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1 結婚なんてお断り
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どうして殺されなくちゃいけないんですか!?
自分が斬られたとわかった瞬間に、思い浮かんだのは、そんな言葉でした。
絶対に許さない。
末代まで祟ってやりますから。
薄れゆく意識の中で、そう誓った。
……のに、気が付いた時には私は自分の部屋にいて、ドレッサーの前に座っていました。
鏡の前の私は寝間着姿で、腰まである長い黒髪のところどころが、寝癖で色々な方向に飛び跳ねています。
ダークブラウンの瞳の私の目はとろんとしていて、明らかに寝起きの時の私です。
化粧も全くしていませんし、どういうことなのでしょう。
私は先程までガゼボにいたはずなのですが……。
「セリスティーナ様、どうかなさいましたか?」
隣に立っている侍女に話しかけられたので聞いてみます。
「……あの、聞きたいんだけど、私、ずっと前からここにいたのかしら。それとも、パーティーの日から日付がかなり経っていたりする?」
「……パーティーの日からというのは、どのパーティのことをおっしゃっているのでしょうか」
「私とマゼケキ様の婚約パーティーのことなんだけど」
「……セリスティーナ様の中ではもう、パーティーが終わったことになっているのですか?」
「終わったことになっている、とは?」
驚いて聞き返すと、侍女は私の髪の手入れを始めながら答えます。
「パーティーは今日の晩ですよ。まだ、終わっていません」
「セリスティーナ様も緊張しておられるのですね」
ドレスを手に現れたメイドが微笑みながら言いました。
彼女が持っているドレスは、パーティーの日に着ていたドレスと同じものです。
ペリアド王国の第二王子である、マゼケキ様の婚約者としてやって来た私は、ロイロン王国の第二王女です。
あと約50日後に結婚式を挙げるため、少し前からこの城にやって来ていて、結婚前だというのに彼の仕事を任されていました。
仕事はそう難しいものではなかったけれど、ペリアド王国のことを詳しく知っていなければならないため、しきたりなどは調べていました。
私の国でもそうですが、パーティードレスは同じものを二度も着ないことがルールだと知っています。
ということは、おかしい。
やっぱり、おかしいです。
あの時、私は後ろから誰かに斬りつけられたはずです。
それなのに、どうしてここにいるのでしょうか。
レモンイエローの爽やかなドレスは、マゼケキ様から贈られたものです。
もしかしたら、これは暗闇でも目立つようにしていたのかもしれません。
ドレスをよく見てみると、散りばめられた宝石はキラキラと光に反射していますし、ここにいると言わなくてもわかるようなものになっています。
「口うるさいから、その口を封じてしまえってことかしら」
ぼんやりとしか見えませんでしたが、あの時、フェイアンナ様は笑っていました。
私が死んだら、邪魔者がいなくなるということでしょうね。
いくら政略的とはいえ、他国からやって来た王女を手に掛けるだなんて信じられません。
「あの、セリスティーナ様、嫌な夢でも見たのですか?」
「大丈夫よ。気にしないで。それから、今日は普通のお姫様がしないことをするつもりだから、それも気にしないでね」
「普通のお姫様がしないこと、ですか」
侍女とメイドが不安そうに顔を見合わました。
「あなた達には迷惑をかけないから安心してちょうだい」
微笑んでから、今日のパーティーのために、いえ、私を殺害するために用意されたドレスを着ることにしました。
まさか、こんな馬鹿なことを思いつくような人達だと思っていなかった私にも落ち度はあります。
時間が巻き戻っている理由はわかりませんが、彼らが罪を犯す必要がない状態にして差し上げましょう。
あんな人と結婚なんてお断りですからね。
でも、痛い目には遭ってもらわなければなりません。
人としてやっていはいけないことをしたんです。
私は私なりに、人として許される範囲であなた方にお返ししようと思います。
まずは、婚約破棄からですかね。
あなたがしたくてもできなかったことをして差し上げましょう。
そして、その後、ペリアド王国がどうなるのか、それはもう楽しみになってきましたね。
自分が斬られたとわかった瞬間に、思い浮かんだのは、そんな言葉でした。
絶対に許さない。
末代まで祟ってやりますから。
薄れゆく意識の中で、そう誓った。
……のに、気が付いた時には私は自分の部屋にいて、ドレッサーの前に座っていました。
鏡の前の私は寝間着姿で、腰まである長い黒髪のところどころが、寝癖で色々な方向に飛び跳ねています。
ダークブラウンの瞳の私の目はとろんとしていて、明らかに寝起きの時の私です。
化粧も全くしていませんし、どういうことなのでしょう。
私は先程までガゼボにいたはずなのですが……。
「セリスティーナ様、どうかなさいましたか?」
隣に立っている侍女に話しかけられたので聞いてみます。
「……あの、聞きたいんだけど、私、ずっと前からここにいたのかしら。それとも、パーティーの日から日付がかなり経っていたりする?」
「……パーティーの日からというのは、どのパーティのことをおっしゃっているのでしょうか」
「私とマゼケキ様の婚約パーティーのことなんだけど」
「……セリスティーナ様の中ではもう、パーティーが終わったことになっているのですか?」
「終わったことになっている、とは?」
驚いて聞き返すと、侍女は私の髪の手入れを始めながら答えます。
「パーティーは今日の晩ですよ。まだ、終わっていません」
「セリスティーナ様も緊張しておられるのですね」
ドレスを手に現れたメイドが微笑みながら言いました。
彼女が持っているドレスは、パーティーの日に着ていたドレスと同じものです。
ペリアド王国の第二王子である、マゼケキ様の婚約者としてやって来た私は、ロイロン王国の第二王女です。
あと約50日後に結婚式を挙げるため、少し前からこの城にやって来ていて、結婚前だというのに彼の仕事を任されていました。
仕事はそう難しいものではなかったけれど、ペリアド王国のことを詳しく知っていなければならないため、しきたりなどは調べていました。
私の国でもそうですが、パーティードレスは同じものを二度も着ないことがルールだと知っています。
ということは、おかしい。
やっぱり、おかしいです。
あの時、私は後ろから誰かに斬りつけられたはずです。
それなのに、どうしてここにいるのでしょうか。
レモンイエローの爽やかなドレスは、マゼケキ様から贈られたものです。
もしかしたら、これは暗闇でも目立つようにしていたのかもしれません。
ドレスをよく見てみると、散りばめられた宝石はキラキラと光に反射していますし、ここにいると言わなくてもわかるようなものになっています。
「口うるさいから、その口を封じてしまえってことかしら」
ぼんやりとしか見えませんでしたが、あの時、フェイアンナ様は笑っていました。
私が死んだら、邪魔者がいなくなるということでしょうね。
いくら政略的とはいえ、他国からやって来た王女を手に掛けるだなんて信じられません。
「あの、セリスティーナ様、嫌な夢でも見たのですか?」
「大丈夫よ。気にしないで。それから、今日は普通のお姫様がしないことをするつもりだから、それも気にしないでね」
「普通のお姫様がしないこと、ですか」
侍女とメイドが不安そうに顔を見合わました。
「あなた達には迷惑をかけないから安心してちょうだい」
微笑んでから、今日のパーティーのために、いえ、私を殺害するために用意されたドレスを着ることにしました。
まさか、こんな馬鹿なことを思いつくような人達だと思っていなかった私にも落ち度はあります。
時間が巻き戻っている理由はわかりませんが、彼らが罪を犯す必要がない状態にして差し上げましょう。
あんな人と結婚なんてお断りですからね。
でも、痛い目には遭ってもらわなければなりません。
人としてやっていはいけないことをしたんです。
私は私なりに、人として許される範囲であなた方にお返ししようと思います。
まずは、婚約破棄からですかね。
あなたがしたくてもできなかったことをして差し上げましょう。
そして、その後、ペリアド王国がどうなるのか、それはもう楽しみになってきましたね。
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