202 / 385
第三章 文化体育発表会編
再び無理やりくだくだと悩む元になってしまう爆弾を投下されたと―――さすがに気付いた。
しおりを挟む
「ウソでしょ!?子猫ちゃんをフッちゃったのぉ?」
「待って!そうじゃなくって、こんなトコで話す事でもなくって‥‥っだぁもぉー!」
ポリンドに詰め寄られたハディスが、焦れたように頭をかきむしる。けどまぁ、わたしとしては色々自分の思い上がりとかを思い知って落ち込んだりもしたけど、それはもう良い。だからハディスがまだ何か言い募ろうとするのを「お気遣いは要りませんよ。」ときれいな令嬢スマイルで押し留められるくらいには、割り切る事が出来ている。
それより伝えたいことがある。
「そんなことはもうどうでもいいんです!わたし見たんですよ!凄いです!世界は‥‥黒い魔力で満ち溢れているんですね!」
「え、待って!どうでも良くないから。僕が思ってるのと全然ちがく伝わってるからっ。それに世界に満ち溢れるのは普通は『素敵なこと』とかじゃないのぉ!?」
「何を仰ってるんですか?ポリンド講師と見ましたもん!間違いなく峻嶺の中や周囲は黒い魔力があちこちに溢れていて、こんな穏やかなのが嘘みたいな邪悪さでした!世間ってわたしが思うよりも闇が深いんですよ。」
初めて見る事が出来たこの王国の空からのアングルに、テンション爆上がりだったわたしの言葉は止まらない。最近は特に課題を通してこの国の地形に興味を持っていたから、まさかこんなにも早く望みが実現するとは思ってもみなかった。
「突っ込みどころ満載ねぇー。カッコつけようとして、すれ違ってるパターンね。焦れるんじゃなくて馬鹿馬鹿しくなるわ。」
「桜の君にはこのままでお過ごしいただければ私は満足です。赤いのはこのまま見守れば自滅しそうですから。」
わたしとハディスを、疲れた表情のポリンドと、良い笑顔のオルフェンズが見守る。何となく不穏な会話をしている気がするのは気にしないでおこう。まぁ、それはともかく。
「ポリンド講師!さっき見たことをレポートにまとめてもいいでしょうか?!」
「いいよー。」
想像以上に軽い感じで即座に返された返事に、おぉ、これで歴史学の課題に新たな成果が付け加えられる!と、喜んでいたのに‥‥。ポリンドがすかさず「ただし。」とピシャリと言って人差し指を突きつける。
「提出先は国王陛下だよ。地形の事とか、黒い魔力溜まりとかについて書くつもりでしょ?そんなの、この国のウイークポイントとか国防の問題に直結してくるんだもん、学園の発表会で軽ーく発表されると困るんだけどぉ?けど、黒い魔力の在り処と分布については、王家としても興味あるし放っておけないから、今日見た内容はレポートにして提出ね。提出先は歌劇練習の時に、私に頂戴。陛下に子猫ちゃんからの報告書ですって、ちゃんと渡しておくから。」
「えぇー!?折角の歴史学課題の内容充実が図れるネタだと思ったのに、横暴ですー!どんっと目立つ発表をして、より良い条件のお婿さん候補を獲得したいんですよ、わたしは!」
ぐっと拳を握り締めて文化体育発表会における意気込みを力強く宣言すると、ポリンドは半眼でわたしと、側の護衛ズをチラチラ見遣ってから溜息を吐く。
「今更どこかの人並み以上でしかないご令息が現れたところで、その2人が居る限り、子猫ちゃんの側に居付くのは難しいと思うけどぉー?並々ならぬ執着とスペックの持ち主なんて、敵に回したくなんて無いわー。」
「わたしの護衛が、わたしのお婿さんの敵になるわけ無いじゃないですか。それにその頃にはハディス様は契約が切れるんですから、そもそも会うこともないでしょう?」
護衛の2人がとてもすごい人で、男爵令嬢でしかないわたしの傍にいてくれるのが稀有なことは理解している。
「だから、2人はわたしに関わり続けるような勿体無いことはしちゃいけないんです。期間限定で、力を貸していただける凄い人たちに感謝することはあっても、それ以上は求めません。」
言いながら、微かにつきりと胸の奥が痛んだのは気にしちゃいけない。
「いや、だからはっきり言うけど護衛に留まる気はないからね。どこまでいけるかは、まぁ、覚悟しておいて?」
ポリンドとの会話にスルリと割り込んで、何事も無い様な澄ました表情で言い置いたハディスは、最後に目が合うとにやりと笑う。
「は‥‥?」
わたしとしては、フられて傷ついた気持ちがありつつ、現実的に婿に成り得ない相手への想いを断ち切れると安心すらしていた。フラれたと思うことで安心していたかった。だからこそ、その話を蒸し返さないように、他の話題をわざわざポリンドへ持ち掛けたりもしていたのに。
再び無理やりくだくだと悩む元になってしまう爆弾を投下されたと―――さすがに気付いた。
月見の宴は晩餐会の部へと移っていた。滞りなく進行されたわけではなかったが、暴れる青龍の姿に恐れ戦く貴族達に向かって国王が「慈悲深き癒しの魔力を我々にもたらしてくれる生き物である神器の龍が、我々を傷つけなどしないことは常識だろう。」と泰然とした態度で構えていたため、特段の混乱は起きなかった。
ただ、その晩餐の場には、体調不良を理由に席を辞した王弟ポセイリンドだけでなく、王弟ハディアベス、ならびに継承者オルフェンズを始め、数人の人物が居なくなっていた。と言うのも、危害を加えないはずの龍に驚き、一部の者が混乱をきたしたため、神器の継承者が優れた能力を発揮して事態の収拾を買って出てくれたからだ‥‥と、王は告げた。
「待って!そうじゃなくって、こんなトコで話す事でもなくって‥‥っだぁもぉー!」
ポリンドに詰め寄られたハディスが、焦れたように頭をかきむしる。けどまぁ、わたしとしては色々自分の思い上がりとかを思い知って落ち込んだりもしたけど、それはもう良い。だからハディスがまだ何か言い募ろうとするのを「お気遣いは要りませんよ。」ときれいな令嬢スマイルで押し留められるくらいには、割り切る事が出来ている。
それより伝えたいことがある。
「そんなことはもうどうでもいいんです!わたし見たんですよ!凄いです!世界は‥‥黒い魔力で満ち溢れているんですね!」
「え、待って!どうでも良くないから。僕が思ってるのと全然ちがく伝わってるからっ。それに世界に満ち溢れるのは普通は『素敵なこと』とかじゃないのぉ!?」
「何を仰ってるんですか?ポリンド講師と見ましたもん!間違いなく峻嶺の中や周囲は黒い魔力があちこちに溢れていて、こんな穏やかなのが嘘みたいな邪悪さでした!世間ってわたしが思うよりも闇が深いんですよ。」
初めて見る事が出来たこの王国の空からのアングルに、テンション爆上がりだったわたしの言葉は止まらない。最近は特に課題を通してこの国の地形に興味を持っていたから、まさかこんなにも早く望みが実現するとは思ってもみなかった。
「突っ込みどころ満載ねぇー。カッコつけようとして、すれ違ってるパターンね。焦れるんじゃなくて馬鹿馬鹿しくなるわ。」
「桜の君にはこのままでお過ごしいただければ私は満足です。赤いのはこのまま見守れば自滅しそうですから。」
わたしとハディスを、疲れた表情のポリンドと、良い笑顔のオルフェンズが見守る。何となく不穏な会話をしている気がするのは気にしないでおこう。まぁ、それはともかく。
「ポリンド講師!さっき見たことをレポートにまとめてもいいでしょうか?!」
「いいよー。」
想像以上に軽い感じで即座に返された返事に、おぉ、これで歴史学の課題に新たな成果が付け加えられる!と、喜んでいたのに‥‥。ポリンドがすかさず「ただし。」とピシャリと言って人差し指を突きつける。
「提出先は国王陛下だよ。地形の事とか、黒い魔力溜まりとかについて書くつもりでしょ?そんなの、この国のウイークポイントとか国防の問題に直結してくるんだもん、学園の発表会で軽ーく発表されると困るんだけどぉ?けど、黒い魔力の在り処と分布については、王家としても興味あるし放っておけないから、今日見た内容はレポートにして提出ね。提出先は歌劇練習の時に、私に頂戴。陛下に子猫ちゃんからの報告書ですって、ちゃんと渡しておくから。」
「えぇー!?折角の歴史学課題の内容充実が図れるネタだと思ったのに、横暴ですー!どんっと目立つ発表をして、より良い条件のお婿さん候補を獲得したいんですよ、わたしは!」
ぐっと拳を握り締めて文化体育発表会における意気込みを力強く宣言すると、ポリンドは半眼でわたしと、側の護衛ズをチラチラ見遣ってから溜息を吐く。
「今更どこかの人並み以上でしかないご令息が現れたところで、その2人が居る限り、子猫ちゃんの側に居付くのは難しいと思うけどぉー?並々ならぬ執着とスペックの持ち主なんて、敵に回したくなんて無いわー。」
「わたしの護衛が、わたしのお婿さんの敵になるわけ無いじゃないですか。それにその頃にはハディス様は契約が切れるんですから、そもそも会うこともないでしょう?」
護衛の2人がとてもすごい人で、男爵令嬢でしかないわたしの傍にいてくれるのが稀有なことは理解している。
「だから、2人はわたしに関わり続けるような勿体無いことはしちゃいけないんです。期間限定で、力を貸していただける凄い人たちに感謝することはあっても、それ以上は求めません。」
言いながら、微かにつきりと胸の奥が痛んだのは気にしちゃいけない。
「いや、だからはっきり言うけど護衛に留まる気はないからね。どこまでいけるかは、まぁ、覚悟しておいて?」
ポリンドとの会話にスルリと割り込んで、何事も無い様な澄ました表情で言い置いたハディスは、最後に目が合うとにやりと笑う。
「は‥‥?」
わたしとしては、フられて傷ついた気持ちがありつつ、現実的に婿に成り得ない相手への想いを断ち切れると安心すらしていた。フラれたと思うことで安心していたかった。だからこそ、その話を蒸し返さないように、他の話題をわざわざポリンドへ持ち掛けたりもしていたのに。
再び無理やりくだくだと悩む元になってしまう爆弾を投下されたと―――さすがに気付いた。
月見の宴は晩餐会の部へと移っていた。滞りなく進行されたわけではなかったが、暴れる青龍の姿に恐れ戦く貴族達に向かって国王が「慈悲深き癒しの魔力を我々にもたらしてくれる生き物である神器の龍が、我々を傷つけなどしないことは常識だろう。」と泰然とした態度で構えていたため、特段の混乱は起きなかった。
ただ、その晩餐の場には、体調不良を理由に席を辞した王弟ポセイリンドだけでなく、王弟ハディアベス、ならびに継承者オルフェンズを始め、数人の人物が居なくなっていた。と言うのも、危害を加えないはずの龍に驚き、一部の者が混乱をきたしたため、神器の継承者が優れた能力を発揮して事態の収拾を買って出てくれたからだ‥‥と、王は告げた。
0
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる