聖女三姉妹 ~本物は一人、偽物二人は出て行け? じゃあ三人で出て行きますね~

日之影ソラ

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長女アイラ

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 私は聖女であることに、少なからず誇りを感じていた。
 たくさんの人々を救い、導いて、感謝される。
 それは私にとって喜びだった。
 だけど私には、それよりも大切な物がある。
 何があっても守りたい人たちが、居続けたい場所がある。
 それを守るためなら、私は何だってやれると思う。

 そう。
 私が守りたいのは、家族と家族の帰る場所。
 カリナとサーシャ。
 二人の大切な妹たちが、これからも健やかに笑っていられる未来を作ること。
 生半可な覚悟では守れないと思った。
 そのために私は、自分の夢も捨てて構わないとさえ思っていた。

 でも、私は出会ってしまった。
 偶然なのか、運命か。
 その出会いを果たしてしまったら、私の心はもう止まらない。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 東の空に太陽が昇る。
 私の目覚めの合図は、窓から差し込む朝日だ。
 瞳を開いて時計を見ると、午前五時半を指している。
 二人よりも早く起きて準備するのが、私の日課だった。

「よーし! 今日も一日頑張らないとね」

 自分に気合いを入れて起き上がる。
 服を着替えて、寝癖をとかし、一階のキッチンへ向かう。
 二人が起きてくる前に、朝食の準備を済ませる。

「えーっと、確か昨日の残りが……」

 元々料理は得意なほうだった。
 聖女として大聖堂に入る前は、街の小さな教会に住んでいて、シスターの手伝いで料理もしていたから。
 王城近くの屋敷で生活するようになっても、時折自分で適当に作っていたこともある。
 あの頃の経験が、今の生活に活かされていると思うと、ちょっと皮肉だ。

 朝食の準備を終える。
 あとは二人を待つだけとなって、先に降りてくるほうは決まっている。

「おはよう」
「おはよう、カリナ」 

 次女のカリナ。
 私と同じ聖女で、本が大好きで私よりいろんなことを知っている。
 今は図書館の司書として働いていて、毎日忙しそうだ。

「ちょっと待ってて。今からサーシャを起こしに行くから」
「わかった」

 もう一人の妹は、自分で起きてはこない。
 子供でもないんだし、そろそろ一人で起きられるようになってほしいけど。
 そこが可愛い所でもあるから、悩みどころだ。

「サーシャ~ もう朝よ~」
「ぅ……はーい」

 部屋の外から呼びかけると、中から眠たそうな声が返ってくる。
 一先ずこれで起きてはくれるけど、大抵このあと放っておくと二度寝する。

「入るわよ」

 中へ入って、直接起こすのもいつも通り。
 ベッドで布団にくるまっている小動物みたいな女の子が、三女のサーシャ。
 三姉妹の中で一番元気で明るい。
 運動神経も良くて、王国にいる頃から、騎士の人たちに混ざって剣の稽古をしていたりもした。
 今は冒険者になって、いろんな依頼を受けているとか。
 危険な仕事だから私は反対だったけど、頼りになる仲間?を見つけたみたいで、帰宅すると楽しそうだ。

「サーシャ」
「う~ あっ、アイラお姉ちゃん」
「また寝ようとしてたわね? ちゃんと起きなさい」

 身体を揺すって、近くで声をかける。
 これでようやく目が覚めてくれたのか、サーシャは起き上がり着替えを始める。
 私は一足先に下へ降りて、彼女が来るのを待っていた。

「おっはよー!」
「おはよう」

 目が覚めたサーシャは元気いっぱいに挨拶をした。
 寝起きも同じくらいシャキシャキしてくれると嬉しいのにな~
 とか思いつつ、三人がテーブルを囲む。

「揃ったわね。じゃあ――いただきます」
「「いただきます」」

 三人仲良く朝食をとる。
 この街へ来てから三か月余り、仕事中の昼を除いて、一度も誰かが欠けたことはない。
 必ず三人そろってご飯を食べるようにしている。
 別に意識しているわけじゃないけど、そういうものだと思うから。
 たぶん二人も、私と同じ気持ちだと思う。

「ごちそうさま。サーシャは今日もギルドよね?」
「うん! 今日はちょっと遠出する予定なんだ!」
「そうなの? 帰りは遅くなりそう?」
「う~ん、たぶんいつも通りだと思うかな」
「そう、じゃあ夕飯を作って待っているわ」
「はーい!」

 そう言って、サーシャは張り切って立ち上がる。
 一番寝坊助だけど、家を出るのは彼女が一番最初だ。

「いってきまーす!」
「いってらっしゃい」
「気を付けて」

 私とカリナで見送ってから、朝食の片づけをする。
 それから少し後に、私たちも家を出る。

「カリナはいつも通り?」
「だと思う」
「そう。頑張りなさいよ」
「わかってる。じゃあ行ってきます」
「私も行ってくるわ」

 出発の時間は一緒でも、向かう方向がぞれぞれ逆だ。
 カリナはグレンベルへ大図書館という、この街で一番大きな図書館へ。
 私は反対方向へ歩いていく。
 
 次女のカリナは司書。
 三女のサーシャは冒険者。
 じゃあ長女の私は何をしているのか?

 ヒントを言うと、私らしいことだと思う。
 ある意味変化はない。
 二人もやろうと思えば出来るけど、たぶんやりたがらないお仕事だ。

 飲食店のお料理をしている?
 服屋さんの店員?
 それとも、お医者さんの真似事?

 全部外れだ。
 私は一体何なのか。
 その答えが、今の私のお仕事に繋がっている。
 
 到着したのは――

 王城前にある聖堂だった。
 そう。
 何の因果か、私は今でも聖女として働いている。
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