「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ

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第五章「衝撃(たぶん)の真実」

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 笑い過ぎてまるで激しい運動でもした後かのように、ぜえぜえと息を切らしているセシルバ様を、私は変な顔で見つめる。場をとりなすようにんんと咳払いをしてから、彼はようやく落ち着きを取り戻した。
「それにしても、フィリアは優し過ぎるよ。先に失礼を働いたのはアイツなんだから、少しくらい試すような真似をしてもバチは当たらない。それにもし僕が君の立場なら、聞かなかったことにして放っておくけどな」
「そういう問題ではありません。私はこのことで旦那様がショックを受けたり、大旦那様やバルバさんとの関係が拗れたりするのが嫌なんです」
 打ち明けてくれたのは、私を信用してくださったから。それを悪い方向に向かわせてしまうのは嫌だし、このままでいいとも思えないし、こうなったら親友様の提案に乗るより他はないと、半ばやけっぱちのような気持ちが芽生えてきた。
「大丈夫。僕だってオズベルトが大切だし、絶対に悪いようにはしないから」
「ありがとうございます、セシルバ様……」
「友の為なら、このくらいお安い御用さ。それから演技をするなら、これからはテミアンって呼ばないとね」
「はい、テミアン様!」
 まるで神に祈りを捧げるがごとく、自身の両手をぎゅうっと合わせて崇拝の瞳で彼を見つめる。きっとセシルバ様には私のような凡人には決して理解出来ない崇高な信念があるに違いない。
「完全に面白がっていらっしゃいますね」
「えへ、ばれちゃった?」
「んん……?」
 何やらマリッサとのやり取りで非常に不穏かつ不安な台詞が飛び出した気がしなくもないけれど、一度腹を括ったのだからとりあえず試してみるしかない。
 にこにこと笑うセシルバ様の向こうに、旦那様の分かりにくい笑顔を思い浮かべた私は、思わず胸の辺りをぎゅうっと握り締めたのだった。



 ♢♢♢
 翌日。結局あれから色んなことをぐるぐると考え過ぎて、旦那様の前でまったく普通に出来なかった。迎えに出た時ただでさえ変な態度を取ってしまったのに、これじゃあますます不信感を与えてしまう。私ってば昔から本当に、嘘や誤魔化しが下手だ。それで何度母に叱られたことか。まぁ、あれは淑女教育からすぐに逃げ出す私が悪いんだけれど。
「はぁ……。全然寝られなかった」
 夏の朝は太陽の起床時間も早く、庭園に出てみるとすでに地面がじりじりと焼け始めている。それでもここブルーメルは、王都やマグシフォンよりもからりとした過ごしやすい夏期らしいから、暑さを気にせず外で遊べると今からわくわくしている。
「おはよう、フィリア」
「だ、旦那様!」
 思えば、以前にもこんなことがあった。急にやって来た旦那様と、芝生に座って干し肉を食べた日。もっと寡黙で厳しい人かと思ったけれど、白い結婚のことで私が傷付いているのではと気にかけてくれた、優しい人。
「なぜここにいらっしゃるのですか?」
「うん?なんとなく、君がいるような気がして」
 朝の澄んだ日差しに照らされ、爽やかな薫風に遊ばれ、美しい紫黒の髪は、まるでクロアゲハチョウそっくり。ブラック・ダイヤモンドの化身のような旦那様が、こちらに向かって控えめに微笑む。
 これは一体なんという名前の奇跡だろうかと真剣に考えてしまう私は、まだ頭の中が眠りについたまま夢を見ているのかもしれない。
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