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第九章 邪神降臨
第320話 女神の救い
しおりを挟む◆蒼字(そうじ)の視点
このまま押し切る!
俺はバアル・ゼブルに突撃し魔を退ける白き浄化の華『斬魔白華印(ざんまはっかいん)』を刻み込む!
攻撃が炸裂した……そう思った時、腹部にグサッの刺さるような痛みが、俺の攻撃に合わせてバアル・ゼブルの蹴りがカウンターで横っ腹に当たっていた。
「ぐふっ」痛みに耐えながらなんとか足を踏ん張り倒れるのを耐えた。
ここに来て、この一撃は痛い!流れは完全に俺に傾いていたのに、押しきれなかった。俺は一度距離を取り攻め手を模索する。
それからの戦いは一進一退の攻防戦、実際の時間は短かったが恐ろしく濃厚な時を感じていた。
「ぐふっ…ぐはっ…オェ!」
おい!ちょっと待て!これはおかしいぞ!
今度はだんだん押され始めている。
状況は悪化、こちらの拳が一発当たる間にあちらの蹴りが三発当たる。そのくらい劣勢に戦局が変わる。
これではいくら体力が全回復したと言っても長くは持たない。
「くそ!一体何が起こったんだ!?」
俺は押され始め高速で飛んでくる魔力弾を慌てて躱し横っ飛び、しかしそこに間の悪いことテュケが飛んで来た。
「いてぇ!」
「ごへぇ!?」
見事にクリンヒーット!俺の頭が振り向きざまにテュケのアゴを直撃、女神からあってはならない声が漏れた。
「も~う!痛いじゃない!何するのよ!」
テュケはアゴを擦りながら怒っている。女神だが威厳がないので怖くない。ここは冷静に話をする。
「悪いな。まさかそんなところにいるとは、気が付かなかったよ。それよりテュケ問題発生だ!だんだんこっちが押され始めている。もしかして俺の運気が減っているのか?」
「んん~違うよ。運気は使えば減るけど、それよりアイツなかなかやるわねー!運気が上がる魔術を使っているみたいだけど、今も上がり続けているの、だから蒼字(そうじ)の有利性はほぼ失われたわね。でね!それよりも聞いてよ。なんかおかしいのよ。ここに来るまでにすごく苦労したのよ。この私が!絶対何か変なことが起きてるわ!このままだともしかしたら世界が……」
この時、テュケが何かまだ言っていたが、蒼字(そうじ)の耳には入らず抜かていた。今の話が事実なら時間が経てば経つほど不利になることを意味する。つまり今やらなければならないことは、急ぎ邪神を攻撃し倒すこと。
「ちょ!?待ってよ!蒼字(そうじ)話の途中でしょー!」
俺はテュケの制止を聞かず飛び出して行く。
俺は大きく跳躍し筆を棒術のように振り回す。
筆からは墨帯が伸び螺旋を描き空に伸びる。
「渦巻き、轟け!黒き魔力の天龍」
天まで伸びた黒帯に魔力を溜め続ける。
黒帯は姿を変え黒き龍へと変わる。
最速最大の一撃!これで邪神に致命傷を与える。
…………………
『黒曜天龍線』
…………………
空を渦巻き大気が震える。黒龍は一直線に降下しバアル・ゼブルへ向かう。バアル・ゼブルは扇による斬撃を放ちながら黒龍に向かい飛行する。
蒼字(そうじ)が筆を振ると黒龍がうねり斬撃を躱しバアル・ゼブルに向かって加速した。
バアル・ゼブルは自身の周りに数百の魔法陣を展開、怪しげな呪文を唱える。
『デスイーター』
一つ一つの魔法陣から黒い蛇が飛び出し黒龍に向かい噛み付いた。黒龍はそれを構わず一直線に進むが、複数の黒蛇に噛まれその勢いを失っていく。
黒蛇には強力な魔力を無効化する毒を持っており徐々に黒龍が崩れていく。しかし勢いを失っても黒龍は前進する。バアル・ゼブルに辿り着くと大きく口を開き喰らいつく。
「愚かな、獣の分際で妾に牙を剥くか」
バアル・ゼブルは黒龍の下顎足で踏みつけ、上顎を扇で受け止めた。本当にコイツは魔術はともかくこの身体能力は反則だ!こんなの隙を作るしかないじゃないか!
「ん!?」……バアル・ゼブルは小さな声で唸る。黒龍の真っ黒な口の中に人影が見えた。
俺は黒龍が攻撃を受けた時点で、バアル・ゼブルを倒すことが叶わないと判断、即座に攻撃方法を変える。筆から放たれた黒龍に潜り高速移動、黒龍を形成している魔力を自身に戻しながら筆に力を込める。
「魔を退ける白き浄化の華!黒き闇を消し飛ばせ!』
……………『斬魔白華印(ざんまはっかいん)』
バアル・ゼブルの隙を突き一太刀浴びせる。
斬り裂いた部位から白い花が咲き闇を照らす。
浄化の光がバアル・ゼブルの身体を照らし、その光は徐々に身体を朽ちていく。バアル・ゼブルの再生力と浄化の光、どちらが上回るのか?
しかし当然そんなのを待っているつもりはない!
バアル・ゼブルの動きは完全に止まった!
もう一押し出来る!
俺は反転しバアル・ゼブルに向かって飛び上がり筆を振り上げ『破魔の筆払い』を放とうとした。
「ギシッ」……不穏な音がする。
振り下ろした筆を見ると、その先にはなんと穂先がなかった。これでは術が放てない!?
まさかこんなときに筆先が折れるなんて!?
これは間違いなく運気の差が作用していた。
筆を振り下ろし大きな隙を作ってしまう。
そしてそんな俺を見逃しはしない。
バアル・ゼブルの腕が伸び俺の首元に向かって扇を振る。斬撃により血飛沫が飛ぶ。
「はぁーー!も~う!世話が焼けるはね!」
その時頼んでないのに女神の救いがやって来る。
10
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