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8 婚約披露パーティー
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クレイ様との婚約は、彼がやって来たその日に決まり、次の日には新聞で大々的に発表されました。
ただ、新聞には、婚約者変更の方の話題が大きく書かれておりましたので、公爵家に請求する慰謝料を増やしたくなりました。
大体、息子のワガママも何とか出来ない親ってどうなんですか…。
まあ、後悔してもらいたいので、今の状況で良いんですけどね。
クレイ様は根はとても良い人なので、身だしなみを整えて下さいとお願いしましたところ、次の日には伸び放題になっていた髪の毛を整えてくださり、長髪とまではいきませんが、全体的に髪は長めの清潔感のあるイケメンさんに変わりました。
お飾りとはいえ、夫になる方がカッコ良いというのは幸せな事です。
身なりを整えたクレイ様をお母様達に紹介しましたら、よっぽど悔しかったのか、私を睨んでこられましたが、気にしない様にしました。
そして、それから約2週間後のこと。
「なあ、何で、こんなコソコソしないといけないんだ?」
「お姉様とお母様に見つかりたくないからですよ」
現在、私とクレイ様は私達の婚約お披露目パーティーの会場にいました。
私は胸元がしっかり隠れるワンピースドレス、クレイ様は紺色のタキシードに身を包んだ、正装姿です。
お父様が元気になってくださったおかげで、パーティーの主役である私が、今までの様に、すぐに引っ込むという事はしなくて良くなりましたが、あまり目立ちたくはありません。
目立ってしまうと、お姉様だけではなく、お母様までも不機嫌になり、くだらない意地悪をしてくるからです。
「何かしてきたら、ガツンと言ってやればいいだろ」
「嫌です。そんな事をしたら余計に怒らせるだけです」
「でも、お前が女王になるのは間違いないんだから」
「お母様の事です。私に女王の証が出たと知ったら、皮をはごうとするに決まっています」
「こえーよ、お前の家族…」
「殺されないだけマシです。ですから目立たないようにしてるんです。今はやられたふりをしておいて、油断させてるんです」
私とクレイ様がパーティー会場の隅で話をしていると、元婚約者のオッサムがやって来ました。
「婚約おめでとう、リサ。素敵な婚約者が見つかって良かったね」
「ありがとう、オッサム。あなたとお姉様との結婚が決まる様に応援しますね」
そして、あなたがお姉様と結婚した時に、あなたの夢が叶わない事を教えてあげますね!
「ありがとう。ブランカは俺が好きみたいだから、すぐに決まると思うよ」
「そうなんですか? 本当に婚約破棄できて良かったわ」
「ああ」
オッサムは頷いてから、クレイ様を見て言います。
「あなたのお噂は聞いていますよ。好きな女性にフラレた上に、婚約者にも捨てられたそうですね」
「ちょっと、オッサム!」
「彼はいつか義理の弟になるんだから、これくらい言ってもいいだろう」
「良いわけありません! なんて失礼な事を言うんですか!
クレイ様、行きましょう!」
私はクレイ様の腕をつかんで、その場を離れます。
「リサ、本当の事だから俺は気にしてないぞ」
「私が気にします!」
「何で気にするんだよ」
「あんな無神経な発言をする人を見ると、こう、なんといいますか、鼻にパンチを入れてやりたくなるといいますか…」
「逆にお前が怪我をしそうで心配だよ」
クレイ様は吹き出すようにして笑ったあと、私よりも頭一つ分くらい背の高い彼は、シニヨンにしている私の髪を乱さない様に気を付けながら、頭を撫でてくれながら言います。
「ありがとな。俺もあの印象を払拭できるように頑張るわ」
「無理はなさらず! 私がお守りしますから!」
「頼りないけどな」
「そんな事はありませんよ!」
と言いつつも、お母様の姿が見えたので、クレイ様を連れて柱の陰に隠れます。
「どうしたんだよ」
「お母様がいます」
今日は一段と派手な格好をしていらして、黒の鳥の羽根を贅沢に使い、そこにスパンコールがいっぱいついていて、とてもキラキラされておられます。
「ん? お前の母さん、鳥に何か恨みでもあんのか?」
クレイ様の言葉を聞いて、ぶはっと吹き出してしまいました。
「ファッションだとは思いますが、恨みがあるかどうかはわかりません」
「あんな格好して動きにくくないのか?」
「基本、ドレスは動きにくいですよ」
クレイ様と一緒にお母様から少しずつ離れていきましたが、今度はお姉様の婚約者のアール様につかまってしまいます。
「おい、リサ。君が婚約破棄を認めるから面倒な事になったじゃないか」
「アール様が早いうちに、お姉様と結婚なさらないからでは?」
「開き直るなよ。今までは上手くいってたんだ」
「オッサムが出てきたからといって、うまくいかなくなるのでしたら、オッサムの事がなくても、近い内に駄目になっていたと思いますよ」
きっぱりと答えると、アール様は眉間にシワを寄せて、目にかかった前髪をかきあげながら言います。
「リサ、君がここまで生意気な事を言うとは思ってなかったよ。ブランカの言う事は嘘じゃなかった! 不細工で性格の悪いお前と、女にフラれてばかりの駄目な王子の組み合わせだっていうのは本当だったよ!」
「アール様、口を慎んで下さいませ。敵意を向けてくる方に優しくできる程、私は大人じゃありませんよ? これでも、私は第2王女なんですから!」
「馬鹿な女と駄目な王子でお似合いだよ!」
強い口調で言い返すと、アール様は怯んだのか後退りすると、捨て台詞を吐いて去っていきました。
「公爵家の兄弟そろって、ろくな人間がいません!」
「そういえば、リサの元婚約者は公爵家だったな。たしか兄弟だっけ?」
「ええ。公爵の爵位は長男が継がれますが、今、逃げていったのが次男のアール様でお姉様の前からの婚約者です。そして、さっき話をしていたのが私の元婚約者のオッサムです」
「ふぅん。こんな事を言っちゃなんだが、二人共頭が悪そうだな」
「一応、二人共、公爵家の令息なんですが…」
「オッサムとブランカは復讐リストに入ってるが、リサの母上とアールも追加で、後悔させるのは、この四人か?」
「今のところはそうなりますね」
クレイ様の言葉に、私は真剣な表情で頷いた。
ただ、新聞には、婚約者変更の方の話題が大きく書かれておりましたので、公爵家に請求する慰謝料を増やしたくなりました。
大体、息子のワガママも何とか出来ない親ってどうなんですか…。
まあ、後悔してもらいたいので、今の状況で良いんですけどね。
クレイ様は根はとても良い人なので、身だしなみを整えて下さいとお願いしましたところ、次の日には伸び放題になっていた髪の毛を整えてくださり、長髪とまではいきませんが、全体的に髪は長めの清潔感のあるイケメンさんに変わりました。
お飾りとはいえ、夫になる方がカッコ良いというのは幸せな事です。
身なりを整えたクレイ様をお母様達に紹介しましたら、よっぽど悔しかったのか、私を睨んでこられましたが、気にしない様にしました。
そして、それから約2週間後のこと。
「なあ、何で、こんなコソコソしないといけないんだ?」
「お姉様とお母様に見つかりたくないからですよ」
現在、私とクレイ様は私達の婚約お披露目パーティーの会場にいました。
私は胸元がしっかり隠れるワンピースドレス、クレイ様は紺色のタキシードに身を包んだ、正装姿です。
お父様が元気になってくださったおかげで、パーティーの主役である私が、今までの様に、すぐに引っ込むという事はしなくて良くなりましたが、あまり目立ちたくはありません。
目立ってしまうと、お姉様だけではなく、お母様までも不機嫌になり、くだらない意地悪をしてくるからです。
「何かしてきたら、ガツンと言ってやればいいだろ」
「嫌です。そんな事をしたら余計に怒らせるだけです」
「でも、お前が女王になるのは間違いないんだから」
「お母様の事です。私に女王の証が出たと知ったら、皮をはごうとするに決まっています」
「こえーよ、お前の家族…」
「殺されないだけマシです。ですから目立たないようにしてるんです。今はやられたふりをしておいて、油断させてるんです」
私とクレイ様がパーティー会場の隅で話をしていると、元婚約者のオッサムがやって来ました。
「婚約おめでとう、リサ。素敵な婚約者が見つかって良かったね」
「ありがとう、オッサム。あなたとお姉様との結婚が決まる様に応援しますね」
そして、あなたがお姉様と結婚した時に、あなたの夢が叶わない事を教えてあげますね!
「ありがとう。ブランカは俺が好きみたいだから、すぐに決まると思うよ」
「そうなんですか? 本当に婚約破棄できて良かったわ」
「ああ」
オッサムは頷いてから、クレイ様を見て言います。
「あなたのお噂は聞いていますよ。好きな女性にフラレた上に、婚約者にも捨てられたそうですね」
「ちょっと、オッサム!」
「彼はいつか義理の弟になるんだから、これくらい言ってもいいだろう」
「良いわけありません! なんて失礼な事を言うんですか!
クレイ様、行きましょう!」
私はクレイ様の腕をつかんで、その場を離れます。
「リサ、本当の事だから俺は気にしてないぞ」
「私が気にします!」
「何で気にするんだよ」
「あんな無神経な発言をする人を見ると、こう、なんといいますか、鼻にパンチを入れてやりたくなるといいますか…」
「逆にお前が怪我をしそうで心配だよ」
クレイ様は吹き出すようにして笑ったあと、私よりも頭一つ分くらい背の高い彼は、シニヨンにしている私の髪を乱さない様に気を付けながら、頭を撫でてくれながら言います。
「ありがとな。俺もあの印象を払拭できるように頑張るわ」
「無理はなさらず! 私がお守りしますから!」
「頼りないけどな」
「そんな事はありませんよ!」
と言いつつも、お母様の姿が見えたので、クレイ様を連れて柱の陰に隠れます。
「どうしたんだよ」
「お母様がいます」
今日は一段と派手な格好をしていらして、黒の鳥の羽根を贅沢に使い、そこにスパンコールがいっぱいついていて、とてもキラキラされておられます。
「ん? お前の母さん、鳥に何か恨みでもあんのか?」
クレイ様の言葉を聞いて、ぶはっと吹き出してしまいました。
「ファッションだとは思いますが、恨みがあるかどうかはわかりません」
「あんな格好して動きにくくないのか?」
「基本、ドレスは動きにくいですよ」
クレイ様と一緒にお母様から少しずつ離れていきましたが、今度はお姉様の婚約者のアール様につかまってしまいます。
「おい、リサ。君が婚約破棄を認めるから面倒な事になったじゃないか」
「アール様が早いうちに、お姉様と結婚なさらないからでは?」
「開き直るなよ。今までは上手くいってたんだ」
「オッサムが出てきたからといって、うまくいかなくなるのでしたら、オッサムの事がなくても、近い内に駄目になっていたと思いますよ」
きっぱりと答えると、アール様は眉間にシワを寄せて、目にかかった前髪をかきあげながら言います。
「リサ、君がここまで生意気な事を言うとは思ってなかったよ。ブランカの言う事は嘘じゃなかった! 不細工で性格の悪いお前と、女にフラれてばかりの駄目な王子の組み合わせだっていうのは本当だったよ!」
「アール様、口を慎んで下さいませ。敵意を向けてくる方に優しくできる程、私は大人じゃありませんよ? これでも、私は第2王女なんですから!」
「馬鹿な女と駄目な王子でお似合いだよ!」
強い口調で言い返すと、アール様は怯んだのか後退りすると、捨て台詞を吐いて去っていきました。
「公爵家の兄弟そろって、ろくな人間がいません!」
「そういえば、リサの元婚約者は公爵家だったな。たしか兄弟だっけ?」
「ええ。公爵の爵位は長男が継がれますが、今、逃げていったのが次男のアール様でお姉様の前からの婚約者です。そして、さっき話をしていたのが私の元婚約者のオッサムです」
「ふぅん。こんな事を言っちゃなんだが、二人共頭が悪そうだな」
「一応、二人共、公爵家の令息なんですが…」
「オッサムとブランカは復讐リストに入ってるが、リサの母上とアールも追加で、後悔させるのは、この四人か?」
「今のところはそうなりますね」
クレイ様の言葉に、私は真剣な表情で頷いた。
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