死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

文字の大きさ
56 / 75
第六章「みんな、幸せに」

7

しおりを挟む
「ねぇ。ルシフォード、ケイティベル。今日はなんの日かしら?」
 そんな二人に、リリアンナは務めて穏やかな声色で尋ねる。
「今日はえっと……。僕らの誕生日?」
「ええ、そうよ。大正解」
 最近のリリアンナは、よく笑うようになった。それは少しでも弟妹を安心させたいからという気遣いもあり、純粋に幸せでたまらないという感情が溢れている証でもある。
「改めて、お誕生日おめでとう。二人がこの世に生まれてきてくれたことを、私は何より神に感謝しているわ」
「お姉様……」
「来年もこうして、盛大にお祝いしましょう。その時までに、もっと素晴らしいプレゼントを考えておくから」
 ふわふわとした愛らしい頬に手を伸ばし、掌で優しく包み込む。様々な感情がないまぜになり気を抜けば無意識に涙が溢れ落ちそうだったが、リリアンナはぐっと奥歯を噛み締めそれに耐えた。
「約束するわ、必ずよ」
 力強い姉の言葉は、不安と恐怖に怯える二人の心にぴたりと寄り添う。リリアンナがいれば心配いらないと、澱んでいた双子の瞳に少しずつ光が差し込んでいく。
 まるで分厚い雲に覆われていた空が、すべてを吹き飛ばす疾風の力を借りて輝きを取り戻すように。
「さぁ、そろそろ支度を始めましょうか。今日の主役が、暗い顔ばかりしていてはだめよ。うんと可愛くて凛々しい姿を、皆に見てもらうの」
 リリアンナがちらりと視線を向けた先には、この日の為にあつらえた三人分のお揃いの衣装がトルソーに並んでいる。リリアンナのドレスは、二人の記憶とは違うレモンイエローだ。
「お姉様の言う通りだよ、ベル!僕達はもう十歳になったんだ、いつまでもくよくよしてばかりいられない」
「ええ、そうね!せっかくのお誕生日ですもの!思いきり楽しまなきゃ!」
 大丈夫、もう二度と悲劇は繰り返さない。最大の味方をつけた双子は、正に怖いものなし。ぽっちゃり愛されボディをふるふると揺らしながら、二人は手を取り合い再びプレゼントの海に飛び込んだのだった。

 豪奢に飾り付けられたエトワナ公爵家は、それはそれは賑わいに満ちていた。双子の誕生日は毎年盛大なパーティーが催されるが、今年はさらに気合が入っている。
 なんといっても自国の第二王子と他国の第二王子が来訪するとのことで、朝から屋敷はてんやわんや。
 母ベルシアと姉リリアンナが競って陣頭指揮を取り合ったおかげで、大きな問題もなく準備は完了。父アーノルドはふんぞり返っているだけで、自身の労力は使わない。エトワナ家ではそれが常だが、例年と違うのはリリアンナが意志を持って働いていることだった。
 愛する弟妹を守る為、警備のすべてを掌握すると譲らない。招待客の綿密なリスト化と配置図の作成、僅かな抜けも許さないその背中は、まるで歴史に名を残す軍師のようだったと使用人達が噂していた。
 大仰過ぎる護衛の人数、そこにはレオニルとエドモンドが直々に選任した近衛騎士すら混ざっている。これにはさすがのアーノルドも狼狽えたが、両王子の圧には勝てなかった。

「一見隙がないように見えて、ちゃんと抜け道も用意してあるわ」
 リリアンナは、目が痛くなりそうなほどに書き込まれた配置図に指を這わせる。ルシフォードとケイティベルの話では、殺される直前シーツを被っていたせいでいまいち場所を覚えていないらしい。
 けれど、前が良く見えない状況では会場からさほど離れてはいないはず。階段を使った覚えもなく、足元は絨毯だった。それに二人の力でも開けることが出来る扉は、限られているのだ。
「……きっと、現場はここだわ」
 愛の力は偉大なり、世紀の名探偵のごとき推理を披露したリリアンナは、形の良い爪で配置図のその位置をとんとんと叩く。彼女が示したのは、なんとホールの隣にあるパーラーだった。そこはベルシアが客人を招く自慢の空間で、貴重な調度品や立派な花瓶に生けられた花がところ狭しと置かれている。つまり、身を隠す場所はいくらでもあった。
 普段ならば無人であるなどほぼあり得ないが、パーティーとなれば話は別。警備は「ここには侵入しないだろう」という先入観とベルシアのテリトリーであることから、部屋の中を隅々までチェックしなかったのだろう。
 そう推測したリリアンナは、今回もわざとパーラーの見回りを指示していない。レオニルとエドモンドが信頼する近衛騎士数名にだけ、刺客の件を伝えていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...