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第二章
22.早めの再会
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ここは冒険者の街。
大都市の中でも極めて珍しく、帝国の息がかかっていない。
彼らは独自の生活形態を獲得し、支援を受けずとも安全に暮らせる準備ができていた。
故に帝国も関わろうとしない。
関わるメリットがなく、デメリットが大きいからだ。
そんな場所に――
「おい、あの馬車って」
「帝国の? なんであいつらがこの街にいるんだよ」
「知らねーよ。けど……」
「ああ、なんか起こりそうだぜ」
この場所に似つかわしくないきらびやかな馬車が道を走る。
誰もが目を向ける。
馬車に、そしてそれに乗る一人の女性に。
銀色の髪をなびかせ、馬車から窓の外を見つめる彼女は――
「皇女様、そろそろ到着いたします」
「ええ、ありがとう」
バハルス帝国第三皇女エリーシュ・レバテインである。
◇◇◇
「おはようございます。ラスト様」
「はい。おはようございます」
朝。
いつも通りに冒険者ギルドへ足を運んだ。
受付嬢が俺たちを見つけると、にっこり満面の笑顔で出迎えてくれる。
「何かいいクエストはありますか?」
「そうですね。討伐クエストですと、ラスト様たちに見合ったクエストは……簡単なものならいくつかあるのですが」
「えぇーまたー? 最近手ごたえねー相手ばっかりだからつまんねーよ」
「デルタ、わがまま言わないの」
「ふぁ~ なんでもいいよ~」
一瞬で受付カウンターがにぎやかになる。
そんな彼女たちの様子を、受付嬢もほほえましそうな顔で見守っていた。
イージスから帰還して一か月半。
この間にも俺たちは、毎日欠かさずクエストを受けていた。
そのおかげか、ギルドでの俺たちの評判はかなり高くなっている。
受付嬢と親しく会話できているのもその一つだ。
「ラスト様。たまにはお休みになられてはいかがですか? このひと月以上毎日クエストを受けていただいておりますよね? あまり無理をされるとお体に触ります」
「心配していただいてありがとうございます。でも大丈夫です。体力には自信がありますから。それに、今は楽しいんです。やれることが増えていくことが」
こんな感覚も初めてだ。
何かしていないと落ち着かないとか。
成長を実感できる喜びとか。
すべてが新鮮で、心地いい。
「私たちも疲れはそうそう感じませんからね」
「むしろじっとしてるほうが疲れるぜ」
「えぇ~ お姉ちゃんたち変だよ~」
「お前がだらけすぎなんだよ」
「そうよシータ。人前なんだからしっかりしなさい」
この三人も変わらず仲良くしている。
デルタの言う通り、最近のクエストは少し物足りない。
街の周囲に出現する魔物はだいたい戦ったし、もう慣れてしまった。
よほど油断しない限り負けることはないだろう。
同じことの繰り返しは退屈になる。
何か新しい刺激がほしいとは、思うようになってきた。
ギルドの扉があく。
カランカランとベルの音がなり、受付嬢が先に反応する。
「お邪魔するわ」
「いらっしゃいま――せ?」
彼女の表情が変わった。
にこやかだったのに、一瞬にして訝しむように。
俺たちは遅れて振り返る。
その時にはもう、ギルド中の人たちが入り口に注目していた。
「おいおい、どういうことだよ」
「なんで……」
「どうして……皇女様がここに?」
「え?」
皇女?
皇女って、あの王族の?
それ以外に何があるんだってツッコミされそうだが。
俺は自分の目を疑ってしまった。
だって、そこに立っていたのは、俺もよく知っている女性だったから。
「また会えたわね。ラスト」
「エリーシュ……皇女……様?」
まったく、冗談だろ?
◇◇◇
デルタがお茶をいれ、コトンとテーブルに置く。
「ほらよ」
「ありがとう」
エリーシュ皇女がそれを飲む。
「美味しいわ。あなたお茶をいれるのが上手なのね」
「まぁな。これで手先は器用なんだぜ」
「へぇ、見えないわね」
「おいデルタ。あまり馴れ馴れしくするんじゃない」
俺はひそひそ声でデルタに注意する。
テーブルを一つ挟んだ距離で座っているんだ。
もちろん彼女にも聞こえている。
「ふふっ、今さら畏まらなくていいわ。私のことは皇女じゃなくて、友人として接してくれると嬉しいわね」
「い、いや……」
無茶言わないでほしい。
皇女様と馴れ馴れしく接していたら、外にいる騎士たちに何をされるか……。
「大丈夫よ。あれはただの護衛、私の命令に従っているだけよ」
「それでも緊張するんですよ……」
あれ?
今、何かおかしかったような……。
気のせいか。
「それで、皇女様がどうしてこの街に? ここは冒険者の街と、呼ばれているのは知っていますよね?」
「あら? 友人を訪ねにきた、というのじゃ不服かしら?」
「不服ではありませんが、不自然です」
「ふふっ、そうね。ただ会いにきたというのは冗談よ。けど、個人的に会いたかったのは本当」
彼女は微笑む。
どうにも読めない。
この人の考えていることがまるでわからない。
本当に不思議な人だ。
「あの後のこと、気にならない?」
「オークションですか?」
「ええ」
「それは……気にはなりますね」
正直かなり気になっている。
俺はシータを救出するため、結構な大立ち回りを演じた。
結果的に救出はできたけど、あの場にいた人には俺の顔を覚えられただろう。
何かしらお咎めがあるんじゃないかと、不安に感じる夜もあった。
「心配しなくても、あなたが捕まるようなことはないわ」
俺の不安を見透かしたように彼女は言う。
「あそこは元々よくない噂が多いオークションだったの。盗品を出品したり、偽物を売り出したり……私があそこにいたのは、真実を確かめるためよ」
「ああ、だから……」
標品を見に来たわけじゃない。
オークションを見に来た。
彼女はそう言っていた。
意味がやっと理解できたよ。
「安心できたかしら?」
「はい。おかげさまで」
「それはよかったわ」
「……まさか、それだけを伝えるために来たわけじゃ……ないですよね?」
俺の問いに、彼女は笑みを浮かべる。
「ええ、今日はあなたにお願いがあって来たの」
大都市の中でも極めて珍しく、帝国の息がかかっていない。
彼らは独自の生活形態を獲得し、支援を受けずとも安全に暮らせる準備ができていた。
故に帝国も関わろうとしない。
関わるメリットがなく、デメリットが大きいからだ。
そんな場所に――
「おい、あの馬車って」
「帝国の? なんであいつらがこの街にいるんだよ」
「知らねーよ。けど……」
「ああ、なんか起こりそうだぜ」
この場所に似つかわしくないきらびやかな馬車が道を走る。
誰もが目を向ける。
馬車に、そしてそれに乗る一人の女性に。
銀色の髪をなびかせ、馬車から窓の外を見つめる彼女は――
「皇女様、そろそろ到着いたします」
「ええ、ありがとう」
バハルス帝国第三皇女エリーシュ・レバテインである。
◇◇◇
「おはようございます。ラスト様」
「はい。おはようございます」
朝。
いつも通りに冒険者ギルドへ足を運んだ。
受付嬢が俺たちを見つけると、にっこり満面の笑顔で出迎えてくれる。
「何かいいクエストはありますか?」
「そうですね。討伐クエストですと、ラスト様たちに見合ったクエストは……簡単なものならいくつかあるのですが」
「えぇーまたー? 最近手ごたえねー相手ばっかりだからつまんねーよ」
「デルタ、わがまま言わないの」
「ふぁ~ なんでもいいよ~」
一瞬で受付カウンターがにぎやかになる。
そんな彼女たちの様子を、受付嬢もほほえましそうな顔で見守っていた。
イージスから帰還して一か月半。
この間にも俺たちは、毎日欠かさずクエストを受けていた。
そのおかげか、ギルドでの俺たちの評判はかなり高くなっている。
受付嬢と親しく会話できているのもその一つだ。
「ラスト様。たまにはお休みになられてはいかがですか? このひと月以上毎日クエストを受けていただいておりますよね? あまり無理をされるとお体に触ります」
「心配していただいてありがとうございます。でも大丈夫です。体力には自信がありますから。それに、今は楽しいんです。やれることが増えていくことが」
こんな感覚も初めてだ。
何かしていないと落ち着かないとか。
成長を実感できる喜びとか。
すべてが新鮮で、心地いい。
「私たちも疲れはそうそう感じませんからね」
「むしろじっとしてるほうが疲れるぜ」
「えぇ~ お姉ちゃんたち変だよ~」
「お前がだらけすぎなんだよ」
「そうよシータ。人前なんだからしっかりしなさい」
この三人も変わらず仲良くしている。
デルタの言う通り、最近のクエストは少し物足りない。
街の周囲に出現する魔物はだいたい戦ったし、もう慣れてしまった。
よほど油断しない限り負けることはないだろう。
同じことの繰り返しは退屈になる。
何か新しい刺激がほしいとは、思うようになってきた。
ギルドの扉があく。
カランカランとベルの音がなり、受付嬢が先に反応する。
「お邪魔するわ」
「いらっしゃいま――せ?」
彼女の表情が変わった。
にこやかだったのに、一瞬にして訝しむように。
俺たちは遅れて振り返る。
その時にはもう、ギルド中の人たちが入り口に注目していた。
「おいおい、どういうことだよ」
「なんで……」
「どうして……皇女様がここに?」
「え?」
皇女?
皇女って、あの王族の?
それ以外に何があるんだってツッコミされそうだが。
俺は自分の目を疑ってしまった。
だって、そこに立っていたのは、俺もよく知っている女性だったから。
「また会えたわね。ラスト」
「エリーシュ……皇女……様?」
まったく、冗談だろ?
◇◇◇
デルタがお茶をいれ、コトンとテーブルに置く。
「ほらよ」
「ありがとう」
エリーシュ皇女がそれを飲む。
「美味しいわ。あなたお茶をいれるのが上手なのね」
「まぁな。これで手先は器用なんだぜ」
「へぇ、見えないわね」
「おいデルタ。あまり馴れ馴れしくするんじゃない」
俺はひそひそ声でデルタに注意する。
テーブルを一つ挟んだ距離で座っているんだ。
もちろん彼女にも聞こえている。
「ふふっ、今さら畏まらなくていいわ。私のことは皇女じゃなくて、友人として接してくれると嬉しいわね」
「い、いや……」
無茶言わないでほしい。
皇女様と馴れ馴れしく接していたら、外にいる騎士たちに何をされるか……。
「大丈夫よ。あれはただの護衛、私の命令に従っているだけよ」
「それでも緊張するんですよ……」
あれ?
今、何かおかしかったような……。
気のせいか。
「それで、皇女様がどうしてこの街に? ここは冒険者の街と、呼ばれているのは知っていますよね?」
「あら? 友人を訪ねにきた、というのじゃ不服かしら?」
「不服ではありませんが、不自然です」
「ふふっ、そうね。ただ会いにきたというのは冗談よ。けど、個人的に会いたかったのは本当」
彼女は微笑む。
どうにも読めない。
この人の考えていることがまるでわからない。
本当に不思議な人だ。
「あの後のこと、気にならない?」
「オークションですか?」
「ええ」
「それは……気にはなりますね」
正直かなり気になっている。
俺はシータを救出するため、結構な大立ち回りを演じた。
結果的に救出はできたけど、あの場にいた人には俺の顔を覚えられただろう。
何かしらお咎めがあるんじゃないかと、不安に感じる夜もあった。
「心配しなくても、あなたが捕まるようなことはないわ」
俺の不安を見透かしたように彼女は言う。
「あそこは元々よくない噂が多いオークションだったの。盗品を出品したり、偽物を売り出したり……私があそこにいたのは、真実を確かめるためよ」
「ああ、だから……」
標品を見に来たわけじゃない。
オークションを見に来た。
彼女はそう言っていた。
意味がやっと理解できたよ。
「安心できたかしら?」
「はい。おかげさまで」
「それはよかったわ」
「……まさか、それだけを伝えるために来たわけじゃ……ないですよね?」
俺の問いに、彼女は笑みを浮かべる。
「ええ、今日はあなたにお願いがあって来たの」
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