【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希

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第一部

20 子供たち

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 夕食の支度をするまで少しあるから、とロゼッタは二人に集落の子供たちと遊んでおいでと言って自身だけ家に入っていった。

 子供たちとの仲を取り持ってくれることまでロゼッタに甘えるのはさすがに気が引けた二人は、突っ立ったまま遊んでいる子供たちを見ていた。

 子供たちはボールの蹴り合いをしていた。男の子も女の子も年齢も関係なく仲良く遊んでいる。小さい子供が転べば大きな子が手を貸して立たせてやり、大きな子は得意そうにボールを蹴りながら一人二人と抜いていく。

 何の遊びかは知らなかったが、たまに屋敷から連れ出されて町を行くときに、ディーノはボールの蹴り合いをしている男の子たちを見かけたことがあった。たった一つのボールを巡って必死に攻めようとする者と奪い取ろうとする者がいて、みんな楽しそうに走りまわっている姿はまぶしくて、ディーノには強く印象に残っていた。

 ひとしきり遊んだ子供たちは、二人の近くにあった井戸に息を切らせながら集まった。汲み上げた水を順番に回し飲んでいく。我先にという者はおらず、小さな子を優先させてから、大きな子が順に飲んでいく姿は、助け合いの精神が根付いている集落だからこその光景だった。

 血の繋がりなど関係なく、集落全体が家族で、大きな子が小さな子の面倒を見ることが、義務ではなく自然なことと捉えている暮らしが、二人には手に取るようにわかった。

 過去のイレーネのことはわからなかったが、ディーノにはなかった生活だった。

 食事は必ず最後であったし、喉が乾いても好きなときに水を飲める生活ではなかった。
 感情のままに暴行を受けても文句など言えない。
 どんなに泥や血にまみれていても、身体を拭くことさえろくにさせてもらえない。目を盗んでこそこそ身体を拭けば、勝手に水を使ったことでまた怒られる。
 誰かに遊んでもらった記憶など全くない。売られる前、子供同士で食べ物などを巡って喧嘩をすることはあっても、馴れ合うことはなかった。

 どうやってこの輪に入ればいいのだろう。自分が入っていいのだろうか。方法がわからないディーノは子供たちを見ていることしかできなかった。
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