偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ

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 聖女の奇跡によって、国王陛下の病は完治した。
 陛下は約三年ぶりに、ベッドがある自室から外に出る。
 ずっと眠っていたから足腰が弱っていて、立つことすらできなかった。
 移動は車いすを使う。

「すまないな。アクト」
「いいんですよ。これくらいやらせてください」

 ベッドから車いすの移動、車いすを押すのも殿下が一人でやりたがった。
 気持ちはわかる。
 死を待つだけだった父親が、こうして起き上がれるようになったのだ。
 息子として、してあげられることはしたいと思うだろう。
 殿下は優しい人だった。
 ジンさんとシオンも気遣って、二人の様子を見守っている。

「外に出ますか? 今日はとてもいい天気です」
「そうだな。久しぶりに、太陽の光を浴びてみたい」
「わかりました」

 殿下は車いすを押し、国王陛下を王城の外へと連れ出す。
 その後ろを見守るように、私とジンさん、シオンさんも歩いて続く。
 私たちは二人と距離を保つ。
 家族の時間を邪魔しないように。
 自然と少し遅いペースで歩きながら、ジンさんが呟く。

「嬉しそうだな、アクトのやつ」
「そうですね。気持ちはとてもわかります」
「だな。そういうお前も、機嫌がよさそうだな?」
「ジンもですよ。ニヤついています」
「ははっ、しょうがないだろ? こんなに嬉しいことがあるかよ」
「ええ」

 殿下と陛下を見守る二人の視線から、慈愛の気持ちを感じ取る。
 まるで我が子の成長を見守る両親のようだ。
 二人とも嬉しくて、本当ならもっと近づきたいという気持ちを、殿下の邪魔をしないようにと気を遣っている。
 殿下だけじゃない。
 この二人も、すごく優しい心の持ち主だ。

「ありがとな。イリアス」
「イリアス様のおかげで、この国の未来に光が見えました。心から感謝いたします」

 二人は私に向かって頭を下げる。
 そんな二人に私は首を振る。

「私の力ではありません。皆さんの祈りが本物だったから、国王陛下は回復されたのです」
「何言ってんだ。聖女の力、イリアスのおかげだろ?」
「いいえ。聖女の力は、奇跡を起こすきっかけを作るだけです。祈りに込められた想いが偽物なら、どれだけ願っても奇跡は起きません」
「そういうものなのですか?」
「はい」

 勘違いをしている人は多いだろう。
 聖女とは神様の代弁者だ。
 私にできることは、人々の祈りを集めて神様に届けること。
 奇跡が起こるか否かは、祈りが本物かどうかで決まる。
 お願いした通り、彼らは心から願ってくれた。
 国王陛下の回復を。
 
「だから奇跡は起こったのです。私一人では、奇跡は起こせませんから」
「だとしても、そのきっかけをくれたイリアスには感謝しているよ」
「そうですね。イリアス様がこの国に来てくださったことこそ、神様が起こしてくださった奇跡だと思っています」
「まさに運命だな!」
「はい」
「……そうだといいですね」

 私がスパーク王国を追放され、この国にたどり着いたことが運命だとしたら……。
 これまで頑張ってきた時間は何のためにあったのだろう?
 ふと、そんなことを考えてしまった。
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