25 / 29
22 怪しい気はするわね
しおりを挟む
暗くなる前に急いで、見れる範囲は確認したけれど、結界が他に破られていそうな場所はなかった。
念の為、ドーム状の結界を張ったから、しばらくは大丈夫だと思われる。
でも、おかしい。
どういう事なの?
どうして、キュララが結界を張ってから、まだそんなに日にちが経っていないのに結界が破られてるの?
今まで、怪しいところは何個もあったけれど、あんな風に穴が開いた様に、はっきりと見える事なんてなかった。
もちろん、北の辺境の事もあるから、私が見た限りとしか言えないけど。
魔物を見たのは初めてではないけれど、私を見る目に憎しみの様なものがこめられていた気がして、とても怖かった。
今日は回復魔法をかけるだけだったので、泊まる事はせずに、魔道具でスコッチ邸に戻り、リュークと一緒に当主様に相談した。
「結界を張ったばかりなのに、弱まっている所があったという事か?」
「もしかしたら、ムラがあるのかもしれません。均等に張ったつもりが、そうでもないのかも…。何かに気を取られていたりして、集中力が欠けた時に、そういう事が起こる可能性はありますけど…」
「という事は、キュララ様の張った結界も、その可能性があるという訳だな?」
「はい。もしかすると、疲れが出たのかもしれません」
私にとって普通の事でも、今までサボっていたキュララ達にはハードなのかもしれない。
やっぱり、私が見回った方がいいの?
聖女に戻りたくはないけど、そんな個人的な理由で多くの人を危険に晒すわけにもいかない。
だから、元聖女のままで、出来るだけの事をしようかしら。
「実はミーファに話したい事がある」
当主様が暗い表情で続ける。
「結界が弱まるペースが速くなっているんじゃないかという報告が最近は上がっているらしい。そして、その報告があがっているのは、全て、キュララ様かトリス様が結界を張られた所だ」
「フランソワとエルセラの所では報告はないんですね?」
「今のところはないらしい。もちろん、ミーファが張った所もだ」
自分の張った所が大丈夫だと聞いて、不謹慎かもしれないけれど、ホッと胸を撫で下ろす。
「こんな事を言うのもなんですが、ミーファの張った結界が駄目なら、どの聖女様でも駄目でしょうね」
リュークが当主様に言ってくれた言葉が嬉しくて、ついつい笑みがこぼれる。
「ありがとう、リューク」
「本当の事だから」
「でも嬉しい」
にこりと笑うと、リュークも微笑んでくれた。
当主様の咳払いで慌てて我に返ってから、本題に戻す。
「原因はわかっているんでしょうか?」
「いや、やはり、結界が私達には見えない分、調査がしにくい」
「あの、その時の聖女達の様子はわからないでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「聖女達が結界を張っている時の様子が知りたいんです。侍女にも聞いてみますが、結界を張っている間は、無防備になりますので、聖女には護衛を付けてもらっているはずです。キュララとトリンがどんな様子で結界を張っていたかを調べてもらう事は出来ませんか?」
「…わかった。ミーファは聖女様の侍女達から話を聞いてもらえるか?」
「わかりました」
国王陛下と王太子殿下が大人しくなったから、楽になると思ったのに、今度はキュララ達に悩まされる事になるなんて…。
頭が痛くなりそうだったけど、気持ちを切り替えて、侍女に連絡をとる事にした。
侍女から返ってきた返事は、やはり、私が予想していた通り、キュララとトリンは結界を張る際に、誰かと話をしていたり、驚く事に本を読みながらだったり、結界に集中しているものではなかった様だった。
二人は私に比べて、ドーム状の結界を張るにしても、藩医がとても狭い。
だから、ドーム状なら私が一回で張れる地域でも、何十回はしなければならないだろうし、広い領土なら、百箇所以上は場所を変えて結界を張らなければいけない。
これに関しては歴代の聖女ではありえないくらいに酷い。
私の様に一回で張る人間も少ないみたいだけど、彼女達の様に回数が多いのも普通ではない。
わざと手を抜いているのではないか、と侍女達は思っている様だった。
あの一件で、国王陛下の退位が決定し、王太子殿下の王位継承権も剥奪された。
キュララとトリンにとっては、王妃になる夢が潰えてしまった。
国王陛下になる予定のリーフ殿下は、まだ他国から戻って来ていないし、アプローチしようにも出来ないし、何より、彼女達は、リーフ殿下を今まで歯牙にもかけていなかったから、自分達がどんなに頑張っても、彼に選んでもらえない事は、さすがに理解できているみたい。
だから、ヤケクソになってしまっている?
もしくは、何か裏があったりするのかしら。
モーリス殿下は自分の王位継承権が剥奪されたと聞いた時は半狂乱になって暴れたと聞いたけど、それと関係したりする?
うーん。
それと結びつけるのは難しい?
聖女達からの返事を当主様に伝える前に、部屋に来てくれたリュークに話すと、彼は首を傾げながら言う。
「そういえば、聖女様達は、もう、今までのように、モーリス殿下に付きまとったりしてないのか?」
「そんな感じみたいだけど、侍女達が言うには、キュララとトリンは二人がモーリス殿下だけじゃなく、国王陛下とも会ってるんじゃないかと書いていたわ。ちょっと、怪しい気はするわね」
「…どういう事だ? それに、そういう事を書くと、検閲に引っかかるんじゃ?」
「私と侍女とのやり取りに関しては、宰相閣下が検閲して下さるという事になったのよ。さすがに、中身を読まない訳にはいかないらしいけど。それだけでも特別待遇だしね」
内情を知らない人間に確認されるよりも、信用している人に確認してもらうほうが安心な気がする。
手紙を読まれないのが、一番だろうけれど、そういう訳にもいかないだろうから。
「なら良いけど、聖女様達がなぜ、手を抜いているのか、その理由を調べないといけないな」
「そうね」
リュークと顔を見合わせてから頷いた。
念の為、ドーム状の結界を張ったから、しばらくは大丈夫だと思われる。
でも、おかしい。
どういう事なの?
どうして、キュララが結界を張ってから、まだそんなに日にちが経っていないのに結界が破られてるの?
今まで、怪しいところは何個もあったけれど、あんな風に穴が開いた様に、はっきりと見える事なんてなかった。
もちろん、北の辺境の事もあるから、私が見た限りとしか言えないけど。
魔物を見たのは初めてではないけれど、私を見る目に憎しみの様なものがこめられていた気がして、とても怖かった。
今日は回復魔法をかけるだけだったので、泊まる事はせずに、魔道具でスコッチ邸に戻り、リュークと一緒に当主様に相談した。
「結界を張ったばかりなのに、弱まっている所があったという事か?」
「もしかしたら、ムラがあるのかもしれません。均等に張ったつもりが、そうでもないのかも…。何かに気を取られていたりして、集中力が欠けた時に、そういう事が起こる可能性はありますけど…」
「という事は、キュララ様の張った結界も、その可能性があるという訳だな?」
「はい。もしかすると、疲れが出たのかもしれません」
私にとって普通の事でも、今までサボっていたキュララ達にはハードなのかもしれない。
やっぱり、私が見回った方がいいの?
