【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希

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第一部

19 紹介

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 翌朝、畑仕事をしている集落の人たちに向かって「ちょっとすまないけど、手を止めてもらえるかい?」とロゼッタは大きな声を上げた。

 ロゼッタの後ろで半分隠れるようにして立っていた二人は、背中を押されて前に歩み出た。

「ディーノとイレーネ」

 レーヴェこと、ディーノの左肩とイレーネの右肩にロゼッタが手を乗せる。

 手を止めて、座ったままや立っている人たちの視線を受け止めたディーノは少し緊張する。

「遠い親戚の子でね。相次いで親が亡くなって、うちで引き取ることにしたんだ。みんなよろしく頼むよ」

 注目されることに慣れていないディーノは思わず顔を俯けた。そのままこくんと頭だけを下げた。

「こんにちは。早くここの暮らしに慣れるように頑張ります。いろいろ教えてください」

 イレーネは逆に明るい声を出して挨拶をした。にこにこと笑顔を浮かべている様子が想像できた。

「へー」や「よろしく」といった声が小さく上がる。近くにいた三人の女が近づいてきた。

「ロゼッタ。大きな子を引き取る決心をしたんだね」

「念願のママになるんだ」

「賑やかになるじゃないか」

 ロゼッタと仲の良い人たちなのだろう。遠慮のない会話が交わされる。

 対するロゼッタも「よろしく頼むよ」と相対している。

「どこに住んでたんだい」

「兄妹なのかい?」

 などの質問が二人に向けられ、「北のほうの名もない村です」「兄妹ではありません」と質問のすべてをイレーネが答えた。

 ディーノは昨夜の失敗のこともあり、あまり積極的に話すのはよそうと自身を戒めていた。どこでぼろがでるかわからないから。

「ああ、ワルターさん」

 ロゼッタが大きな声を上げた。畑にやってきた老夫婦が立ち止まった。

 ロゼッタは集落の人たちに説明したのと同じ内容で二人を紹介し、二人に向けて老夫婦の紹介をした。

「ここに住み始めたのはこのお二人が最初なんだよ。みんなに慕われてる職人でね、リュートとヴァイオリンの製作をされてるんだよ」

 二人は「よろしくお願いします」と頭を下げた。

 夫人は「賑やかになりそうねぇ」と笑顔を浮かべたが、主人のほうは一瞥をくれただけだった。

 挨拶もすんで、さっそく畑仕事を手伝うことになった。ロゼッタの指示をうけて畑の手入れを手伝う。二人とも畑仕事は初めてであったから、ぎこちない手つきであるのは仕方がない。

 十棟ほどある家々に囲まれるように畑があり、夏場は主食となるトウモロコシやカボチャ、キュウリ、ナスなど。冬場は芋や白菜、大根などの野菜を集落のみんなで育てている。家畜は鶏だけで、山へ狩猟に行ったり、木の実を拾ったり、たまに近くの大きな街へ買い出しに行ったりして生活をしているのだと、ロゼッタや住民から話を聞いた。

 大人も子供も総出で畑にいるが、大人は女性だけであった。職人である男たちは各々の工房で仕事をしているのだろう。昨夜の言葉どおり男たちが畑を手伝うことはないようだ。

 それぞれの家で昼食をとり、夕方まで作業が続いて、ようやく今日の仕事が終わりとなった。慣れない作業に戸惑いはしたが、二人とも、特にディーノのほうは長年過酷な労働を強いられていたため、大きな疲労は感じていなかった。
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