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9 どうしますと言われても
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その後はこれ以上抵抗しても自分の分が悪くなるだけだと感じたのか、レオン殿下は嫌がるラブを連れて足早に去っていった。二人とも食事をしていないと思うし、あとでお腹が減るんじゃないだろうか。……まあ、私が気にしてあげることもでないか。別に食堂じゃなくても食べるところはあるしね。
「僕が割って入らなくても良かったよな。余計なことをしてしまってごめん」
ディーク様が話しかけてきたので、立ち上がってお礼を言う。
「とんでもないことでございます。助けていただき本当にありがとうございます」
「助けてなんていないよ。君一人でも何とかできただろう?」
「いいえ。ディーク様が関与してくださって助かりましたわ。何かあった時に良い証人になってくださるのでしょう?」
にこりと微笑むと、ディーク様は苦笑する。
「僕をこき使う気?」
「こき使うだなんて! そこまでは望んでおりませんわ。ですが、国王陛下から連絡があった時に証言をお願いしたいだけです。それから……」
「まだあるの?」
「将来、妹になるかもしれませんのよ? 未来への投資だと思って助けていただけると幸いなのですが」
「どうなるかわからないけどね。これでも僕は入り婿にきてほしいって色々なところから言われているんだよ」
「入り婿の場合は妻を選べませんが、ノルン公爵家でしたらディーク様の想い人ごと受け入れられますわよ」
ディーク様が攻略対象者かどうかというのは、ラブの様子からして半々といったところだ。攻略対象者ならラブともっと仲良くなっていたりするものだと思うんだけど、ヒロインが嫌われたりすることってあるのかしら。やっぱり、ゲームに詳しくないと不便だわ。
「残念ながら、今のところ僕に想い人はいないんだよ。ところで、ノルン公爵から君は昔、悪女に興味があったと聞いているんだけど、もしかして今もそうだったりする?」
怪訝そうな表情のディーク様を見て、何と答えようか迷った。
悪女に仕立て上げられるくらいなら自分から悪女になったほうが良いと思いまして……という答えは有りなのだろうか。それにしても、お父様もあんな昔のことをよく覚えていたものね。
「興味があったことは間違いありませんわ。ですが、今となってはわざわざ悪女になろうとは思っていません。ただ、私の対応を悪女だと思う人はいるかもしれませんけれど」
「先ほどのレオン殿下たちのように、だね?」
「そういうことです。嘘をつかれて腹を立てて言い返したことも、レオン殿下たちにしてみれば性格の悪い女性に映るかもしれません」
「将来、こうなることを予知していたみたいだな」
ディーク様は苦笑して続ける。
「レオン殿下のことだ。自分の都合の良いように僕のことも話すだろうから、父上からも連絡してもらうよ」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「別に。だって、僕たちは将来兄妹になるかもしれないんだろ? なら、これくらいはしてもおかしくないと思っている」
「レオン殿下はそう思わないかもしれません。殿下のことですから、私とディーク様が先に浮気をしたとか言い出しそうです」
「そう言う可能性は高いけど、僕たちの関係性は陛下だけでなく多くの人が知っているんだ。僕と君が仲良く話をしていたと言われても陛下にしてみればそれがどうした、ってところだと思う」
「そうですわね。陛下はレオン殿下とは違いますものね」
頷いた時、バタバタと大きな足音が近づいてくることに気がついた。やって来たのはラブで、私に近づいてくると小声で話しかけてくる。
「あなたはディーク様ルートを選んだのね。実は元の世界での私の本命がディーク様だったって言ったらどうします?」
「どうしますと言われても」
「レオン殿下が駄目になったら、私はディーク様ルートを選ぶから!」
ラブは言いたいことを言い終えると、私の返事を待たずに駆け出していった。
「今のは何だったんだ?」
「聞こえましたか?」
「はっきりとは無理だった。ディーク様ルートがどうとかなんとか言ってたけど、どうして僕の名前が出てきたのかな」
「クブスさんのお話は私にとって、ディーク様の中でのクブスさんへの好感度が下がるとありがたいというお話しですわ」
「大丈夫だよ。ああいう子苦手なんだ」
ディーク様が躊躇うことなく言ってくれたので、ディーク様がラブ側になり、わけのわからない理由で私が処刑されるという結末は回避できそうなので安堵したのだった。
「僕が割って入らなくても良かったよな。余計なことをしてしまってごめん」
ディーク様が話しかけてきたので、立ち上がってお礼を言う。
「とんでもないことでございます。助けていただき本当にありがとうございます」
「助けてなんていないよ。君一人でも何とかできただろう?」
「いいえ。ディーク様が関与してくださって助かりましたわ。何かあった時に良い証人になってくださるのでしょう?」
にこりと微笑むと、ディーク様は苦笑する。
「僕をこき使う気?」
「こき使うだなんて! そこまでは望んでおりませんわ。ですが、国王陛下から連絡があった時に証言をお願いしたいだけです。それから……」
「まだあるの?」
「将来、妹になるかもしれませんのよ? 未来への投資だと思って助けていただけると幸いなのですが」
「どうなるかわからないけどね。これでも僕は入り婿にきてほしいって色々なところから言われているんだよ」
「入り婿の場合は妻を選べませんが、ノルン公爵家でしたらディーク様の想い人ごと受け入れられますわよ」
ディーク様が攻略対象者かどうかというのは、ラブの様子からして半々といったところだ。攻略対象者ならラブともっと仲良くなっていたりするものだと思うんだけど、ヒロインが嫌われたりすることってあるのかしら。やっぱり、ゲームに詳しくないと不便だわ。
「残念ながら、今のところ僕に想い人はいないんだよ。ところで、ノルン公爵から君は昔、悪女に興味があったと聞いているんだけど、もしかして今もそうだったりする?」
怪訝そうな表情のディーク様を見て、何と答えようか迷った。
悪女に仕立て上げられるくらいなら自分から悪女になったほうが良いと思いまして……という答えは有りなのだろうか。それにしても、お父様もあんな昔のことをよく覚えていたものね。
「興味があったことは間違いありませんわ。ですが、今となってはわざわざ悪女になろうとは思っていません。ただ、私の対応を悪女だと思う人はいるかもしれませんけれど」
「先ほどのレオン殿下たちのように、だね?」
「そういうことです。嘘をつかれて腹を立てて言い返したことも、レオン殿下たちにしてみれば性格の悪い女性に映るかもしれません」
「将来、こうなることを予知していたみたいだな」
ディーク様は苦笑して続ける。
「レオン殿下のことだ。自分の都合の良いように僕のことも話すだろうから、父上からも連絡してもらうよ」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「別に。だって、僕たちは将来兄妹になるかもしれないんだろ? なら、これくらいはしてもおかしくないと思っている」
「レオン殿下はそう思わないかもしれません。殿下のことですから、私とディーク様が先に浮気をしたとか言い出しそうです」
「そう言う可能性は高いけど、僕たちの関係性は陛下だけでなく多くの人が知っているんだ。僕と君が仲良く話をしていたと言われても陛下にしてみればそれがどうした、ってところだと思う」
「そうですわね。陛下はレオン殿下とは違いますものね」
頷いた時、バタバタと大きな足音が近づいてくることに気がついた。やって来たのはラブで、私に近づいてくると小声で話しかけてくる。
「あなたはディーク様ルートを選んだのね。実は元の世界での私の本命がディーク様だったって言ったらどうします?」
「どうしますと言われても」
「レオン殿下が駄目になったら、私はディーク様ルートを選ぶから!」
ラブは言いたいことを言い終えると、私の返事を待たずに駆け出していった。
「今のは何だったんだ?」
「聞こえましたか?」
「はっきりとは無理だった。ディーク様ルートがどうとかなんとか言ってたけど、どうして僕の名前が出てきたのかな」
「クブスさんのお話は私にとって、ディーク様の中でのクブスさんへの好感度が下がるとありがたいというお話しですわ」
「大丈夫だよ。ああいう子苦手なんだ」
ディーク様が躊躇うことなく言ってくれたので、ディーク様がラブ側になり、わけのわからない理由で私が処刑されるという結末は回避できそうなので安堵したのだった。
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