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第五章 黒尽くめの正体、そしてアルヴィア姫の判断
第93話 アルヴィア姫の悩み
しおりを挟むさくらとの修行を約束した後、さくらは
一花(いちか)さんを連れて帰っていった。
俺は今後の事を考え軽くため息をつき、
冒険者ギルドに行ってキャンベルさんの
様子を見ることにした。
「お!やっと来たな!よぉ!英雄くん」
ギルドに顔を出すといきなり肩を
組まれハイテンションなガルムさんに
捕まった。
「何です!?突然変なこと言って!
それに酒臭いですよ
離れて下さい。臭い臭い」
ゴンゴンとガルムの頭を叩く。
「あーごめんね蒼字(そうじ)魔物騒動が
解決したって言って我慢していたお酒を
がぶ飲みしてるから何言っても今は
聞いてないわよ」
セラさんが見かねてこっちに来てくれた。
ただセラさんの顔も赤い飲んでるな。
「なんか思っていたより元気そうで
良かったです。あれからは特にはなにも
なかったですか?」
「蒼字(そうじ)達が出て行ってから
二度襲撃があったけど規模がそれ程
大きくなかったから何とかなった
被害もそれ程出てないよ」
「それは良かった」
「ホントだよ!でも誰かは知らないけど!
冒険者をあんなに大人数回復させて
くれなかったらこんなにどんちゃん騒ぎは
やれなかったよ本当にどこの誰なの
かしら~姿を現して感謝させて
くれても良いと思うけど!」
セラさんは下から覗き込むように
見てくる。
「そうですね!感謝していればどこかで
伝わるんじゃないですか」
俺は軽く返答しておいた。
たぶんバレてるな、アハハ
酔っぱらいのガルムはセラさんに任せて、
キャンベルさんを探していると、
ギルマスのナトリさんと話をしている
キャンベルさんを見つけた。
近くまで行くとナトリに声をかけられ、
挨拶をした。
「お疲れ様です!ナトリさん、お忙しい
ところすいません。キャンベルさんの
様子を見に来まして、なんか手伝うと
ないかな~って」
「フフッありがとう!君のおかげで
あの後の襲撃にも耐えれたよ。怪我人も
大した事はないから、今回は
君に苦労はかけないよ!」
ナトリさんは疲れが色濃く出ているが
笑顔で答えてくれた。何より今回の事が
解決出来て安心しているのだろう。
「蒼字(そうじ)身体は大丈夫なのですか、
こちらは特に問題ありませんから
休んでいて下さい」
「キャンベルさんありがとう!俺は特に
問題ないですよ。さっきベットで寝たら大体
回復したかな」
「そうですか、見た目よりだいぶタフな
身体をしているのですね!」
キャンベルさんは笑いながらこちらを
見ていたが突然目の色が変わり真剣な顔に
なった。何故だろうと目線の先を見ると、
「ゲッ」俺はやや後ろに後退する。
そこには……
「アルヴィア姫様、この度は魔物の討伐、
この町を救って頂き有難う御座います!」
少し離れた位置でアルヴィア姫が来ており
ギルマスのナトリさんが相手をしていた。
しかしアルヴィア姫はナトリさんの話など
一切聞いておらずこちらを見ていた。
俺はキャンベルさんに軽く手を上げ
挨拶をしてそそくさと離れようとすると、
「そこのあなた!少しお話がしたいの
ですが宜しいでしょうか!」
アルヴィア姫にかなり大きな声で
止められた。
姫様に止められて逃げる訳にもいかず、
仕方なく話を聞くことにした。
その後、別室に移動して、アルヴィア姫と
二人で話すことになり、前と違い
アルヴィア姫の表情は固く、やや怒って
いるようだ、逃げたことを謝った方が
良いだろうか……
「すぐにお会いできて良かったです。
場合によっては国中を探させる
つもりでした」
「それは大変な事にならなくて
良かったです。アハハハ」
取り敢えず笑って誤魔化そう。
「蒼字(そうじ)様、私は貴方を
逃がすつもりはありません。どんな事を
してもです!」
アルヴィア姫から強い決意を感じた。
その時俺は思った。この人は何で
そこまで国の為に出来るのかと、俺みたいな
会って間もなく喋ったこともない男と結婚、
俺が逆の立場だったら絶対嫌だね!
「分かりませんね!アルヴィア姫が
俺の力が欲しいのは分かりますけど、
そこまでする必要がありますか?
そもそも勇者であるさくらや陽菜乃
(ひなの)がいるしそれに俺は魔王軍
との戦いに協力すると言っているわけ
ですし十分だと思います。何故そこまです
るんてすか?」
「そうですね、それに関しては私の個人の
思いが強く反映されているのかも
知れません、私は必要とされ
役に立ちたいと、そう強く思っているのです」
「えっと……アルヴィア姫は十分役に
立ってると思いますよ」
アルヴィア姫は言葉を重ねる事に
影がかかっていく。
何でだ!俺は短い間ではあるが、
王都でのアルヴィア姫の人気はかなりの
ものだった。今回の事もそうだが自ら戦場に
赴き指揮を取り、内政面でも庶民に
耳を傾け、より良い方向へと導く政策を
行っていると聞いている。
はっきり言ってむしろ一番働き成果を
上げているのではないだろうか?
