触り方が、いやらし······から、んっ、ぁああッ」 
 反論すると、すっかり硬くなった乳首を爪で引っかかれ、甘い痛みに腰の奥が重くなる。
 快楽をやり過ごそうと俯くと、触られてもいないのに反応し始めた 自身の昂りが視界に入り、羞恥に目を瞑った。 
「······そこばっかり、やだ、エディ······」
「ルト、二人の時は······お願いしたじゃないですか」
 責めるようにきゅっと胸の尖りを強く摘まれて、アルフォルトは悲鳴を上げた。
「やぁああっ、······ライノアっ」
 執拗に弄られて感覚が鋭敏になった胸は、些細な刺激すら快感になる。
 アルフォルトが涙目で訴えれば、ライノアに噛み付くように唇を貪られ、舌を吸われる。
 ようやく唇が離れ、肩で息をしているアルフォルトは、急に訪れた刺激に肩を跳ねさせた。
「ひゃぁっ!?ぁ、んんっ」
 ライノアの長い指が、すっかり反応しきったアルフォルトの性器に絡みつく。緩やかに上下に動かされアルフォルトは目を見開いた。
「······こっちも、触って欲しかったんでしょう?」
 耳元で低く囁かれる声が、腰に響く。
「胸とキスだけでこんなにして、いやらしですね」
 クスクスと笑う振動にすら身体が反応してしまう。意地悪な言葉に、アルフォルトはさらに顔を赤くして、かぶりを振った。
「ゃ、言わない······で、んっ、ぁあッ」  
「可愛い、アルフォルト」
 ちゅ、と首筋を吸われ、甘噛みされる。肌を辿る舌の感触に、思わずシーツを強く握りしめた。
 手を動かされる度にくちゅくちゅ、と濡れた音がして、羞恥心を煽られる。
「はぁ······ンッ、もぅ······だめ······ッ」
 内腿が震え、アルフォルトがぎゅっと目を瞑ると、ライノアは先端を抉るように刺激してくる。尾骶骨を突き抜けるような快感の波が押し寄せ──その手に白濁を吐き出した。
「······やぁ、ぁあああッ·······っ」
 くたり、と身体を預けて肩で息をしていると、ライノアは白濁に汚れた手で後ろの蕾を撫でた。
「ひぁっ!?······ぁ、んんッ」
「力、抜いていて下さいね」
 つぷ、と爪の先が埋まり、アルフォルトははらの中をまさぐる指の感触に眉を寄せた。
 何度抱かれても、この瞬間だけは中々慣れない。
「痛くないですか?」
 気遣うような指の動きに、アルフォルトは頷いた。
「大丈夫、いたく、ないよ······ッ」
 答えると、ライノアの指が更に奥へと入り込む。二本に増やされた指がある一点を掠め、アルフォルトは嬌声を上げた。指先がそこを掠める度に口から零れる高い声が恥ずかしくて、手の甲で覆って声を抑えた。すかさずライノアの手に絡め取られ、シーツに縫い付けられる。
「声、抑えないで······ちゃんとその可愛い声を聞かせて下さい」
「ゃ、だ、恥ずかし······っ、ぁあッ、ふぅ······」  
 自分の物とは思えない甘ったるい悲鳴と、濡れた音が鼓膜を震わせ、アルフォルトはいたたまれなくて今度は唇を噛む。
「ルト、唇を噛まないで。血が出たらどうするんですか······噛むなら私の指を噛んで下さい」
 指がアルフォルトの唇を撫で、そのまま口の中へと入り込む。
「んんっ、ふ······ぅあっ」
 ライノアの指を噛める訳が無い。ためらっていると、指先が舌を撫で口の中を擽る。同時に後孔も刺激され、アルフォルトは涙をボロボロと零して与えられる快楽に喘いだ。
 
 そうして、ぐずぐずになるまで甘やかされて──ライノアの指が後孔から引き抜かれると、足が胸まで着きそうなくらい押し上げられ、柔らかく解れた蕾に熱い切っ先が押し当てられる。
「······怖かったり、痛かったら我慢しないで言って下さいね······」
 はぁ、と深く息を吐くライノアの目は欲情して潤んでいる。本当は直ぐにでも貫きたいのがわかるのに。こんな時ですらアルフォルトを気遣うライノアの優しさに、大切にされているのがわかって胸の奥が熱くなる。
「ぁ、んっ、だいじょうぶ、だから······」
 ──ライノア、の好きにして。
 そう小さく呟くと、ライノアは低く唸り──アルフォルトの腰を掴むと、一気に貫いた。
「ぁあァッ!!」
「······くっ」
 熱く猛った怒張が狭い胎の中を押し拡げ、指では届かなかった奥を擦られる刺激に身悶える。
 はくはく、と浅い呼吸を繰り返すアルフォルトの唇を塞ぎ、深く口腔を犯すライノアの舌に翻弄される。
「んんっ、ふ、ぁ······」
 ようやく唇が離れ、絡めた舌から唾液が糸を引く様が淫靡だった。
 不安定に揺れる身体がもどかしくて、緩やかに腰を動かすライノアの首に手を回すと、甘く蕩けるように笑みを浮かべる。
「しっかり掴まってて下さいね」
 コクンと頷くと、先程よりも動きが早くなる。
「ぁっ、あつ、ぃッ······」
 中を擦る熱い楔に、思考すら甘く溶かされてゆく。
 ライノアの額を汗が流れ、熱に浮かされたような瞳が堪らなく色っぽくて、アルフォルトはゴクリと喉を鳴らした。
 普段の性欲なんて無さそうな、清廉で隙のない雰囲気からはとても想像できない。
 こんな人間味溢れるライノアを知っているのは自分だけなのだと思うと、嬉しさでどうにかなりそうだった。
 
お互いに何度目かの精を吐き出し、それでもまだ足りなくて、肌を重ねたまま荒い呼吸を整えていると、ライノアがおもむろに口を開いた。
「······ねぇ、アルフォルト」
 頬を撫でられ、アルフォルトはライノアを見つめる。涙で視界がずっとぼやけたままだが、ライノアがどんな顔をしているのかは何故かわかった。つう、とライノアの指が下腹部を撫でる。
「······今日はもっとまで、愛してもいいですか?」
「ん······おく······?」
 快楽で思考もぐずぐずになったアルフォルトは、意味がわからずオウム返しになってしまった。
「そう······最初は少し痛くて苦しいかもしれないんですが······勿論無理に、とは言いません。嫌なら嫌って言って下さい」
 窺うようなライノアの声に、アルフォルトは少し考え──それから小さく頷いた。
「いい、よ······ライノアがくれるものなら、いたいのも、くるしいのも、へいき」
 ──だから、もっと愛して欲しい。
 そう、目で訴えたら、ライノアがぎりっと奥歯を噛み締めた。
「······あまり煽らないで。歯止めが効かなくなる」
「あおって、ない······ッう?!」
 下腹部を撫でていたライノアの指が、ぐっとアルフォルトの薄い腹を押した。
 内臓を押し下げる様な奇妙な感覚に眉を寄せると、アルフォルトの中でまだ衰えていないライノアの熱い昂りが、胎のを突いた。
「······ひぐ、ぅぁあッ!!」
 緩やかにその壁を突く刺激に、脳が警鐘を鳴らす。身体から変な汗が吹き出し、足が震えた。
本能がこれ以上はダメだ、と訴えている。身体がどうなるかわからない恐怖がじわりと胸を支配し、ライノアを止めようと震える手を伸ばした。しかし、力の上手く入らない手は、ライノアの胸に触れただけで、そのままパタリ、とシーツに落ちた。
 それに。
 眉を寄せて快楽に耐え、恍惚とした表情でアルフォルトを見つめるライノアをもっと見たい、と思ってしまった。
 自分の身体なんて、どうなったって構わない。それよりもライノアが自分をこんなに激しく求めている事が──息が出来なくなりそうなほど、嬉しい。
覚悟を決めて身を任せると、ライノアはアルフォルトの両足をシーツに付くほど割り開いた。
 身体が柔らかいアルフォルトはなんの抵抗もなくあられもない姿にさせられ、理性が飛びかけているにも関わらず、羞恥にさらに頬を染めた。
 しかし、そんな事すらどうでも良くなる衝撃が、胎の中に訪れた。
「いっ?!······ぅぐッ、······っ、ぁああぁあァ──······」
「っ······」
 ゴリュっと鈍い音と共に、奥の壁がこじ開けられ、アルフォルトはほぼ絶叫していた。  
 未知の感覚に一瞬意識が飛ぶが、胎の中を満たす熱にすぐ呼び戻される。
 痛い。
 苦しい。
 怖い──はずなのに。
(なに、コレ······気持ち良い······)
 ず、っと奥へ入り込んだライノアの昂りに、アルフォルトの中が吸い付くように蠢いたのが、自分でもわかった。
「ぁああああっ」 
 奥を突かれる度に、アルフォルトの性器から白く吐き出される精液が、お互いの腹部を濡らした。強すぎる快楽が怖いのに、気持ちよくて、もっと欲しくて。
自分では止めることが出来ず、思い通りにならない身体が怖くて、ライノアを見つめる。
「っぅ、らいの、あっ、たすけ······て、」
「アル、フォルト······ッくっ」 
 熱に浮かされたように名前を呼ばれ、思わず中を締め付けてしまう。
「あたま、おかしく、なる······ぁあッ、こわ、れ、ちゃう······っ」
 息も絶え絶えに喘ぎながらライノアに縋り付くと、身体を強すぎる力で抱きしめられた。
「······ルト、っ······一緒に······おかしくなりましょうっ······」
 涙でぐちゃぐちゃになっているであろう顔で、ライノアに懇願すると、ライノアはぐっと腰を突き上げた。
 途端、目の前が白く明滅し、頭の中まで真っ白になる程の快感が押し寄せる。
 身体が痙攣し、胎の中が蠕動する。ライノアの穿つ楔を締め付け、その熱さにアルフォルトは悲鳴を上げた。
「!?ぁ、ぁあぁあああッ────······」
「くっ······」
胎の中が熱く濡れる感覚に、堪らない程の幸福感を覚え──アルフォルトは意識を手放した。

