「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ

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第三章「異性を魅了する花の話」

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 ヴァンドーム家の馬車は、はっきり言ってマグシフォン家のそれとは比べ物にならない乗り心地の良さで、しばらくの間私は子どもみたいにきゃっきゃとはしゃいだ。
「あらかじめ長旅を想定した造りになっているからな」
「揺れ方が全然違います!我が家の馬車はもう、こんな感じでしたから!」
「それは大袈裟だろう」
 ぐわんぐわんと体を前後に揺らしてみせると、旦那様が小さく微笑む。彼は大体、私が周囲から変だと呆れられるような行動を取っても、今みたいに笑ってくれる。
「旦那様は、私に呆れたりしないんですか?」
 ふと、そんな質問をしたくなった。
「呆れる?なぜだ?」
「私は、おおよその貴族令息が求める理想の妻像からはかなりかけ離れていますし、母からはいつも怒られてばかりでした。いい歳して草だの虫だの食べ物だのと、子どもみたいなことばかり言って、淑女教育をしょっちゅう逃げ出していました」
「クイネから、君はダンスも所作も完璧だと聞いているが」
「完璧というか、出来なくはないというレベルですね」
 ぽんこつそうに見えるから、出来が人並みでもめちゃくちゃ褒められる。極悪顔の人が親切だったら神様みたいに感じる、あの現象だ。
「白い結婚と聞いていたので、もっと淡白な夫婦関係を想像していたんです」
 特に深い意味はなかったけれど、なぜか旦那様はぎくりとした表情で唇を結んだ。
「ま、まさか迷惑か?僕は君に、嫌な思いをさせているのか?」
「そんな風には思っていません。ただ、気を遣わせてしまっているのかと」
 ブルーメルでの生活を始めてから約二ヶ月、日に日に旦那様と顔を合わせる時間が増えている気がする。
 私はあの手紙をもらってから、すっかり甘えてしまっていたのだ。何もしなくていい、形だけの夫婦で構わない、田舎ライフやっほい!と。
 だけど旦那様が私に対してとても優しいから、罪悪感が芽生えてきた。私が庭に出ていると現れるし、時には花を摘んでプレゼントしてくれる。私が捕まえた虫を興味深そうに見たり、大したこともない話をちゃんと聞いてくれたり。
 さすがに朝昼晩ステーキが出てきた時は、五日目くらいで丁重にお断りしたけれど。だって贅沢過ぎるし、私のせいでヴァンドーム領の牛を食べ尽くしてしまうと思ったから。
 生誕パーティーへの同伴が決まってからは、クイネとのレッスン中に何度か顔を出しては「嫌じゃないか」と心配してくれた。
 本当に、結婚式の時とは態度ががらりと変わっているから、まさか双子か二重人格かもと本気で疑ったことも何度かある。
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