死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

文字の大きさ
13 / 75
「第二章 この状況を、有効活用することにしました」

2

しおりを挟む
「今お姉様が言ったこと、聞いた?」
「ええ、確かに聞いたわ。十歳だって!」
 互いのふにふにで柔らかな頬をぴたっとくっつけ、このおかしな状況を乗り越えようとする。
 自分達は確かに、十歳の誕生日を迎えた。レモンイエローのスーツとドレスに身を包んで、たくさんの人達から祝福されて、終盤には驚くような出来事が起きた。
 そして最後には、正体不明の何者かに命を奪われかけてしまったのだ。
  まさかあのリリアンナが冗談を言うとは思えないし、何より傷ひとつついていなかった。命が助かったと言っても、短剣で背中をひと突きにされていたのだ。さすがにこの回復速度はあり得ない、姉が魔女でもない限り。
「あれは、夢だったのかな……」
 ルシフォードのか細い呟きに、ケイティベルは思いきり頭を振る。あんなにも恐ろしくて生々しい夢など、あってたまるかと。
「よし、こうなったら……!」
 グイッと体を起こしたケイティベルは、その勢いのまま弟の左手を思いきり引っ張る。突然のことによろけながらも、彼女にぶつからないよう一生懸命に足を踏んばった。
「作戦会議よ、ルーシー!」
「そうだね、ベル。そうしよう!」
「行きましょ!」
 二人はぎゅうっと硬く手を握り合って、そのまま長い廊下をかけていく。もう二度と、温かいこの手を離したりするものかという、強い意志を胸に宿していた。

 水のない水車は動かない、という精神に忠実に基づき、いつものごとく朝食をたらふく腹に収めたぽっちゃり双子は、共用の子ども部屋にて作戦会議を開始する。
 食堂に降りた際、廊下でリリアンナにしたのと同じように両親に泣きながら抱きついたのだが、優しい笑顔で「怖い夢を見たのね」と頭を撫でられて終わった。
「つまり、あの夜のことは私達以外誰も覚えていないってことね」
「そうみたいだ。さっきお母様に聞いたら、僕達の十歳の誕生日は一ヶ月後だって言ってたし」
「ああ、もう。一体何がなんだかさっぱりよ!」
 テーブルの上には、散らばった羊皮紙と飛び散ったインク。ルシフォードはそれらを片付けながら、ケイティベルに宥めるような視線を送った。
「だけどやっぱり、あれは夢じゃないって証明出来たね」
 弟の言葉に、彼女は神妙な面持ちでこくりと頷いた。
「そうね、貴方の言う通りだわ。お母様に婚約の話をしたら、どうして知っているのかってすごく驚かれたもの」
 ケイティベルと婚約話が持ち上がっていたのは、外国の第二王子エドモンド・レスティン・トレンヴェルド殿下。結局はリリアンナと正式に婚約をすることになったのだが、それはまだ二人だけの秘密だ。
 ケイティベルがエドモンドの名前を出した途端に母ベルシアは驚愕し、なぜかリリアンナを叱責した。サプライズで驚かそうと思っていたのに、どこからか情報が漏れて失敗に終わってしまったのを嘆き、それをなんの根拠もなく姉のせいにしたのだ。

 とにかくこれで、真実との辻褄が合う。以前であれば絶対に知り得なかったことを知っているのは、あれが未来の出来事だからに他ならない。
「予知夢を見たのか、それとも過去に戻ったのか。もしかして僕達三人、あの時に一回死んじゃってるとか……」
 ケイティベルよりも小心者のルシフォードは、さっと青ざめた顔をする。彼女は落ち着かせるように、強く手を握った。
「マイナスにばかり考えちゃだめ!これは、神様が私達にくださったチャンスだと思わなきゃ!」
 この国では、男女の双子は繁栄と幸福の啓示。ケイティベルはそれを口にして、怯える弟を励ます。本当は、彼女も怖くて堪らない。けれどそれを表に出すと、ルシフォードが自分を気遣ってしまうと思ったのだ。
「うん、そうだよね……!ベルの言う通りだ、ありがとう!」
 ふわりと柔らかく笑う彼の笑顔を見て、ケイティベルの胸に温もりが広がっていく。二人はこうして、いつも互いを支え合いながら生きてきた。そしてそれは、これからも変わることはない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...