幼馴染に「つまらない」と捨てられた俺、実は学校一のクール美少女(正体は超人気覆面配信者)の「生活管理係」でした。

月下花音

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第4話:元カノの誤算

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 日曜日の昼下がり。
 駅前のショッピングモールは、幸せそうなカップルで溢れかえっていた。

 私(朝比奈美咲)は、その雑踏の中を歩いていた。
 隣には、サッカー部のエース、拓海先輩。
 背が高くて、爽やかで、クラスの女子みんなが憧れるブランド品みたいな彼氏。

 最高のデート。
 ……のはずなんだけど。

「……痛っ」

 私は小さく呻いた。
 今日のために卸した7センチヒールのパンプスが、踵に食い込んでいる。
 もう三十分も歩きっぱなしだ。

「拓海センパイ、ちょっと待って……」

 私が声をかけると、五メートル先を歩いていた拓海先輩が、やっと振り返った。

「え? どうしたミサ、歩くの遅くね?」
「あ、ごめんなさい……ちょっと靴擦れしちゃって……」
「マジ? なんだよ、鍛え方足りねーなー」

 彼は爽やかに笑って、それだけ。
 「大丈夫?」とも言わないし、手を貸してもくれない。
 またスタスタと歩き出してしまう。

 ……あれ?
 なんか、違くない?

 私の脳裏に、無意識のうちに「比較対象」が浮かんでしまう。

 『湊』なら。
 相沢湊なら、絶対に私の歩幅に合わせて歩いた。
 私が「痛い」と言う前に気づいて、「絆創膏あるよ」って差し出してくれた。
 なんなら、「そこのカフェで休もうか」って、私の好きなフラペチーノを奢ってくれたはずだ。

 ――いや、比べるのはやめよう。
 あいつはただの「地味な幼馴染」で、拓海先輩は「学園のカーストトップ」なんだから。
 スペックが違う。

「おーい、早くしろよー。映画始まっちゃうぞー」
「……はい、今行きます!」

 私は痛む足を引きずって、小走りで追いかけた。
 喉が渇いた。
 湊なら、私が何も言わなくても、バッグからペットボトルのお茶を出してくれたのに。

 映画館に入り、私たちは話題のアクション映画を観た。
 正直、趣味じゃない。私は恋愛映画が観たかったけど、先輩が「これ絶対おもしれーから!」って譲らなかったから。

 上映後。
「いやー、マジ最高だったわ! あの爆発シーン!」
「そ、そうですねー」
「俺もあんな風にシュート決めたいわー、あ、今度の試合見に来るだろ? 応援頼むな!」

 先輩はずっと自分の話ばかりしている。
 私の感想も聞かないし、私の新しい髪型にも気づかない。

 ……疲れる。
 湊なら、「ミサはどうだった?」「その髪留め、似合ってるね」って、私の機嫌を取るのが当たり前だったのに。

(……なんか、不便になってない?)

 私はふと、そんなことを思った。
 
 拓海先輩は、確かに見た目は最高だ。
 でも、機能性(スペック)で言えば、湊の方が遥かに上だったんじゃないか?
 
 まるで、多機能で使いやすかった国産の型落ち家電を捨てて、見た目だけの海外製高級家電に買い替えたような。
 スイッチ入れても動かないし、サポートもないし、ただ置いてあるだけで電気代だけ食うような、そんな「損した気分」。

「あー、腹減ったな。マックでいい?」
「え……今日はおしゃれなカフェ行くって……」
「混んでるし面倒くせーよ。マックでいいだろ」

 先輩は私の返事も待たずに、マックの列に並び始めた。
 
 私はヒールの痛みと、空腹と、徒労感でクラクラした。
 
 ……湊に連絡しようかな。
 あいつなら、まだ私のこと好きだろうし。
 「友達として」相談に乗ってほしいって言えば、喜んで飛んでくるはずだ。
 愚痴を聞かせて、私の好きなケーキでも買わせて、機嫌を取らせよう。
 
 そうだ、そうしよう。
 別れたとはいえ、幼馴染なんだから、それくらいの「役割」は果たしてもらわないと。

 私はスマホを取り出した。
 画面には、湊のアイコンがある。

「……あれ?」

 ブロックされてはいない。
 でも、私が昨日送った「教科書貸して」のメッセージ。
 まだ既読がついていなかった。

(なによ、忙しいの?)

 湊のくせに。
 私のLINEを無視するなんて、生意気だ。

 私はイラつきながら、スマホをバッグに放り込んだ。
 その時、ふと、昨日の教室での出来事を思い出した。

 天道玲奈。
 あの氷の女が、なんで湊の近くにいたんだっけ?
 ……まあ、いいか。
 あんな地味な男、天道さんが相手にするわけないし。

「おーいミサ、何してんだよ。席取っておいたぞ」

 拓海先輩の声。
 私は作り笑いを浮かべて、「あーい!」と返事をした。

 まだ気づいていなかった。
 私が捨てた「型落ち家電」が、実は市場価値の極めて高い「限定品」だったことに。
 そしてそれを、既に誰かが拾って、独り占めしていることに。

(つづく)
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