その発言、後悔しないで下さいね?

風見ゆうみ

文字の大きさ
30 / 43

27 厄介ですね

しおりを挟む
 昨日の晩、旦那様のお茶を用意したのは誰かを確認する為に調理場に行くと、料理人達とメイドが二人いたので、その内のメイドの一人に声を掛けてみます。

「昨日、旦那様のお茶を用意されたのは誰ですか?」
「わ、私です!」

 泣きそうな顔になりながら、声を掛けた方ではないメイドが手を挙げて続けます。

「ですが、毒見もすませてもらってから持っていったんです! もしかして、旦那様が倒れられたのは、やはり、お茶の中に毒が入っていたからなのでしょうか!?」

 メイド達にはまだ詳しい話はしていませんが、旦那様が毒をもられたという事は、屋敷中に広まってしまったようです。
 これに関しては、隠す必要もないというか、隠しようがありませんので、しょうがないとは思います。

「では、あなたにお聞きしたいのですが、自分で旦那様の執務室まで運んだのですか?」
「いいえ。途中の廊下でラムダ様と出会いまして、ラムダ様が持っていって下さると申し出て下さったので、そのままお願いしてしまいました。やはり、旦那様があんな事になってしまったのは、私のせいなのでしょうか!?」
「それを決めるのは旦那様ですが、あなたもまさか、こんな事にはなるとは思ってもいなかったのでしょう?」
「もちろんです! 今までに、お茶を運ぶのをお願いする事は何度かありましたし、その事で旦那様からお叱りを受けた事はなかったんです!」
「そうですか…」
「ただ、何かハプニングがあった様です。ラムダ様はすぐに調理場にいらっしゃいましたから…」

 ハプニングがどんなものだったかは気になりますが、彼女は知らないようです。
 何にしても、ラムダ様が持ってきたお茶だったから、旦那様も信じて疑わずに飲んでしまわれたのですね。
 まさか、側近が持ってきたお茶に毒が含まれてるとは思わないでしょうし。
 
「ラムダ様からお話を聞くしかなさそうですね…」
 
 小さくため息を吐いた後、これ以上詳しく聞ける事もないと思い、旦那様から頼まれていた話をメイドにお願いします。

「あの、今晩から、旦那様と寝室を一緒にしますので、お部屋の準備をしていただけますか?」
「は…はい?」

 私の言葉が信じられないのか、その場にいるメイド二人共が目を大きく見開いて、私に聞き返してきました。

 そんなに驚かれる事なのでしょうか。

「ですから、奥様と旦那様が今日から寝室を共にされるので、準備をお願いしたいのですが、すぐには難しい事でしょうか?」

 ジャスミンが私の代わりに言ってくれますと、メイド達は無言で何度も首を横に振ったあと、一人が大きな声で言います。

「いいえ! 今すぐに準備に取り掛かります! では、失礼いたします!」
「お願いしますね」
「あの、奥様。私はどうすればよろしいでしょうか?」

 問題のメイドが困った顔で聞いてくるので、私自身は彼女に罰を与えるつもりはありませんので、苦笑して答えます。

「とりあえずは、彼女と一緒に準備をしてもらえますか?」
「承知致しました!」

 彼女はホッとした表情で返事をし、一礼してから調理場を去っていきました。

「悪い子ではなさそうですし、旦那様には処罰をするなら軽いものにしてあげてほしいとお願いしましょうかね」
「判断するには、ラムダ様の言い分を聞いてからの方がよろしいかとは思いますが」

 ジャスミンに言われ、それもそうかもしれないと納得して、まずは旦那様にラムダ様のお話を聞いてみたいと伝えに行く事にしました。

 他の側近の方に聞いてみますと、ラムダ様は謹慎中で、謹慎が解ければ、出勤は明後日になるとの事でしたので、旦那様の部屋に戻り、旦那様に尋ねてみます。

「謹慎中だという事ですが、ラムダ様をお呼びしてお話を聞いた方が良いでしょうか」
「そうだな。ラムダには、こんな状況だから、家で大人しくしているように伝えてある。それから、ローラには屋敷内でも部屋から出た時は監視をつける事にした」
「その方が良いでしょうね。何をしようとなさるかわかりませんし。自分は何をやっても大丈夫だと勘違いしておられる可能性もありますから」
「可能性というよりかは、すでにそう思っているだろうな」
「厄介ですね」

 呟いてから、思い付いた事を口にします。

「旦那様、ローラ様にもお話を聞きますよね? 今回の件に確実に関わっていらっしゃるでしょうから」
「そうだな。だが、まずは、ラムダに話を聞いてからにする。ラムダがローラと繋がっているのか、そうでないかを確認したい」
「…そう言われてみればそうですね」

 旦那様がラムダ様を屋敷に呼ぶように手配をして下さったので、彼が来るまでの間は、旦那様も体が楽になられたという事ですので、旦那様のお部屋の窓際に、私の部屋から安楽椅子を持ってきて、そこに座って、のんびり本を読んでおりました。

 すると、いつも以上に顔色の悪いラムダ様が部屋に訪ねてこられました。

「旦那様…、良かった」

 部屋に入るのを許可すると、ラムダ様は入ってくるなり、旦那様の顔を見て、ホッとした様な顔をされました。
 ラムダ様は旦那様が何者かに毒をもられたと知って、昨日はとても慌てていらっしゃいました。
 あの様子では毒を入れた様には思えませんでした。
 もちろん、演技の上手い方なのかもしれませんので、何とも言えないところですが…。

「ラムダ、お前に聞きたい事がある」
「何なりと」

 ベッド脇に立ったラムダ様に旦那様が尋ねます。

「昨日、いや、正確には一昨日の晩だが、メイドからお茶の入ったポットを受け取ったか?」
「はい。昔からのメイドでしたし、立ち話をする事もありましたので、声を掛けたら、旦那様の所へお茶をお持ちするというので、旦那様の所に戻るから、僕が持って行こうと言って、彼女からワゴンごとポットを受け取りました」
「その後はどうした?」
「執務室に向かっている途中で、全く同じ見た目のポットを持っているローラ様に出会いました」
「それで?」
「ローラ様にどこへ持っていくのかと尋ねられた為、旦那様の所へ持っていくと答えました。すると、夜遅くまで仕事をしていると体に良くないだろうし、せめてよく眠れる様にと、茶の中に何かを入れようとしてきました」

 ラムダ様は眉根を寄せて続けます。

「何かわかりませんでしたので止めましたが、ローラ様が持っていた小さな紙に包まれた粉が空中に舞った為、ポットの中に入っていてはいけませんので、お茶をいれなおしてもらう事にして、調理場に戻りました。お茶をいれなおして、毒見をしてもらっている間にメイドに話しかけてしまいましたので、少しワゴンから目をはなしてしまいました」
「その時に、ローラがポットを入れ替えた可能性があるという事だな?」
「そうだと思います。僕が悪いのは確かです! ただ、僕は毒を入れるような真似はしません! それだけは信じてください!」

 ラムダ様は涙目になって、旦那様に訴えます。

「僕が一因である事は承知しています! でも絶対に、僕は毒なんか入れていません!」
「あの、ラムダ様、お話の途中に申し訳ございませんが、お聞きしたい事があるのですが」

 私が割って入ると、気分を害した様子もなく、ラムダ様は私の方を見て聞いてこられます。

「どのような事でしょうか」
「昨日、執務室に犬がいましたよね? 苦しそうにしていたと思います。それなのに、犬を助けなかったのはなぜです?」
「……それは、奥様の反応を見たかったからです」

 予想もしていなかった答えが返ってきて、私は思わず眉をひそめたのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】王妃はもうここにいられません

なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」  長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。  だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。  私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。  だからずっと、支えてきたのだ。  貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……  もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。 「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。  胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。  周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。  自らの前世と、感覚を。 「うそでしょ…………」  取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。  ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。 「むしろ、廃妃にしてください!」  長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………    ◇◇◇  強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。  ぜひ読んでくださると嬉しいです!

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように

ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』  運命の日。  ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。 (私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)  今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。  ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。  もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。  そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。  ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。  ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。  でも、帰ってきたのは護衛のみ。  その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。 《登場人物》  ☆ルキナ(16) 公爵令嬢。  ☆ジークレイン(24) ルキナの兄。  ☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。  ★ブリトニー(18) パン屋の娘。

処理中です...