29 / 37
第2章 黒領主の旦那様
29 過去を知る人
しおりを挟む
コテージに着いてしばらくすると、一人の訪問者があった。四十路近くの、眼鏡をかけた生真面目そうな女性だ。
「私はニナと申します。もう二十年、レイラ様付きの侍女をしております」
「あの後、おかあ――レイラ様は大丈夫でしたか?」
「クローディア様がお生まれになった時も、私がレイラ様のお側におりました。どうか、レイラ様をお母様と呼んで差し上げてください。きっと喜ばれますよ。そして、レイラ様はお父君を見事にあしらい問題ありません。あの方は見た目だけは華奢ですが、中身は殿方のような御方ですから」
「ありがとうございます。少し安心できました」
私はニナさんを招き入れ、お父様とお母様の昔話を聞いた。母だと直接話し辛いこともあっただろう。聞く側としても、両親の恋の話など気恥ずかしい感じもする。
ニナさんの口から聞くお父様とお母様の過去は、第三者からの視点で俯瞰されていて、すんなり心に染み入り感情移入ができた。
「ハイド領を立つ時のレイラ様ほど、憔悴しきった人を私は見たことがありません。その時、ずっとこの方のお側にいようと誓いました」
「……。ニナさん……。聞かせてくれてありがとうございます」
悲しい恋の話を聞いた私がユージーンの胸を借りて泣き濡れた後、ニナさんはクイと眼鏡を上げ姿勢を正した。
「私が本日こちらに来たのは、レイラ様の願いをお伝えするためでもあります。今からお聞かせする事はこの公国の機密事項です。パワーバランスを崩しますので、覚悟してお聞きください」
「母がそれを望むのなら、私は是非聞きたいです」
「当然、未来の妻の背負う事は私も共に背負います」
私とユージーンも背すじを伸ばし、ニナさんの話しに耳を傾けた。イスティリア王国の私たちに聞かせるということは、よほどお母様は追い詰められているのだろう。そう想像できる内容だった。
飛竜は試練を乗り越えた者の命のみを聞く。今を生きる者で試練を終えた人物はお祖父様とお母様、そしてコンラッドさんの三人。
現在はお母様の命で王国との定期便に飛竜を利用しているが、他の二人が命を変更すれば、飛竜は数が多い方に従ってしまうらしい。
お祖父様とコンラッドさんが命じれば、イスティリア王国とウィンドラ公国の国交は閉ざされる。ウィンドラの山谷風は飛竜の加護があってこそ越えられる。
そんな地の利があってこそ独立を果たした公国なのだ。
「レイラ様は、クローディア様とユージーン様お二人に試練を受けていただきたいとお考えなのです」
「試練の内容とはどのようなものでしょうか?」
「残念ながら、試練はその人間に試練となるようなものが課せられるそうです。何が課せられるかは、試練の谷に赴かないと分かりません」
試練を受けるとなると恐怖心が芽生えてくる。だけど――
「私は受けたい。このままでは二度とお母様に会えなくなってしまう。やっとこうして会えたのに……」
「俺はクローディアに危険なことはしてほしくはない。でも、クローディアにこれから先、悔いを残した生を生きてほしくもない。俺が守ればいいだけか……」
でも、ニナさんが首を振る。
「ユージーン様。残念ですが、試練は個々に与えられるのです。クローディア様と試練を伴にすることはできないと存じます」
「でも、お母様が提案をしたのなら、私にも無事試練を乗り越えられる力があると、信じてくれたからでしょう?」
「左様でございます。レイラ様はお二人なら必ず、試練を乗り越えられると信じておられます」
私はしっかりとユージーンの目を見て伝えた。
「ユージーン、試練を受けてほしい。私とお母様を助けて」
綺麗な金の瞳がゆったりと細められ、私の頬に長い指が添えられた。
「ロシスターの騎士はその言葉に弱いんだ。俺がクローディアたちのために試練を受けることに、何一つ迷いはない」
「ユージーン……」
「クローディア……」
ユージーンの手に自分の手を重ねる……。
「ゴホゴホッ」
「「!!」」
ニナさんを取り残して自分たちの世界に入ってしまった……。
「ユージーン様はオリバー様とソフィア様に大変似ていらっしゃいますね。あの方たちもよく二人だけの世界に入っていかれたものです」
「そ、そうか?」
「クローディア様もお優しいところはクライヴ様に似ていらっしゃるのに、以外と情熱家なところはレイラ様に似たのでしょうか」
「は、はあ……」
いたたまれない……。二十年母の侍女を勤めるだけあって、ニナさんのお小言は愛情に満ち溢れていて、それがチクリと良心に刺さってくる。
流石ベテラン侍女だわ。
「まだ婚約中なのですから、節度は守って下さいませ。悲恋はクライヴ様とレイラ様でもう沢山です。見ている方だって苦しいのですよ? 順序はた・い・せ・つ・に!」
「「はい!」」
「――それでは準備が出来ましたら、私が試練の谷にご案内いたします。ですから今日は盛り上がらず、ゆっくりお休みください」
思いっ切り釘を刺し、眼鏡をキラリとさせたニナさんは颯爽と母の元へと帰って行った。
確かに二人きりではあるけれど、そんなに釘を刺していかなくても私とユージーンは大丈夫。そう思っていると、ユージーンがなぜだか距離を詰めてきた。
「言われなくてもちゃんと節制している。俺がどんなに耐えているのかを知ってほしいくらいだ。あんな風に言われると、逆に火がつかないか?」
「えっ?」
ユージーンの雰囲気がおかしい……。ニナさんの言葉は逆にユージーンを焚き付けてしまったのでは?
ずっと手を繋ぐくらいしかしてこなかった。キスはおでこまで。
ユージーンが私を大切に扱ってくれていることは充分分かっている……。
でも、私だって、もっとユージーンと触れていたいと思う……。
私の隣に座ったユージーンが私の頬に手を添える。ユージーンの金の瞳に捕らわれ、身動きできない。
「大事に想っている。試練に赴くナイトに月の女神の祝福をくれ」
ユージーンの鼻先が私の鼻先に触れる。恥ずかしくて瞳を閉じると、一つだけキスが落とされた――
「私はニナと申します。もう二十年、レイラ様付きの侍女をしております」
「あの後、おかあ――レイラ様は大丈夫でしたか?」
「クローディア様がお生まれになった時も、私がレイラ様のお側におりました。どうか、レイラ様をお母様と呼んで差し上げてください。きっと喜ばれますよ。そして、レイラ様はお父君を見事にあしらい問題ありません。あの方は見た目だけは華奢ですが、中身は殿方のような御方ですから」
「ありがとうございます。少し安心できました」
私はニナさんを招き入れ、お父様とお母様の昔話を聞いた。母だと直接話し辛いこともあっただろう。聞く側としても、両親の恋の話など気恥ずかしい感じもする。
ニナさんの口から聞くお父様とお母様の過去は、第三者からの視点で俯瞰されていて、すんなり心に染み入り感情移入ができた。
「ハイド領を立つ時のレイラ様ほど、憔悴しきった人を私は見たことがありません。その時、ずっとこの方のお側にいようと誓いました」
「……。ニナさん……。聞かせてくれてありがとうございます」
悲しい恋の話を聞いた私がユージーンの胸を借りて泣き濡れた後、ニナさんはクイと眼鏡を上げ姿勢を正した。
「私が本日こちらに来たのは、レイラ様の願いをお伝えするためでもあります。今からお聞かせする事はこの公国の機密事項です。パワーバランスを崩しますので、覚悟してお聞きください」
「母がそれを望むのなら、私は是非聞きたいです」
「当然、未来の妻の背負う事は私も共に背負います」
私とユージーンも背すじを伸ばし、ニナさんの話しに耳を傾けた。イスティリア王国の私たちに聞かせるということは、よほどお母様は追い詰められているのだろう。そう想像できる内容だった。
飛竜は試練を乗り越えた者の命のみを聞く。今を生きる者で試練を終えた人物はお祖父様とお母様、そしてコンラッドさんの三人。
現在はお母様の命で王国との定期便に飛竜を利用しているが、他の二人が命を変更すれば、飛竜は数が多い方に従ってしまうらしい。
お祖父様とコンラッドさんが命じれば、イスティリア王国とウィンドラ公国の国交は閉ざされる。ウィンドラの山谷風は飛竜の加護があってこそ越えられる。
そんな地の利があってこそ独立を果たした公国なのだ。
「レイラ様は、クローディア様とユージーン様お二人に試練を受けていただきたいとお考えなのです」
「試練の内容とはどのようなものでしょうか?」
「残念ながら、試練はその人間に試練となるようなものが課せられるそうです。何が課せられるかは、試練の谷に赴かないと分かりません」
試練を受けるとなると恐怖心が芽生えてくる。だけど――
「私は受けたい。このままでは二度とお母様に会えなくなってしまう。やっとこうして会えたのに……」
「俺はクローディアに危険なことはしてほしくはない。でも、クローディアにこれから先、悔いを残した生を生きてほしくもない。俺が守ればいいだけか……」
でも、ニナさんが首を振る。
「ユージーン様。残念ですが、試練は個々に与えられるのです。クローディア様と試練を伴にすることはできないと存じます」
「でも、お母様が提案をしたのなら、私にも無事試練を乗り越えられる力があると、信じてくれたからでしょう?」
「左様でございます。レイラ様はお二人なら必ず、試練を乗り越えられると信じておられます」
私はしっかりとユージーンの目を見て伝えた。
「ユージーン、試練を受けてほしい。私とお母様を助けて」
綺麗な金の瞳がゆったりと細められ、私の頬に長い指が添えられた。
「ロシスターの騎士はその言葉に弱いんだ。俺がクローディアたちのために試練を受けることに、何一つ迷いはない」
「ユージーン……」
「クローディア……」
ユージーンの手に自分の手を重ねる……。
「ゴホゴホッ」
「「!!」」
ニナさんを取り残して自分たちの世界に入ってしまった……。
「ユージーン様はオリバー様とソフィア様に大変似ていらっしゃいますね。あの方たちもよく二人だけの世界に入っていかれたものです」
「そ、そうか?」
「クローディア様もお優しいところはクライヴ様に似ていらっしゃるのに、以外と情熱家なところはレイラ様に似たのでしょうか」
「は、はあ……」
いたたまれない……。二十年母の侍女を勤めるだけあって、ニナさんのお小言は愛情に満ち溢れていて、それがチクリと良心に刺さってくる。
流石ベテラン侍女だわ。
「まだ婚約中なのですから、節度は守って下さいませ。悲恋はクライヴ様とレイラ様でもう沢山です。見ている方だって苦しいのですよ? 順序はた・い・せ・つ・に!」
「「はい!」」
「――それでは準備が出来ましたら、私が試練の谷にご案内いたします。ですから今日は盛り上がらず、ゆっくりお休みください」
思いっ切り釘を刺し、眼鏡をキラリとさせたニナさんは颯爽と母の元へと帰って行った。
確かに二人きりではあるけれど、そんなに釘を刺していかなくても私とユージーンは大丈夫。そう思っていると、ユージーンがなぜだか距離を詰めてきた。
「言われなくてもちゃんと節制している。俺がどんなに耐えているのかを知ってほしいくらいだ。あんな風に言われると、逆に火がつかないか?」
「えっ?」
ユージーンの雰囲気がおかしい……。ニナさんの言葉は逆にユージーンを焚き付けてしまったのでは?
ずっと手を繋ぐくらいしかしてこなかった。キスはおでこまで。
ユージーンが私を大切に扱ってくれていることは充分分かっている……。
でも、私だって、もっとユージーンと触れていたいと思う……。
私の隣に座ったユージーンが私の頬に手を添える。ユージーンの金の瞳に捕らわれ、身動きできない。
「大事に想っている。試練に赴くナイトに月の女神の祝福をくれ」
ユージーンの鼻先が私の鼻先に触れる。恥ずかしくて瞳を閉じると、一つだけキスが落とされた――
1
あなたにおすすめの小説
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。
彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。
――その役割が、突然奪われるまでは。
公の場で告げられた一方的な婚約破棄。
理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。
ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。
だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。
些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。
それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。
一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。
求められたのは、身分でも立場でもない。
彼女自身の能力だった。
婚約破棄から始まる、
静かで冷静な逆転劇。
王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、
やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。
-
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』
みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」
皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。
(これは"愛することのない"の亜種?)
前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。
エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。
それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。
速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──?
シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。
どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの?
※小説家になろう様でも掲載しています
※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました
※毎朝7時に更新していく予定です
勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~
藤 ゆみ子
恋愛
グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。
それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。
二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。
けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。
親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。
だが、それはティアの大きな勘違いだった。
シオンは、ティアを溺愛していた。
溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。
そしてシオンもまた、勘違いをしていた。
ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。
絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。
紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。
そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる