6 / 18
6.クエスト選び
しおりを挟む
「じゃあ今度は、君たちが自己紹介する番だね」
「はい!」
アリアは三人に話題を振った。
おっさんの件は否定してくれないのか、と思ったけど、俺がおっさんなのは事実だし何も言えない。
元気よく返事をしてくれた赤髪の少女から、順番に自己紹介をすることに。
「私はミルアです! ジョブは剣士で、一応このパーティーのリーダーです。これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ」
ニコリと微笑むミルア。
赤い髪はアリアと同じだけど、雰囲気は全く別だな。
元気で明るくて、しっかりしている感じがする。
彼女の自己紹介が終わって、しばらく間が空く。
ミルアは隣に声をかける。
「次だよ」
「あたしか。あたしはステラ! よろしくな!」
ミルアより簡単な自己紹介を済ませたステラ。
ソファーの後ろに槍が立てかけられているし、おそらくジョブは槍使いだろう。
単なるイメージだけど、ある意味ミルアより元気が良いかも。
続けて最後の一人。
左端に座る空色の髪をした少女の番になる。
「ソフィア」
「……」
「……」
「えっと、ジョブは?」
「魔法使い」
「そうか」
「うん」
これは会話と呼べるのだろうか。
ソフィアと名乗った彼女は、じっと俺の顔を見つめている。
目は背けないし、人見知りって感じではなさそうだけど……
コミュニケーションは苦手そうだな。
三人とも見た目から若いのは伝わる。
十代前半……いや、ギリギリ後半くらいか。
こんなにも可愛いらしい女の子が冒険者を目指すなんて、と驚きを感じる。
改めて、冒険者ブームを実感した。
三人が話し終わったのを確認して、アリアが口を開く。
「自己紹介は済んだね? 概要は説明してあるから省くけど、これから二週間、彼と一緒に冒険者として活動してもらうよ」
「はい! よろしくお願いします」
「よろしくな~」
ソフィアは黙って頷く。
「うん! あーそれとね? 話したと思うけど、今回はお試しだからお金は必要ない。その代わりと言っては何だけど、途中とか最後に感想を聞かせてほしいの」
「わかりました」
ん、ちょっと待て?
お金はいらないって聞こえたけど、俺への報酬はちゃんと支払われるよな?
そんな疑問が頭によぎる。
表情に出ていたのか、アリアが気付いて補足する。
「君への報酬はギルドから支払うよ」
「そうか。なら良かったよ」
ただ働きさせられるのかとヒヤヒヤした。
彼女からのお願いとは言え、無報酬は困るからな。
生活できなくなるし。
「じゃあ後はよろしくね」
「え、じゃあって他に説明は?」
「ないよ。後は一緒に冒険して、色々と教えてあげるだけだから」
「そんな簡単に言われてもなぁ」
「シオンなら大丈夫よ。アタシが選んだ男なんだから」
また根拠のない期待を向けてくる。
まぁ、やるって言ったことだし、仕事はしっかりこなそうとは思う。
そんなこんなでアリアは部屋から出ていく。
残った俺たちだけど、ここで話すことは特にない。
「えっと、この後はどうするかな? 基本は君たちに合わせようと思うんだけど」
「あ、じゃあその、最初から教えていただけませんか?」
「最初から?」
「はい。私たち、まだ一度もクエストに行ったことがなくて」
話を聞くと、彼女たちは三人とも別の街から引っ越してきたばかりだと言う。
冒険者登録を済ませたのも、二日前だったそうだ。
その時にギルド側からアドバイザーの話を提案されて、今日に至るという経緯まで聞いた。
「そうだったのか」
「はい。だからその、出来ればクエストの選び方とか、手順も教えてもらえると嬉しいです」
「うん、良いよ。じゃあホールへ行こうか」
「はい!」
俺は彼女たちと一緒に、一階のホールへ向かった。
話を聞く限り、冒険者についての知識が足りないのはわかる。
逆にそっちの方が、俺としてはやりやすい。
何を教えれば良いのかを考えなくても、全部教えれば良いんだからな。
「ここがクエストボードだ。見たことあると思うけど、ここに毎朝新しい依頼書が張り出されるんだよ」
「ほとんど残ってませんね」
「まぁね。この時間はピークをかなり過ぎてるし」
現在の時刻は午前十時。
クエストボードにも数枚の依頼書しか残っていない。
その現状を見て、ステラが不満そうに言う。
「全然ないけど大丈夫なのかぁ~」
「心配ない。どっちにしろ、今のランクじゃ受けられるクエストも少ない。Fランクのクエストならこの時間でも残ってるよ」
そう言いながら、残っている依頼書に手を伸ばす。
冒険者にはランクがあり、クエストにも同様のランク付けがされている。
特別な条件がない限り、自分のランクより上のクエストは受けられない。
登録直後なら、全員がFランクに指定されている。
ちなみに俺は、追放された彼らのランクをそのまま継いでいるので、一応はSランクだ。
「選んでみるか?」
「あたしが?」
「ああ」
「って言われてもな~ 何を選んでいいのかわかんないし」
ステラは頭に手を当てながらそう答えた。
それからうーんと唸りながら依頼を眺めていたが……
「わかんない! やっぱ選んで」
「了解。じゃあ――」
俺は依頼書を選び取る。
「この三つにしよう」
選んだ依頼書に、三人の視線が集まる。
「はい!」
アリアは三人に話題を振った。
おっさんの件は否定してくれないのか、と思ったけど、俺がおっさんなのは事実だし何も言えない。
元気よく返事をしてくれた赤髪の少女から、順番に自己紹介をすることに。
「私はミルアです! ジョブは剣士で、一応このパーティーのリーダーです。これからよろしくお願いします!」
「こちらこそ」
ニコリと微笑むミルア。
赤い髪はアリアと同じだけど、雰囲気は全く別だな。
元気で明るくて、しっかりしている感じがする。
彼女の自己紹介が終わって、しばらく間が空く。
ミルアは隣に声をかける。
「次だよ」
「あたしか。あたしはステラ! よろしくな!」
ミルアより簡単な自己紹介を済ませたステラ。
ソファーの後ろに槍が立てかけられているし、おそらくジョブは槍使いだろう。
単なるイメージだけど、ある意味ミルアより元気が良いかも。
続けて最後の一人。
左端に座る空色の髪をした少女の番になる。
「ソフィア」
「……」
「……」
「えっと、ジョブは?」
「魔法使い」
「そうか」
「うん」
これは会話と呼べるのだろうか。
ソフィアと名乗った彼女は、じっと俺の顔を見つめている。
目は背けないし、人見知りって感じではなさそうだけど……
コミュニケーションは苦手そうだな。
三人とも見た目から若いのは伝わる。
十代前半……いや、ギリギリ後半くらいか。
こんなにも可愛いらしい女の子が冒険者を目指すなんて、と驚きを感じる。
改めて、冒険者ブームを実感した。
三人が話し終わったのを確認して、アリアが口を開く。
「自己紹介は済んだね? 概要は説明してあるから省くけど、これから二週間、彼と一緒に冒険者として活動してもらうよ」
「はい! よろしくお願いします」
「よろしくな~」
ソフィアは黙って頷く。
「うん! あーそれとね? 話したと思うけど、今回はお試しだからお金は必要ない。その代わりと言っては何だけど、途中とか最後に感想を聞かせてほしいの」
「わかりました」
ん、ちょっと待て?
お金はいらないって聞こえたけど、俺への報酬はちゃんと支払われるよな?
そんな疑問が頭によぎる。
表情に出ていたのか、アリアが気付いて補足する。
「君への報酬はギルドから支払うよ」
「そうか。なら良かったよ」
ただ働きさせられるのかとヒヤヒヤした。
彼女からのお願いとは言え、無報酬は困るからな。
生活できなくなるし。
「じゃあ後はよろしくね」
「え、じゃあって他に説明は?」
「ないよ。後は一緒に冒険して、色々と教えてあげるだけだから」
「そんな簡単に言われてもなぁ」
「シオンなら大丈夫よ。アタシが選んだ男なんだから」
また根拠のない期待を向けてくる。
まぁ、やるって言ったことだし、仕事はしっかりこなそうとは思う。
そんなこんなでアリアは部屋から出ていく。
残った俺たちだけど、ここで話すことは特にない。
「えっと、この後はどうするかな? 基本は君たちに合わせようと思うんだけど」
「あ、じゃあその、最初から教えていただけませんか?」
「最初から?」
「はい。私たち、まだ一度もクエストに行ったことがなくて」
話を聞くと、彼女たちは三人とも別の街から引っ越してきたばかりだと言う。
冒険者登録を済ませたのも、二日前だったそうだ。
その時にギルド側からアドバイザーの話を提案されて、今日に至るという経緯まで聞いた。
「そうだったのか」
「はい。だからその、出来ればクエストの選び方とか、手順も教えてもらえると嬉しいです」
「うん、良いよ。じゃあホールへ行こうか」
「はい!」
俺は彼女たちと一緒に、一階のホールへ向かった。
話を聞く限り、冒険者についての知識が足りないのはわかる。
逆にそっちの方が、俺としてはやりやすい。
何を教えれば良いのかを考えなくても、全部教えれば良いんだからな。
「ここがクエストボードだ。見たことあると思うけど、ここに毎朝新しい依頼書が張り出されるんだよ」
「ほとんど残ってませんね」
「まぁね。この時間はピークをかなり過ぎてるし」
現在の時刻は午前十時。
クエストボードにも数枚の依頼書しか残っていない。
その現状を見て、ステラが不満そうに言う。
「全然ないけど大丈夫なのかぁ~」
「心配ない。どっちにしろ、今のランクじゃ受けられるクエストも少ない。Fランクのクエストならこの時間でも残ってるよ」
そう言いながら、残っている依頼書に手を伸ばす。
冒険者にはランクがあり、クエストにも同様のランク付けがされている。
特別な条件がない限り、自分のランクより上のクエストは受けられない。
登録直後なら、全員がFランクに指定されている。
ちなみに俺は、追放された彼らのランクをそのまま継いでいるので、一応はSランクだ。
「選んでみるか?」
「あたしが?」
「ああ」
「って言われてもな~ 何を選んでいいのかわかんないし」
ステラは頭に手を当てながらそう答えた。
それからうーんと唸りながら依頼を眺めていたが……
「わかんない! やっぱ選んで」
「了解。じゃあ――」
俺は依頼書を選び取る。
「この三つにしよう」
選んだ依頼書に、三人の視線が集まる。
21
あなたにおすすめの小説
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。
越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる