15 / 31
Day 14:さよなら、「光を拒んでいた」私
しおりを挟む
その変化は、あまりに静かで、日常に溶け込んでいたから、もう少しで気づかずに通り過ぎてしまうところだった。
いつものように、朝、目が覚める。カーテンの向こうから、いつもと同じ光が差し込んでいる。
身体を起こし、ぼんやりとした頭でカーテンを開ける。
その瞬間、息を呑んだ。
◇
目に飛び込んできた光が、昨日までとは明らかに違って見えたのだ。
これまでの朝日は、どこか白々しく、無機質だった。
世界の残酷さを照らし出すだけの、冷たい光。
私を置いてきぼりにして一日を始めようとする、無慈悲な照明。
そう感じていた。
でも、今朝の光は違った。
それは、淡い金色を帯びた、柔らかく、温かい光だった。
窓辺に置いたモンステラの葉を透かし、その葉脈を美しく浮かび上がらせている。
床に落ちる光は、キラキラと輝く粒子のようで、部屋の埃さえも、まるで生命を持っているかのように舞い踊っていた。
◇
気のせいなんかじゃない。
光そのものが変わったのではない。光を受け止める、私の心が変わったのだ。
これまでは、心のシャッターが固く閉ざされていて、光はただの「明るさ」という情報でしかなかった。
でも今、そのシャッターが、ほんの少しだけ、軋む音を立てて開き始めている。
光の持つ、色彩や温度、その質感を、ようやく感じ取れるようになったのだ。
キッチンに立ち、コーヒーを淹れる。
朝日が差し込むテーブルの上で、黒い液体が湯気を立てている。
その湯気が光に照らされて、銀色に輝いて見えた。
まるで、心の中のシャッターが開いたみたいに。
ただの日常の風景。でも、その一つ一つが、まるで名画の一場面のように、美しく、尊いものに感じられた。
◇
窓を開けると、心地よい風が流れ込んできた。
この二週間、私は暗い海の底に沈んでいた。
光の届かない、音もない、冷たい場所で。
でも、少しずつ、ほんの少しずつ、水面に向かって浮上していたのかもしれない。
そして今日、ようやく指先が水面に触れ、本物の太陽の光を感じることができた。
まだ、全身が光の中にいるわけじゃない。
でも、この指先に感じた温かさを忘れなければ、きっと、いつか全身でこの光を浴びることができる。
指先に伝わる温かさが、心にも染み渡っていく。
その予感が、確信に変わった朝だった。
私はマグカップを片手に、窓辺に立ち、しばらくその金色の光を浴び続けた。
それは、失われたビタミンを補給するような、静かで、満ち足りた時間だった。
いつものように、朝、目が覚める。カーテンの向こうから、いつもと同じ光が差し込んでいる。
身体を起こし、ぼんやりとした頭でカーテンを開ける。
その瞬間、息を呑んだ。
◇
目に飛び込んできた光が、昨日までとは明らかに違って見えたのだ。
これまでの朝日は、どこか白々しく、無機質だった。
世界の残酷さを照らし出すだけの、冷たい光。
私を置いてきぼりにして一日を始めようとする、無慈悲な照明。
そう感じていた。
でも、今朝の光は違った。
それは、淡い金色を帯びた、柔らかく、温かい光だった。
窓辺に置いたモンステラの葉を透かし、その葉脈を美しく浮かび上がらせている。
床に落ちる光は、キラキラと輝く粒子のようで、部屋の埃さえも、まるで生命を持っているかのように舞い踊っていた。
◇
気のせいなんかじゃない。
光そのものが変わったのではない。光を受け止める、私の心が変わったのだ。
これまでは、心のシャッターが固く閉ざされていて、光はただの「明るさ」という情報でしかなかった。
でも今、そのシャッターが、ほんの少しだけ、軋む音を立てて開き始めている。
光の持つ、色彩や温度、その質感を、ようやく感じ取れるようになったのだ。
キッチンに立ち、コーヒーを淹れる。
朝日が差し込むテーブルの上で、黒い液体が湯気を立てている。
その湯気が光に照らされて、銀色に輝いて見えた。
まるで、心の中のシャッターが開いたみたいに。
ただの日常の風景。でも、その一つ一つが、まるで名画の一場面のように、美しく、尊いものに感じられた。
◇
窓を開けると、心地よい風が流れ込んできた。
この二週間、私は暗い海の底に沈んでいた。
光の届かない、音もない、冷たい場所で。
でも、少しずつ、ほんの少しずつ、水面に向かって浮上していたのかもしれない。
そして今日、ようやく指先が水面に触れ、本物の太陽の光を感じることができた。
まだ、全身が光の中にいるわけじゃない。
でも、この指先に感じた温かさを忘れなければ、きっと、いつか全身でこの光を浴びることができる。
指先に伝わる温かさが、心にも染み渡っていく。
その予感が、確信に変わった朝だった。
私はマグカップを片手に、窓辺に立ち、しばらくその金色の光を浴び続けた。
それは、失われたビタミンを補給するような、静かで、満ち足りた時間だった。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。
今日は同期飲み会だった。
後輩のミスで行けたのは本当に最後。
飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。
彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。
きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。
けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。
でも、あれから変わった私なら……。
******
2021/05/29 公開
******
表紙 いもこは妹pixivID:11163077
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる