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9 不思議な気持ち
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私とクレイ様はパーティー中は、お父様の近くにいれば話しかけられないので、意味なくお父様の側にいたり、お姉様とお母様の視界に入らない様にと、あちらこちらを動き回りました。
もちろん、来てくださった方とも、たくさん挨拶やお話もしました。
次の女王がどちらになるかを気にしていらっしゃるお客様も多かったのですが、今はまだ、国花が浮かび上がった事を悟られてはいけませんので、笑顔で、次の女王はお姉様になるでしょう、と答えました。
少しでも焦りの表情を見せれば、怪しまれる可能性もありますから、今まで通りでいなくてはなりません。
どこから、お姉様達が見ているかわかりませんし、お客様の中にも、お母様達のスパイがいてもおかしくありません。
ですから、今まで通り、目立たないのが一番です。
いつもであれば、すぐに引っ込むはずの私が、長く会場にいるのは、心に余裕があるのではなく、クレイ様がいるから、渋々いる、と思わせなければ。
お客様との歓談が途切れたところで、クレイ様が呟きます。
「腹減ったな」
「立食形式ですけど、食事はあちらに用意されてますので、何かお食べになります? お持ちしますよ」
「自分でとってくる」
「一人で大丈夫ですか?」
「それくらい一人でできる!」
クレイ様は口をへの字にした後、立食形式になっている食事スペースの方に歩いて行かれたかと思ったら、すぐに戻ってこられます。
やはり、一人では無理でしたのでしょうか?
「お前も何か食うか?」
「それなら私も一緒に行きます」
そう答えた時でした。
「婚約おめでとう」
声の主が誰だかわかりましたので、ゲッという思いが表情に出ないように何とかこらえて、後ろを振り返りました。
現れたお姉様は、私に向かって言った後、クレイ様に笑顔を向けます。
「婚約おめでとうございます、クレイ殿下。不甲斐ない妹で残念かもしれませんが、よろしくお願いしますね」
不甲斐ない妹で残念ってどういう意味なんでしょう。
そのままの意味かもしれませんが、おかしくないですか?
「よくわからないが、相手が君ではなく、リサで良かったと思ってるよ」
「あら、殿下。わたしの事を知りもしないのに、そんな事を仰るんですか?」
お姉様は少し不機嫌そうな表情になったけれど、すぐに笑顔を作って、クレイに話しかけます。
「よろしければ、少しお話いたしません? 義理の弟になって下さるのですから、今から仲良くなっておきたいですし」
「俺は仲良くなりたくないからいいよ」
「わたしは女王になるんですよ!? 仲良くしておいた方がいいと思いませんか?」
「うーん。別に必要性は感じないかな。俺はリサの婚約者なんで」
クレイ様はにっと笑ってみせると、私の方を向いて言います。
「邪魔が入ったが、食べ物を取りに行こう。リサの好きな食べ物を教えてくれよ。ついでにあるなら嫌いな食べ物も」
「は、はい! では、クレイ様の食べ物の好き嫌いも教えて下さい!」
今まで、お姉様に会った男性は、すぐにお姉様に夢中になってしまっていました。
なぜなら、お姉様は見た目は美しく、スタイルも良いからです。
私と二人の時は優しくないですが、他の方の前では笑顔を絶やさない優しい姉を演じておられましたから。
でもクレイ様は、お姉様を目の前にしても、一切動じる様子もなく、私としてはとても嬉しい反応でした。
そういえば、今回は嫌味を言ってこられましたが、どうしてなんでしょう?
しかも、私達が歩き出しても、追いかけてきませんでした。
負けっぱなしでいる様な人間ではないと思うのですが…。
「どうかしたのか?」
考えていると、クレイ様に聞かれたので、素直に答える事にします。
「今まで、お姉様は他の人の前では優しいお姉様のふりをしていたんですが、クレイ様にはそうではなかったので、何故かな、と思いまして」
「あー、たぶんそれは、俺が縁談を断ったからだ」
「はい?」
「実は俺とお前の縁談の話が出た後すぐに、お前の姉との縁談の話も来たんだ。だけど、そっちに関してはすぐに断った」
「え? ど、どういう事です?」
「リサの親父さんである国王陛下には内緒で、王妃の方から、うちの親父の方にリサではなく、ブランカとの婚約に変えろと言ってきてたんだ」
なんという恥さらしな事をしてくれたのでしょう!
クレイ様との縁談はお父様とロンバルディー国王陛下が決めた話ですのに!
しかも、お姉様にだって婚約者がいるじゃないですか!
カッカしていると、クレイ様が言います。
「その時の俺はリサがどんな奴か知らなかったけど、ブランカよりもリサの方が良い気がしたんだ。まあ、親父の推薦もあったしな。もちろん、親父からも断るよな? って脅されたし」
「ありがとうございました、クレイ様」
「何で礼?」
「クレイ様がお姉様を選んでいらしたら、やっぱりショックだったと思いますから」
深々と頭を下げると、頭を撫でてくださいます。
「当たり前だろ? それに俺は次の女王が誰だか知ってるんだぞ?」
「そうでした!」
笑うと、食べ物が置いてあるテーブルの方へ移動するのに、人が多くてはぐれそうなので、クレイ様が手を引いてくれながら聞いてくる。
「この国の名物料理とかあるのか?」
「特にないですね」
「即答かよ」
笑うクレイ様の顔を見ると、なぜだか、胸がほわんとなります。
何でなのでしょう?
でも、痛いとか苦しいわけではないので、そのままにしておいても大丈夫ですよね?
もちろん、来てくださった方とも、たくさん挨拶やお話もしました。
次の女王がどちらになるかを気にしていらっしゃるお客様も多かったのですが、今はまだ、国花が浮かび上がった事を悟られてはいけませんので、笑顔で、次の女王はお姉様になるでしょう、と答えました。
少しでも焦りの表情を見せれば、怪しまれる可能性もありますから、今まで通りでいなくてはなりません。
どこから、お姉様達が見ているかわかりませんし、お客様の中にも、お母様達のスパイがいてもおかしくありません。
ですから、今まで通り、目立たないのが一番です。
いつもであれば、すぐに引っ込むはずの私が、長く会場にいるのは、心に余裕があるのではなく、クレイ様がいるから、渋々いる、と思わせなければ。
お客様との歓談が途切れたところで、クレイ様が呟きます。
「腹減ったな」
「立食形式ですけど、食事はあちらに用意されてますので、何かお食べになります? お持ちしますよ」
「自分でとってくる」
「一人で大丈夫ですか?」
「それくらい一人でできる!」
クレイ様は口をへの字にした後、立食形式になっている食事スペースの方に歩いて行かれたかと思ったら、すぐに戻ってこられます。
やはり、一人では無理でしたのでしょうか?
「お前も何か食うか?」
「それなら私も一緒に行きます」
そう答えた時でした。
「婚約おめでとう」
声の主が誰だかわかりましたので、ゲッという思いが表情に出ないように何とかこらえて、後ろを振り返りました。
現れたお姉様は、私に向かって言った後、クレイ様に笑顔を向けます。
「婚約おめでとうございます、クレイ殿下。不甲斐ない妹で残念かもしれませんが、よろしくお願いしますね」
不甲斐ない妹で残念ってどういう意味なんでしょう。
そのままの意味かもしれませんが、おかしくないですか?
「よくわからないが、相手が君ではなく、リサで良かったと思ってるよ」
「あら、殿下。わたしの事を知りもしないのに、そんな事を仰るんですか?」
お姉様は少し不機嫌そうな表情になったけれど、すぐに笑顔を作って、クレイに話しかけます。
「よろしければ、少しお話いたしません? 義理の弟になって下さるのですから、今から仲良くなっておきたいですし」
「俺は仲良くなりたくないからいいよ」
「わたしは女王になるんですよ!? 仲良くしておいた方がいいと思いませんか?」
「うーん。別に必要性は感じないかな。俺はリサの婚約者なんで」
クレイ様はにっと笑ってみせると、私の方を向いて言います。
「邪魔が入ったが、食べ物を取りに行こう。リサの好きな食べ物を教えてくれよ。ついでにあるなら嫌いな食べ物も」
「は、はい! では、クレイ様の食べ物の好き嫌いも教えて下さい!」
今まで、お姉様に会った男性は、すぐにお姉様に夢中になってしまっていました。
なぜなら、お姉様は見た目は美しく、スタイルも良いからです。
私と二人の時は優しくないですが、他の方の前では笑顔を絶やさない優しい姉を演じておられましたから。
でもクレイ様は、お姉様を目の前にしても、一切動じる様子もなく、私としてはとても嬉しい反応でした。
そういえば、今回は嫌味を言ってこられましたが、どうしてなんでしょう?
しかも、私達が歩き出しても、追いかけてきませんでした。
負けっぱなしでいる様な人間ではないと思うのですが…。
「どうかしたのか?」
考えていると、クレイ様に聞かれたので、素直に答える事にします。
「今まで、お姉様は他の人の前では優しいお姉様のふりをしていたんですが、クレイ様にはそうではなかったので、何故かな、と思いまして」
「あー、たぶんそれは、俺が縁談を断ったからだ」
「はい?」
「実は俺とお前の縁談の話が出た後すぐに、お前の姉との縁談の話も来たんだ。だけど、そっちに関してはすぐに断った」
「え? ど、どういう事です?」
「リサの親父さんである国王陛下には内緒で、王妃の方から、うちの親父の方にリサではなく、ブランカとの婚約に変えろと言ってきてたんだ」
なんという恥さらしな事をしてくれたのでしょう!
クレイ様との縁談はお父様とロンバルディー国王陛下が決めた話ですのに!
しかも、お姉様にだって婚約者がいるじゃないですか!
カッカしていると、クレイ様が言います。
「その時の俺はリサがどんな奴か知らなかったけど、ブランカよりもリサの方が良い気がしたんだ。まあ、親父の推薦もあったしな。もちろん、親父からも断るよな? って脅されたし」
「ありがとうございました、クレイ様」
「何で礼?」
「クレイ様がお姉様を選んでいらしたら、やっぱりショックだったと思いますから」
深々と頭を下げると、頭を撫でてくださいます。
「当たり前だろ? それに俺は次の女王が誰だか知ってるんだぞ?」
「そうでした!」
笑うと、食べ物が置いてあるテーブルの方へ移動するのに、人が多くてはぐれそうなので、クレイ様が手を引いてくれながら聞いてくる。
「この国の名物料理とかあるのか?」
「特にないですね」
「即答かよ」
笑うクレイ様の顔を見ると、なぜだか、胸がほわんとなります。
何でなのでしょう?
でも、痛いとか苦しいわけではないので、そのままにしておいても大丈夫ですよね?
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