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Day 26:さよなら、「笑えなかった」私
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物語が始まった場所、そして私が最も恐れていた場所。
洗面所の、あの鏡の前。朝の光が、鏡の表面を柔らかく照らしている。
毎朝、毎晩、私はこの鏡と向き合ってきた。泣き腫らした顔、絶望に満ちた顔、決意を秘めた顔、そして少しずつ力を取り戻していく顔。この鏡は、私の30日間のすべてを知っている、唯一の証人だった。
その朝、歯を磨きながら、何気なく鏡の中の自分と目が合った。
そして、自然に、ふわりと、口角が上がった。
それは、意識して作った笑顔ではなかった。Day1に試みたような、筋肉の引きつりでもない。Day20に自分を肯定した時の、静かな微笑みとも違う。
心の中から、自然に湧き上がってきた、何のてらいもない、ただの「笑顔」だった。
ああ、私、今、笑ってる。
笑えるようになったんだ。
その事実に気づいた瞬間、嬉しさと、安堵と、これまでの日々への愛しさが一気に込み上げてきた。
鏡の中の私も、同じように笑っている。目元には、幸せそうな皺が寄っている。
ショートボブの髪が、その笑顔に合わせて、楽しげに揺れた。
彼といた頃、私はよく笑っていた。でも、今思うと、その笑顔の多くは、彼に「可愛い」と思われたい、彼を喜ばせたい、という意識がどこかにあった気がする。
でも、今のこの笑顔は違う。
誰のためでもない。ただ、私が嬉しいから、おかしいから、幸せだから、笑っている。
100%、私自身のための笑顔。
こんなにも自然に笑えたのは、いつぶりだろう。
もしかしたら、彼と出会う前の、もっとずっと昔に戻ったのかもしれない。いや、違う。これは、過去に戻ったのではなく、たくさんの涙の海を泳ぎ切った先で、ようやくたどり着いた、新しい笑顔なのだ。
私は、鏡に映る自分に向かって、もう一度、にっこりと笑いかけた。
「おはよう、私。今日も、いい一日になりそうだね」
鏡の中の彼女も、力強く頷き返してくれた。
もう、この鏡は怖くない。ここは、私の一番の味方がいる場所になった。
一日が、最高の笑顔で始まった。これ以上、何を望むというのだろう。
洗面所の、あの鏡の前。朝の光が、鏡の表面を柔らかく照らしている。
毎朝、毎晩、私はこの鏡と向き合ってきた。泣き腫らした顔、絶望に満ちた顔、決意を秘めた顔、そして少しずつ力を取り戻していく顔。この鏡は、私の30日間のすべてを知っている、唯一の証人だった。
その朝、歯を磨きながら、何気なく鏡の中の自分と目が合った。
そして、自然に、ふわりと、口角が上がった。
それは、意識して作った笑顔ではなかった。Day1に試みたような、筋肉の引きつりでもない。Day20に自分を肯定した時の、静かな微笑みとも違う。
心の中から、自然に湧き上がってきた、何のてらいもない、ただの「笑顔」だった。
ああ、私、今、笑ってる。
笑えるようになったんだ。
その事実に気づいた瞬間、嬉しさと、安堵と、これまでの日々への愛しさが一気に込み上げてきた。
鏡の中の私も、同じように笑っている。目元には、幸せそうな皺が寄っている。
ショートボブの髪が、その笑顔に合わせて、楽しげに揺れた。
彼といた頃、私はよく笑っていた。でも、今思うと、その笑顔の多くは、彼に「可愛い」と思われたい、彼を喜ばせたい、という意識がどこかにあった気がする。
でも、今のこの笑顔は違う。
誰のためでもない。ただ、私が嬉しいから、おかしいから、幸せだから、笑っている。
100%、私自身のための笑顔。
こんなにも自然に笑えたのは、いつぶりだろう。
もしかしたら、彼と出会う前の、もっとずっと昔に戻ったのかもしれない。いや、違う。これは、過去に戻ったのではなく、たくさんの涙の海を泳ぎ切った先で、ようやくたどり着いた、新しい笑顔なのだ。
私は、鏡に映る自分に向かって、もう一度、にっこりと笑いかけた。
「おはよう、私。今日も、いい一日になりそうだね」
鏡の中の彼女も、力強く頷き返してくれた。
もう、この鏡は怖くない。ここは、私の一番の味方がいる場所になった。
一日が、最高の笑顔で始まった。これ以上、何を望むというのだろう。
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2021/05/29 公開
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