死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

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「第二章 この状況を、有効活用することにしました」

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「確かなことは、私達は今死んでいないってことよ。もしもあれが未来の出来事だって言うなら、なんとしても阻止しなきゃ!」
「で、でも。子ども二人だけでそんなこと出来るかな」
「それは、確かにそうだけど……」
 まだ幼い双子に妙案が思い浮かぶはずもなく、それどころか時間が経つにつれて余計に恐怖が増してくる。あの日と同じシナリオなら、殺されてしまうまでにもう一ヶ月しかない。
「お母様達に話してみようか?」
「信じてもらえるとは思えないわ。お母様ってば、都合が悪いことがあるといつもお姉様のせいにしてばかりで……」
 その瞬間、互いにはっとして顔を見合わせる。そうだ、自分達はあの時たった二人きりではなかった。なんとあのリリアンナが、身を挺して庇ってくれたのだと。
 早鐘を打つ心臓を必死に押さえつけ、ケイティベルはさらさらとペンを走らせる。いつもよりずっと字が乱れてしまったことについては、今は気にしない。
「リリアンナお姉様なら、私達を助けてくれるかもしれないわ!」
「そうだよ、だってお姉様は命の恩人なんだから!」
 そう言って声を弾ませたルシフォードを見て、ケイティベルは首を捻る。あれは果たして、命を救ってもらったといえるのだろうかと。
「いいえ、そんなことは重要じゃない。あの時、命と引き換えに守ってくれたのは確かよ」
「でも、どうしてだろう。僕はずっと、お姉様に嫌われているとばかり思ってた」
「奇遇ね、ルーシー。私もまったく同じ意見だわ」
 両親のようにあからさまな態度は取らないにしても、姉を前にすると体がすくんでしまうのは確か。誰もが認める完璧な公爵令嬢でありながら、気に入らない者には容赦しない性悪の悪役令嬢だと周囲から距離を置かれているリリアンナ。
 当然弟妹に対しても厳格で、顔を合わせるたびに口煩い小言ばかりで口調もキツい。まだまだ大人になりきれない二人にとってリリアンナは、とにかく怖かったのだ。
 もっともそれは愛情の裏返しで、彼女はおそらく国一番の不器用な天邪鬼と言っても過言ではない。ルシフォードとケイティベルが好きで好きでたまらないのに、それを伝えることが出来ない。
 我慢が当たり前の環境で生きてきたリリアンナは、我が強そうに見えて主張が苦手。それに、自身と仲良くすると二人の評判が落ちるかもしれないと思うと、どうしても本音を伝えられなかった。
 口煩いのは、そういう性格だから。可愛さゆえについあれこれと注意してしまい、余計に怖がられているだけのこと。意地悪をしてやろうという意図などまったくない。
 これまでのことを思うと、やはり姉が自分達を庇うとは考えにくい。いきなり事情を話しても理解してもらえるとは思えないし、そこまでの勇気はまだ持てそうにない。
 二人は何枚も何枚も羊皮紙をくしゃくしゃに丸めながら、ようやくひとつの結論に辿り着く。

 ――リリアンナを、試してみよう。

 と。
 

 誰からも愛されて素直に育った双子には、本音を隠す姉の気持ちが理解出来ない。それはどちらが悪いという話ではなく、単純に育った環境の違いだ。リリアンナは両親から愛されず、常に完璧を求められる状況に置かれていた。そんな彼女に素直さを求めるのは酷であるし、二人に理解しろというのも少し違う。
 要は、話し合い。恥ずかしがらず、気を揉まず、腹を割って話すより他に距離を近づける方法はない。
「よし、やるわよルーシー!」
「頑張ろう、ケイティベル!」
 シーツでぐるぐる巻きにされて殺されるなんて、まっぴらごめん。最悪の未来回避の為に、仲良しぽっちゃり双子は行動を開始するのだった。
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