この悪女に溺愛は不要です!

風見ゆうみ

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10  事実無根でございます

 私が家に帰った段階では王家からの連絡は入っていなかったので、私からお父様に今日の出来事を伝えることにした。お父様は仕事中ではあったけれど「話があるのですが」と言っただけで、仕事の手を止めて話を聞いてくれることになった。お父様が私に甘いのは相変わらずだ。べリアーナが悪役令嬢になってしまったのは、我儘を許してしまうお父様の甘さもあるのかもしれない。
 私がお父様に学園での出来事を話している間に、レオン殿下も今日の出来事を自分の都合の良いように陛下に話をしたようで、王家から私からも話を聞きたいと連絡があった。可能ならば明日にでも登城するようにとのことだったので、自分の名誉にも関わる問題でもあるため、次の日、学園を休んで陛下の元に向かった。
 私が向かうことは昨日の晩に伝えていたからか、お父様と共に登城すると、すんなり謁見の間まで案内してもらえた。足を踏み入れてすぐに立ち尽くしているレオン殿下の姿が見えた。壇上の上には玉座があり、左右に王妃陛下やレオン殿下が座るであろう椅子が置かれているのだが、なぜかレオン殿下は壇下に立っているし、いつもならば、左右の壁際に立っている兵士の姿もない。

 これは、レオン殿下が叱られる展開だろうか。

「ごきげんよう、レオン殿下」
「どうして僕がここにいなくちゃならないんだ」

 挨拶をすると、レオン殿下はいきなり文句を言ってきた。私に聞かれても知るわけがない。お父様が答えようとしたのを制して私が答える。

「私に言われましても困ります。ところでどうしてレオン殿下がここにいらっしゃるんですか?」
「父上の側近からここにいるように言われたんだ」
「では、陛下の側近の方にここにいなければ理由を確認されてはいかがでしょうか」
「聞いたよ! 聞いたけれど、ここで待っていればわかるって言われたんだ」
「なら待っていれば良いのではないでしょうか」

 私の返答が気に入らなかったのか、レオン殿下は私を睨みつけると何も言わずに背を向けた。私とお父様は無言で顔を見合わせtあと、レオン殿下から少し離れた場所に立って待つことにした。しばらくして、陛下が王妃陛下と共に壇上に現れて席に着いた。私とお父様が陛下への挨拶を終えると、早速、陛下は口を開く。

「トリュー公爵家の次男のディークとべリアーナが浮気しているとレオンは言っているのだが、本当の話か?」
「仲良くはさせていただいていますが、浮気などはしておりません」
「親し気に話をしているじゃないか! ラブがべリアーナはディークに恋をしていると言っていたぞ!」

 レオン殿下が私を指さして叫ぶと、王妃陛下は額を手で押さえ、陛下は眉間にしわを寄せて尋ねる。

「レオン、お前が言っているラブという人物はお前がよく話す女性のことか」
「は、はい。とても可愛らしい女性です。僕が昔から可愛い女性が好きなことを、父上も母上も知っているでしょう?」
「それがどうした」
「え?」

 陛下に冷たく聞き返されたレオン殿下はぽかんとした顔で大きく口を開けた。

「ノルン公爵家には跡取りがいないから養子を探している。その候補の一人にディークがいることは皆が知っていることだ」
「えっ」
「レオン、あなたにもちゃんと伝えているはずよ」

 王妃陛下からも呆れた顔で言われたレオン殿下は俯いて呟く。

「ラブはそんなことを気にしなくて良いって言ってたんだ」

 ラブは自分がこの世界のヒロインだから、自分の望むとおりの世界になると思い込んでいる。だから、レオン殿下にそんなことを言ったんだろう。だけど残念でした。それってヒロインの性格が良いから上手くいく設定なだけで、ヒロインの性格が悪ければどうなるかはわからない。しかも、悪役令嬢である私がラブをいじめないのだから、ラブの望む世界になるわけがない。そのことをラブが気づかない限り、レオン殿下はこのままラブと一緒に堕ちることになるでしょうね。

「べリアーナ、お前は浮気などしていないのだな?」
「レオン殿下への歩み寄りが足りなかったと言われれば、反省しなければならない部分はあるかと思います。ですが、浮気につきましては事実無根でございます」

 国王陛下に尋ねられた私は、そうはっきりと答えた。

「そうか」

 国王陛下は大きなため息を吐くと、レオン殿下に話しかける。

「お前はどうしてそんなくだらない嘘をつくようになったのだ? そんなにも私の子供でいたくないということか」
「ち、父上……、誤解、誤解なんです」

 国王陛下の怒気に怯えたレオン殿下は、泣きながらその場に崩れ落ちたのだった。
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