俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬

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第十四話

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中央の試合場を囲む円形の観客席には、日中にも関わらずジョッキを片手に談笑している者や、ローウェストのドレスを身にまとい扇子をあおぐ貴婦人など、様々な身分の人達が席についていた。
貴族、平民、保護者、生徒、と東西南北で席が区分けされているが、どのエリアもすでに満席で始まる前から大きな盛り上がりを見せていた。

一方、中央の試合場に集まっている一年生は、全体的に重苦しいと言うか、気が重いというか。でもまぁ、無理もない。ここの生徒の大半が貴族なんだ。今回の大会、結果を残さなければ家名が傷つく⋯的な事でも考えてるんだろう。ったく、大事な家名を子供に背負わすなよ。まぁ中には、余裕そうなやつもいるけど⋯⋯

生徒エリアの後部末端に座る俺は、試合場の中央に視界の焦点を当てた。
そこには、眩い金色の髪を風になびかせ、隣にいる男と仲良く雑談する王子、カインがいた。

他の生徒と同じ服にも関わらず、なんなんだよ、あの溢れ出る王族オーラは。いや、王子なんだけど⋯⋯にしてもこれは、目立ちすぎだろ⋯

身分問わず、多くの観客がカインに視線を向けている。王子という位に加え、遠目からでも分かるその圧倒的な美。そんな眉目秀麗、そして成績優秀なカインに、心奪われる女性陣も少なくないだろう。現に俺の斜め前の女生徒達は「カイン様~」とかなんとか言って、自作のカインの名前が書かれた扇子を大きく振っていた。

そんな、学校でも世間でも人々の心を掴ませるカインだが、彼とは別にもう一人。観客の目を引く生徒がいた。それが―――

「ロイ~!!!」

俺の自慢のかわいい弟、ロイ-クレシスだ。
周りの生徒が不安や緊張の面持ちをする中、一人冷静に、落ち着いた表情をしていた。いや、あれは単に人見知りしてるだけか⋯?まぁとりあえず、いつも通りで安心したな。

ホッとため息をついた俺は、今度はロイに視線を送る人々に注目した。
入学して一ヶ月、ロイは段々と学校生活に馴染んでいた。未だに警戒心は強いようだが、最初の事件以降、ロイが誰かと揉めたという話は聞いていない。周りの貴族も、一ヶ月も経つと慣れていったのか、今ではロイの髪色を見て小言を言う人は極端に少なくなった。

この調子で、友達をじゃんじゃん作って順風満帆な学校生活を送ってほしい。そう思う反面、ロイが俺から徐々に離れていくかもしれないというのは、少し⋯いや、だいぶ寂しい。

ロイに眼差しを向ける貴族や一般人は、まだその瞳に差別的な思想を宿していた。しかし、他の生徒達に関しては、そんなのはもうどうだっていい。「黒髪だ」「平民だ」とは決して言わず、ただ純粋に、“首席”のロイに皆が期待を寄せていた。

にしても、マジで良かったぁ⋯⋯俺と違ってロイは首席だ。だからその分風当たりも強くなるかもと心配していたが、杞憂だったみたいだな。

「あっ、レイ!そこに居たのか!」

観客席を見回していた俺は、下方かほうから聞こえてきた、掠れ気味の声に視線を落とした。そこにいた男は、俺と目が合うと同時にカメラを抱え、勢いよく階段を駆け上がってきた。

「全然見つからないと思ったら、まさかこんな端にいたとはね」

「すまん、ウィーリア。空いてたのがここしかなかったんだ」

そう言いながら俺が横に詰めて場所を空けると、ウィーリアはその場にすとんと腰を下ろし、肩を上下に動かしながら、あがった息を必死に整えていた。

「君の弟、緊張してるの?」

誰ともつるまず一人佇むロイを見つけ、尋ねてきたウィーリアに、俺は首を横に振った。

「いや、あれはどちらかと言うと早く帰りたいって顔だな」

俺の返事を聞いたウィーリアは、目を丸くし、困ったようにため息をついた。

「おいおい、これはただの大会じゃないんだぞ⋯」

その言葉に俺は首を傾げた。

「それ、どういうことだ?」

しばらく考える素振りをした後、「実は⋯」と耳元で囁かれた言葉に俺は驚き、立ち上がった。

「はぁ!?騎士団はまだしも、魔法師――」

「ちょちょちょっ!レイ、声大きい!!」

「あ、わっ、わるい!」

慌てて俺の口を塞いだウィーリアは、俺の声で向けられた視線をやり過ごすまでのしばらくの間、その手を離さなかった。

『この大会、“騎士団”と“魔法師団”の人が見に来てるんだ。有望な生徒を見つけて、その場でスカウトするらしい』

“魔法師団”―――ウィーリアの口から出たその言葉は、俺の頭を真っ白に染め上げた。
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