「いえ、そんな事はありません!
私はもっともっと国民の為に成果を出さ
なければ、お父さん達に認めて
貰うことは出来ません」
ん?今の言葉には違和感があるぞ。
「アルヴィア姫ちょっと聞きたいんだが、
親に認められたいから頑張っているのか?」
俺は結構考えずに言ってしまった。
明らかな動揺、顔も体も強張っている。
何か言おうとしては口を紡ぐアルヴィア姫
「落ち着いて下さい。すいません
つい気になってあんまり考えずに
言ってしまいました」
今の反応を見てあまりにもデリカシーの
ない発言をしてしまったと思い、
俺は平謝りする。
「…………あの……ごめんなさい、
かなりお恥ずかしいところを
お見せしてしまいました。あなたの
言う通りですね。私は国民の為と
言いながらなんて身勝手な事を
考えてしまって」
アルヴィア姫あまりの恥ずかしさと
後悔で両手で顔を押さえ「う~う~」と
唸っている。
「あの~勘違いしないで下さいね!
親に認められたいと思う事は別に悪い
ことじゃないですよ。どちらかと言うと
俺はそれに巻き込まれると思うと
なんだかな~と思いました」
「あーーすいません身勝手な
私をお許し下さい!」
しゃがみ込み顔を伏せて落ち込む。
ついついからかってしまったので、
ここからはちゃんとしよう。
「親が何とかあるかも知れませんが、
実際に国民からはすごく感謝されて
いるのは事実です。十分な成果だと
本心から思っていますよ俺は……」
「そう言って頂けるのは嬉しいの
ですが……」
アルヴィア姫が喋っている途中に突然
「カシャンカシャン、カシャンカシャン」
…………うるさい
「なんだ!言いたい事があるのか?
キャリーちゃん」
「あんまりイジメないであげてよ!
アルヴィアは結構不器用なんだから、
健気に親に認められようと頑張ってるのに
あの頑固オヤジは全然認めようと
しないのよ!なんの役にも立たない王女と
いつも女の子の尻ばっかり追いかけて
いる王子に比べてアルヴィアは
偉いんだからね!」
カシャンカシャンと音を立て
興奮するキャリーちゃん。
「なにそれどういう事よ?」
「それについては私からお話します」
アルヴィア姫は覚悟を決めたようで
理由を教えてくれた。
「私には兄と姉がいます。兄は昔から
自分に正直な人です。やりたい事をやる
やりたくない事はやらない。そして
高慢な男です。周りの迷惑など考えずに
発言しかき回す。
私もそれでどれだけ苦労したか
わかりません。正直……大嫌いです。
それでも兄はこの国の王を継ぐ正統後継者、
誰よりも大切にされています。
姉はとても綺麗で儚い人です。いつも
消えそうに儚い姿でこの国の人柱の呪いを
請け負っています。自分が辛いのに
国の為、家族の為に自分を律し陰ながら
私達を支える憧れの人です。
そして私はなんの力も無く役割も
ありません。父も母も私にはさほどの
興味もありません。認めさせたかった。
私もこの国の王族の一員として家族と
して支えてるって、だから私は死もの
狂いで指示された事はこなし成果を
上げるため駆け回りました。
それでもまだまだなのでしょうか、
未だに私を見ることはありません」
「それはお疲れさんだ!だがやはり
あんたの身勝手で俺は動かない。
俺は俺の意思で動く」
「そうですよね。フッ随分と
私は我儘のようです。そんな事では
協力はお願いできませんね」
アルヴィア姫はうつむき、
自分を卑下していた。
「ん?勘違いしなさんな。むしろ協力は
前より前向きになったぞ!なんて言うのか
親近感が湧いた。意外と小さい
悩みで悩んでいるんだな~って」
「な!?ち、小さい悩み」
「あ~変な事言ってすいません、
王族みたいな偉い方でも庶民と同じ様な
悩みを持つんだな~と思いまして、
ま~規模感と大変さが全然違いますけど……」
「王族も人ですから悩みは案外似た
ようなものです。例えば悩みを聞いて
くれる親友が欲しいとか、ここ最近は
キャリーちゃん様に聞いてもらっています」
「そうよ私が聞いてあげてるの、
蒼字(そうじ)アルヴィアは
悪い子じゃないわよ!何とかしなさい!」
「何とかとか言ってもね~結婚はちょっと…
正体もバレますし」
とてもではないが考えられん!
「そうですか……分かりました
……もう少し考えます!」
諦めてはくれないんですね………
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