 

「馬鹿、ライノアの馬鹿」
 真っさらになったシーツの上で、アルフォルトはぐったりとしていた。
 意識を手放した後、動けなくなったアルフォルトを風呂に入れて着替えさせ、甲斐甲斐しく世話をしてくれたライノアを睨んだ。
 世話をさせておいて、と思わなくもないが、こうなった原因はライノアにある。
 声も枯れて、喉がヒリヒリする。
 それもそうだ。あんなに長い時間泣かされ続けたのだ。喉だって荒れる。
 そこまで考えて、先程の痴態を思い出して一人で百面相をしていると、目の前に冷たいグラスが差し出された。
「······」
 無言で受け取り、一口飲む。
 甘酸っぱいレモンの風味が、喉を潤す。
 シェーン特性のレモネードは、アルフォルトの大好物だが、今の時間に飲めると言うことは──。
「ぅゎああ~ライノアのばか~!」
「······急に耳元で大きな声出さないで下さい」
 アルフォルトの悲鳴に、ライノアは肩をビクっとさせて苦言を呈した。普段動じないライノアにしては珍しく、アルフォルトは少しだけ溜飲が下がる思いだった。
(······今日の不寝番はシェーンだったということは、メリアンヌもか)
 つまり、自分のあられもない声は隣室の不寝番にほぼ筒抜けだったという訳で──次にどんな顔をして合えばいいのか、とアルフォルトは頭をかかえた。
 王族や貴族ならそれが普通だと頭では理解しているが、アルフォルトは未だに恥ずかしくて堪らない。
 そういうライノアは、いつも平然としているよな、とアルフォルトが顔を上げると。
「······どうしたの?」
 ライノアがなんとも言えない顔でアルフォルトを見つめていた。
「いえ、今日の不寝番はシェーンだった事を思い出し、貴方が好きなレモネードをお願いしに行ったんですが······」
 ライノアは言葉を区切ると、かぶりを振った。
「いえ、なんでもありません」
 そう言って、ライノアは身震いした。
 よくわからないが、アルフォルトは首を傾げてレモネードを飲み干した。
 空になったグラスを手渡すと、ライノアが窺うようにアルフォルトを見つめる。
「その、痛かった、ですよね······」
 怒られた犬のような表情で、アルフォルトの手を握った。
「すみません、貴方に負担を強いて、また怖がらせてしまった······」
 落ち込んだ様子に、アルフォルトは苦笑いする。さっきからアルフォルトが怒っているのを気にしていたらしい。
(かわいい······)
 自分よりも大きな男がしゅんとしている様に、無性に庇護欲を掻き立てられる。
 アルフォルトは、ライノアの手を握り返して、空いているもう片方の手で頭を撫でた。
「僕も良いって言ったから、大丈夫だよ。確かに、ちょっと痛かったし、初めての感覚が怖いって思ったけど······」
 最後の方は、恥ずかしくてゴニョニョと誤魔化すようになってしまった。
「ライノアが怖いって訳じゃないからそんな顔しないで」
 頬を染めたまま、アルフォルトは微笑んだ。
 そんなアルフォルトを見つめ、ライノアも微笑むと唇を重ねた。
 そっと啄んで、離れる。
「貴方を前にすると······自分はこんなに堪え性がないのか、と不安になるんです」
 自嘲気味に笑うライノアの頬を、アルフォルトは摘んだ。
「君に求められるのは、嬉しいけど······その、いつもあんなに激しいのは、無理だからね!」
 ライノアの腕に抱かれ、肌を重ねる喜びはアルフォルトにもある。しかし、先程のように激しすぎるのは──時々で、良い。
「努力は、します。ルトが可愛いすぎて、ついタガが外れるんですよね······」
「ライノアはタガが外れすぎ!」
 僕、体力が無いのは知っているでしょ!と怒れば、ライノアはクスクスと笑い、その腕にアルフォルトを抱きしめてベッドに沈む。
 温かく優しい腕に抱かれると、安心感からか次第に瞼が重くなる。
 うとうととし始めたアルフォルトだが、これだけは言わなきゃ、と身体の向きを変え、ライノアの胸に額を擦り寄せた。
「······ライノア」
「なぁに、アルフォルト」
 問いかける声が、甘い。
「愛してる」
 そして、見上げたライノアの蒼い瞳は、声と同じくらい甘く蕩けて、アルフォルトの額に口付けると微笑んだ。
「私も愛してる、アルフォルト──お休みなさい」
 幸せすぎて、胸がいっぱいで。
 幸福感に微睡みながら、アルフォルトは眠りに落ちた。
 
 

 
 
 
 




 
 
   

 
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