【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希

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第三部 最終話

56 溢れる想いを込めて

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 師匠のことを思い出していると、少し気落ちしてしまった。
 そこへ、ぽんと肩に手がかかった。

 見上げると、リノが立っていた。

「ディーノ。改めて、おめでとう」
 云いながら、リュートが差し出される。

「ありがとう。でも、本当にいいの?」

 高価だというリノのリュートを、祝いの品とはいえ、もらってしまっていいのか。まだ迷いがあった。

「もちろんだよ。お師匠さんが喜ぶよ。僕もディーノに使って欲しい」

 リノの優しい眼差しを見つめていると、胸が熱くなった。

「ありがとう。大切に使わせてもらうよ。・・・・・・と、父さん」

 照れくさくてリノを見て云えなかった。
 周りの喧騒にかき消されていないだろうか。聞こえてなくてもいいや。と思っていると、リノの手が頭に乗せられた。髪をくしゃくしゃとされる。

 びっくりしているうちに終わってしまって、リノは何も云わず離れていった。

 だけど背中が心なしか喜んでいるように見えた。

 こんなに親身になってくれる人のことをいつまでも他人だと思っていてはいけない。これを機に、二人のことを両親と呼ぼうと思った。今度はロゼッタにも伝えなければ。

 恥ずかしい気持ちがあるけれど、二人を家族と思えるようになった自分の心境が変化した喜びのほうが大きかった。

 一度ここから離れたお陰だろうと思う。外に出ていろいろな人と触れ合って、たくさんの経験をして、そして失って。大切なことに気がついた。

 見ず知らずの赤の他人に親身になってくれる人たちがいる。それは奇跡のような事なのだとわかった。彼らの気持ちに応えるのに感謝だけでは足りない。自分が心を開かないと。

 師匠のことを父親と思っているけれど、もう一人父親がいてくれる。母親もいる。忘れずにいてくれる集落の人たちは親戚で。

 たくさんの家族が見守ってくれていることは幸福なことなんだ。

 血の繋がりがなくても、心が繋がっていればいい。彼らを信頼し、頼って甘えていいんだ。

 これからそうしていこうと、楽しそうな集落の人たちを見てディーノは思う。

 リノからもらったリュートをぽろんと爪弾く。

 柔らかくて優しい音がする。リノらしく、包容力があって温かい。

 師匠の演奏でこの音を堪能したかった。それが叶うことはもうない。

 ならオレが奏でよう。

 師匠に教わった全てのことを、心を込めて。

 師匠に届け。

 イレーネに届け。

 ピエールに、マウロに届け。

 父さん、母さんに、集落のみんなの心に届け。

 そして、これから出会う聴衆へ、届け。届け
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