『さよなら、彼に依存していた私―30日間の失恋回復ストーリー』

月下花音

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Day 14:さよなら、「光を拒んでいた」私

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 その変化は、あまりに静かで、日常に溶け込んでいたから、もう少しで気づかずに通り過ぎてしまうところだった。

 いつものように、朝、目が覚める。カーテンの向こうから、いつもと同じ光が差し込んでいる。

 身体を起こし、ぼんやりとした頭でカーテンを開ける。

 その瞬間、息を呑んだ。

 ◇

 目に飛び込んできた光が、昨日までとは明らかに違って見えたのだ。

 これまでの朝日は、どこか白々しく、無機質だった。

 世界の残酷さを照らし出すだけの、冷たい光。

 私を置いてきぼりにして一日を始めようとする、無慈悲な照明。

 そう感じていた。

 でも、今朝の光は違った。

 それは、淡い金色を帯びた、柔らかく、温かい光だった。

 窓辺に置いたモンステラの葉を透かし、その葉脈を美しく浮かび上がらせている。

 床に落ちる光は、キラキラと輝く粒子のようで、部屋の埃さえも、まるで生命を持っているかのように舞い踊っていた。

 ◇

 気のせいなんかじゃない。

 光そのものが変わったのではない。光を受け止める、私の心が変わったのだ。

 これまでは、心のシャッターが固く閉ざされていて、光はただの「明るさ」という情報でしかなかった。

 でも今、そのシャッターが、ほんの少しだけ、軋む音を立てて開き始めている。

 光の持つ、色彩や温度、その質感を、ようやく感じ取れるようになったのだ。

 キッチンに立ち、コーヒーを淹れる。

 朝日が差し込むテーブルの上で、黒い液体が湯気を立てている。

 その湯気が光に照らされて、銀色に輝いて見えた。

 まるで、心の中のシャッターが開いたみたいに。

 ただの日常の風景。でも、その一つ一つが、まるで名画の一場面のように、美しく、尊いものに感じられた。

 ◇

 窓を開けると、心地よい風が流れ込んできた。

 この二週間、私は暗い海の底に沈んでいた。

 光の届かない、音もない、冷たい場所で。

 でも、少しずつ、ほんの少しずつ、水面に向かって浮上していたのかもしれない。

 そして今日、ようやく指先が水面に触れ、本物の太陽の光を感じることができた。

 まだ、全身が光の中にいるわけじゃない。

 でも、この指先に感じた温かさを忘れなければ、きっと、いつか全身でこの光を浴びることができる。

 指先に伝わる温かさが、心にも染み渡っていく。

 その予感が、確信に変わった朝だった。

 私はマグカップを片手に、窓辺に立ち、しばらくその金色の光を浴び続けた。

 それは、失われたビタミンを補給するような、静かで、満ち足りた時間だった。
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