生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

文字の大きさ
35 / 86

34話 一人電撃戦②

しおりを挟む
 僕は天井から下に降りた。
 その際、悟られないように空気を完全に同化する。

「ん? 見張りはどうした?」
「少し怪しい姿があったんだ。下の様子はどうだ?」

 少し声を野太くする。
 さっきの男の人も、こんな感じだった気がする。

 すると、そこにいた男。
 おそらくこの盗賊たちのリーダーは、椅子に座り、少女を縄で縛り付け、見張りをしていた。

 右手には、鋭い銀色ナイフ。
 手には赤い宝石のついた指輪。それからナイフの持ち手は、金色の装飾が施してある。

 頭にはバンダナを巻いていて、褐色も良かった。
 筋肉が迸る。

(このリーダー風の人、かなりできるね。あの子、早く助けてあげないと。可哀想に)

 両手足を縛られ、口にはタオルを巻かれていた。
 頭がびしょ濡れで、何かされた後だった。
 服も引き裂かれているが、多分あれは木の枝で引っ掛けたんだろう。足先も泥がついている。乱暴にされた証だ。

「下の様子は特に問題ないな。それより、外の様子が騒がしいが?」
「気にするな。何もない。それより……」
「なんだ」

 ここから少し、賭けに出る。
 単なる推測と、口の動きから読み取るだけだ。そう、はったりだ。

「なぁ、本当にこれでいいんだよな」
「ああ。あの依頼人の話だと、後はこのガキを連れて行けばいいそうだ」
「それで金が出るってわけだな」
「ああそうだ。しかし、こんなガキを欲しがるなんて、とんだ頭の貴族様だな。何を考えてるのか、わからない」

 ここまでの内容は、全部理解した。
 そこで僕は、

「そっか。じゃあ、もういいよ」
「なに!?」

 僕はローブを脱ぎ捨てて、男の顔に当てると、お腹に飛び膝蹴りを食らわす。
 あまりに突然のことに驚き、さらには視界を奪われていたので、表情はわからないが、苦しんでいる様子だ。

「まだだよ」

 さらに、ローブを顔に覆い尽くして、同時に左腕を後ろ手に回して、捻った。
 男の体が軋み出す。
 だけど僕は気にせずに、肩を外すと、それからナイフを聞こえるように、耳元に突き立てる。

「どうする? 僕の勝ちみたいだけど」
「お、お前は何者だ!」
「僕は冒険者。この子を助けにきたんだよ」

 かなり向上、かなりの軽快さで僕の口は回っていた。
 しかし音を聞きつけたのか、下の階から仲間がやってくる。

「どうした、ガンレス!」
「お、おいお前は誰だ!」

 やって来た盗賊の仲間たちも、僕のしている行為を見て、流石に目を見開く。
 だけど僕はこのままの調子で続ける。そう、取り引きの権利はこっちにある。

「はい、動かないでね。動いたら、この人……殺すかもよ?」
「「くっ!」」

 その時、僕の瞳はきっと狂喜乱舞していた。
 それこそ、あの忌々しい血族の、村人の、に変わっているのかもしれない。

 ああ、無情にたぎる。
 苦しみは快感に。快楽は、熱情に。僕を構成する全ての細胞が、僕を突き動かして、暴化させる。

 でもそこで切り替える。
 こんなことはよくない。そう思った矢先、力が抜けた。すると、

「うわぁ!」

 男が動き出した。
 持ってかれる。だったら!

 スッ、スパッ!ーー

 軽くベルトから二本のナイフを取り出す。
 それらを投げつけると、男たちの喉元にちょうど当たり、絶命した。

 バタン!ーー

 かなり重たい、鈍器のような音を立てて床に崩れ落ちる。
 しかしその頃には、僕に対して激しい怒りの眼を向けていて、

「よくもやったな、ガキが!」
「これヤバい?」

 こうなったら、単純なバトルになる。
 頭を悩ませて、それを悟ると、僕も剣を抜いて、構えてみたはみたんだけどねー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...