聖女に戻りたくはないけど、そんな個人的な理由で多くの人を危険に晒すわけにもいかない。
だから、元聖女のままで、出来るだけの事をしようかしら。
「実はミーファに話したい事がある」
当主様が暗い表情で続ける。
「結界が弱まるペースが速くなっているんじゃないかという報告が最近は上がっているらしい。そして、その報告があがっているのは、全て、キュララ様かトリス様が結界を張られた所だ」
「フランソワとエルセラの所では報告はないんですね?」
「今のところはないらしい。もちろん、ミーファが張った所もだ」
自分の張った所が大丈夫だと聞いて、不謹慎かもしれないけれど、ホッと胸を撫で下ろす。
「こんな事を言うのもなんですが、ミーファの張った結界が駄目なら、どの聖女様でも駄目でしょうね」
リュークが当主様に言ってくれた言葉が嬉しくて、ついつい笑みがこぼれる。
「ありがとう、リューク」
「本当の事だから」
「でも嬉しい」
にこりと笑うと、リュークも微笑んでくれた。
当主様の咳払いで慌てて我に返ってから、本題に戻す。
「原因はわかっているんでしょうか?」
「いや、やはり、結界が私達には見えない分、調査がしにくい」
「あの、その時の聖女達の様子はわからないでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「聖女達が結界を張っている時の様子が知りたいんです。侍女にも聞いてみますが、結界を張っている間は、無防備になりますので、聖女には護衛を付けてもらっているはずです。キュララとトリンがどんな様子で結界を張っていたかを調べてもらう事は出来ませんか?」
「…わかった。ミーファは聖女様の侍女達から話を聞いてもらえるか?」
「わかりました」
国王陛下と王太子殿下が大人しくなったから、楽になると思ったのに、今度はキュララ達に悩まされる事になるなんて…。
頭が痛くなりそうだったけど、気持ちを切り替えて、侍女に連絡をとる事にした。
侍女から返ってきた返事は、やはり、私が予想していた通り、キュララとトリンは結界を張る際に、誰かと話をしていたり、驚く事に本を読みながらだったり、結界に集中しているものではなかった様だった。
二人は私に比べて、ドーム状の結界を張るにしても、藩医がとても狭い。
だから、ドーム状なら私が一回で張れる地域でも、何十回はしなければならないだろうし、広い領土なら、百箇所以上は場所を変えて結界を張らなければいけない。
これに関しては歴代の聖女ではありえないくらいに酷い。
私の様に一回で張る人間も少ないみたいだけど、彼女達の様に回数が多いのも普通ではない。
わざと手を抜いているのではないか、と侍女達は思っている様だった。
あの一件で、国王陛下の退位が決定し、王太子殿下の王位継承権も剥奪された。
キュララとトリンにとっては、王妃になる夢が潰えてしまった。
国王陛下になる予定のリーフ殿下は、まだ他国から戻って来ていないし、アプローチしようにも出来ないし、何より、彼女達は、リーフ殿下を今まで歯牙にもかけていなかったから、自分達がどんなに頑張っても、彼に選んでもらえない事は、さすがに理解できているみたい。
だから、ヤケクソになってしまっている?
もしくは、何か裏があったりするのかしら。
モーリス殿下は自分の王位継承権が剥奪されたと聞いた時は半狂乱になって暴れたと聞いたけど、それと関係したりする?
うーん。
それと結びつけるのは難しい?
聖女達からの返事を当主様に伝える前に、部屋に来てくれたリュークに話すと、彼は首を傾げながら言う。
「そういえば、聖女様達は、もう、今までのように、モーリス殿下に付きまとったりしてないのか?」
「そんな感じみたいだけど、侍女達が言うには、キュララとトリンは二人がモーリス殿下だけじゃなく、国王陛下とも会ってるんじゃないかと書いていたわ。ちょっと、怪しい気はするわね」
「…どういう事だ? それに、そういう事を書くと、検閲に引っかかるんじゃ?」
「私と侍女とのやり取りに関しては、宰相閣下が検閲して下さるという事になったのよ。さすがに、中身を読まない訳にはいかないらしいけど。それだけでも特別待遇だしね」
内情を知らない人間に確認されるよりも、信用している人に確認してもらうほうが安心な気がする。
手紙を読まれないのが、一番だろうけれど、そういう訳にもいかないだろうから。
「なら良いけど、聖女様達がなぜ、手を抜いているのか、その理由を調べないといけないな」
「そうね」
リュークと顔を見合わせてから頷いた。
61
あなたにおすすめの小説
王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。
しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。
相手は10歳年上の公爵ユーグンド。
昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。
しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。
それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。
実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。
国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。
無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。
彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。
――その役割が、突然奪われるまでは。
公の場で告げられた一方的な婚約破棄。
理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。
ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。
だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。
些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。
それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。
一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。
求められたのは、身分でも立場でもない。
彼女自身の能力だった。
婚約破棄から始まる、
静かで冷静な逆転劇。
王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、
やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。
-
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
侍女から第2夫人、そして……
しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。
翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。
ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。
一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。
正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。
セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。
それでもフランソアは
“僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ”
というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。
そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。
聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。
父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。
聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる