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第12話:伝説のデレ
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翌朝。
俺が教室に入ると、空気が裂けるような衝撃が走った。
クラス全員の視線が、俺に突き刺さる。
好奇心、嫉妬、畏怖。
昨日の今日だ。当然だろう。
「おい相沢、マジなのかよ……」
「天道さんと……どういう関係なんだよ……」
男子たちが遠巻きにヒソヒソと囁く。
俺は無視して席に着いた。
心臓はバクバクしているが、ここで動揺したら負けだ。俺は「氷の令嬢のオーナー」という謎の役職を演じ切らなきゃならない。
チャイムが鳴り、担任が入ってくる。
ホームルームが始まろうとした、その時だった。
ガラララッ!
後ろのドアが荒々しく開いた。
現れたのは、天道玲奈。
ただし、いつもの完璧な姿ではない。
髪は少しボサボサ。ネクタイは緩み、目の下には薄っすらとクマがある。
そして何より、千鳥足だ。
今にも倒れそうなゾンビ歩きで、教室に入ってきた。
「て、天道? 大丈夫か? 遅刻だぞ」
担任が声をかけるが、玲奈は無視。
彼女は虚ろな目で教室内を見渡し――俺を見つけると、ふらりと軌道を変えた。
一直線に、俺の席へと向かってくる。
「……みなとぉ……」
甘えた声が、静かな教室に響いた。
クラス全員が息を呑む。
玲奈は俺の机の横まで来ると、自分の席には戻らず、立ち止まった。
「……充電切れ」
それだけ言うと、彼女は信じられない行動に出た。
くるりと背を向け、そのまま俺の膝の上に――ストン、と座り込んだのだ。
!?!?!?
教室中から、声にならない悲鳴が上がった。
担任がチョークを落とした。
俺の膝の上に、学校一の美少女が乗っている。
柔らかい感触。背中に預けられた全体重。
そして、鼻先をくすぐるバニラの香り。
「お、おい玲奈!? 何して……!」
「……うるさい。動かないで」
玲奈は不機嫌そうに呟くと、俺の腕を勝手に掴んで、自分の腰に回させた。
まるでシートベルトだ。
そして、俺の胸に背中を預け、完全に脱力した。
「……ふぅ。……落ち着く」
彼女は満足げにため息をつき、目を閉じた。
「こ、こら天道! いい加減に――」
「――シッ」
玲奈が人差し指を口元に立てた瞬間、教室の温度が氷点下まで下がった。
絶対零度の瞳が、担任を射抜く。
「……うるさい。今、『充電』してるの。……ノイズを入れないで」
担任がパクパクと口を開閉させて凍りつく。
周囲を完全に黙らせると、玲奈はとろけるような甘い声で、俺だけに囁いた。
「……ね、湊。続き、しよ?」
責任取ってよね、と言いたげに、俺の手をぎゅっと握る。
……マジかよ。
こいつ、完全に「デレ」のリミッターが外れてやがる。
恥ずかしさとか、世間体とか、そういうOSの機能をアンインストールしてきやがった。
教室はカオスだった。
「マジかよ天道さん……」「相沢の膝、いくらで売ってくれるんだ?」「尊すぎて直視できない」
もはや誰も、二人の関係を疑う者はいなかった。
ここまで堂々とされたら、それはもう「スキャンダル」ではなく「伝説」だ。
ふと見ると、ミサが呆然と口を開けてこちらを見ていた。
彼女の目には、もはや嫉妬の色さえない。
あまりにも次元の違う「信頼(依存)」を見せつけられて、戦意喪失しているようだった。
「……はぁ。分かったよ」
俺は諦めて、玲奈の腰に回した腕に力を入れた。
ずり落ちないように、しっかりと支えてやる。
それが、彼女の「所有物」としての俺の務めらしいから。
「おやすみ、お姫様」
「……ん。……ありがと、旦那様」
玲奈は幸せそうに微笑み、数秒後には規則正しい寝息を立て始めた。
こうして、俺は「学校一のクール美少女の玉座(ソファ)」として、高校生活の新たな一ページを刻むことになった。
重い。物理的にも、愛情的にも。
でも、背中合わせの体温が、俺に「生きている実感」を与えてくれていた。
(つづく)
俺が教室に入ると、空気が裂けるような衝撃が走った。
クラス全員の視線が、俺に突き刺さる。
好奇心、嫉妬、畏怖。
昨日の今日だ。当然だろう。
「おい相沢、マジなのかよ……」
「天道さんと……どういう関係なんだよ……」
男子たちが遠巻きにヒソヒソと囁く。
俺は無視して席に着いた。
心臓はバクバクしているが、ここで動揺したら負けだ。俺は「氷の令嬢のオーナー」という謎の役職を演じ切らなきゃならない。
チャイムが鳴り、担任が入ってくる。
ホームルームが始まろうとした、その時だった。
ガラララッ!
後ろのドアが荒々しく開いた。
現れたのは、天道玲奈。
ただし、いつもの完璧な姿ではない。
髪は少しボサボサ。ネクタイは緩み、目の下には薄っすらとクマがある。
そして何より、千鳥足だ。
今にも倒れそうなゾンビ歩きで、教室に入ってきた。
「て、天道? 大丈夫か? 遅刻だぞ」
担任が声をかけるが、玲奈は無視。
彼女は虚ろな目で教室内を見渡し――俺を見つけると、ふらりと軌道を変えた。
一直線に、俺の席へと向かってくる。
「……みなとぉ……」
甘えた声が、静かな教室に響いた。
クラス全員が息を呑む。
玲奈は俺の机の横まで来ると、自分の席には戻らず、立ち止まった。
「……充電切れ」
それだけ言うと、彼女は信じられない行動に出た。
くるりと背を向け、そのまま俺の膝の上に――ストン、と座り込んだのだ。
!?!?!?
教室中から、声にならない悲鳴が上がった。
担任がチョークを落とした。
俺の膝の上に、学校一の美少女が乗っている。
柔らかい感触。背中に預けられた全体重。
そして、鼻先をくすぐるバニラの香り。
「お、おい玲奈!? 何して……!」
「……うるさい。動かないで」
玲奈は不機嫌そうに呟くと、俺の腕を勝手に掴んで、自分の腰に回させた。
まるでシートベルトだ。
そして、俺の胸に背中を預け、完全に脱力した。
「……ふぅ。……落ち着く」
彼女は満足げにため息をつき、目を閉じた。
「こ、こら天道! いい加減に――」
「――シッ」
玲奈が人差し指を口元に立てた瞬間、教室の温度が氷点下まで下がった。
絶対零度の瞳が、担任を射抜く。
「……うるさい。今、『充電』してるの。……ノイズを入れないで」
担任がパクパクと口を開閉させて凍りつく。
周囲を完全に黙らせると、玲奈はとろけるような甘い声で、俺だけに囁いた。
「……ね、湊。続き、しよ?」
責任取ってよね、と言いたげに、俺の手をぎゅっと握る。
……マジかよ。
こいつ、完全に「デレ」のリミッターが外れてやがる。
恥ずかしさとか、世間体とか、そういうOSの機能をアンインストールしてきやがった。
教室はカオスだった。
「マジかよ天道さん……」「相沢の膝、いくらで売ってくれるんだ?」「尊すぎて直視できない」
もはや誰も、二人の関係を疑う者はいなかった。
ここまで堂々とされたら、それはもう「スキャンダル」ではなく「伝説」だ。
ふと見ると、ミサが呆然と口を開けてこちらを見ていた。
彼女の目には、もはや嫉妬の色さえない。
あまりにも次元の違う「信頼(依存)」を見せつけられて、戦意喪失しているようだった。
「……はぁ。分かったよ」
俺は諦めて、玲奈の腰に回した腕に力を入れた。
ずり落ちないように、しっかりと支えてやる。
それが、彼女の「所有物」としての俺の務めらしいから。
「おやすみ、お姫様」
「……ん。……ありがと、旦那様」
玲奈は幸せそうに微笑み、数秒後には規則正しい寝息を立て始めた。
こうして、俺は「学校一のクール美少女の玉座(ソファ)」として、高校生活の新たな一ページを刻むことになった。
重い。物理的にも、愛情的にも。
でも、背中合わせの体温が、俺に「生きている実感」を与えてくれていた。
(つづく)
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