16 / 45
15 予定外の出来事
しおりを挟む
お姉様はどうやらバーキン様に一目惚れをしてしまったようでした。
バーキン様の見た目はとても素敵ですから、わからないわけではないのですが、お姉さまは許可もしていないのに、バーキン様の隣に座り、勝手に話を始めてしまいます。
「お初にお目にかかりますわね。わたしの名前をご存知?」
「もちろん、存じ上げております。ブランカ王女殿下にお会いできて光栄です」
「まあまあ! そんな堅苦しい態度をとらないで下さいな!」
バーキン様は笑顔を作っていらっしゃいますが、どことなく引きつっている様にも見えます。
自分から声を掛けるのは良いみたいですが、女性からぐいぐい来られるのは苦手みたいですね。
「バーキン、せっかくだからブランカ王女殿下と違う場所でゆっくりお話させてもらったらどうだ?」
「そうですわ、お姉様。私の部屋ですと、私達が気になって、お話もしにくいのではないですか?」
クレイはバーキン様を、私はお姉様を追い出したいがために、協力する事にしました。
バーキン様は「裏切り者」と言わんばかりの顔でクレイを睨みましたが、クレイは一切気にした様子はありません。
お姉様はというと、普段なら私の言葉なんて聞きもしないくせに、バーキン様の腕にしなだれかかりながら言います。
「リサの言う通りですわ。よろしければ、わたしのお部屋にいらっしゃいません?」
「いや、ありがたいお申し出ですが、婚約者がいらっしゃる未婚女性の部屋に入るのは…」
「何を言ってらっしゃいますの。婚約者に関しては保留中ですのよ?」
そう言って、お姉様は頬紅のついた頬をぐりぐりとバーキン様の腕に当てます。
ああ。
バーキン様の着ていたシャツが白いだけに、お姉様の頬紅の色がついて目立ちます。
後で、バーキン様の服をメイド達に洗濯してもらう様にお願いしましょう。
それにしても、このままでは、お姉様とオッサムを結婚させるのが難しくなります。
お姉様を選んだオッサムを後悔させたいのに、意味がなくなってしまうじゃないですか!
バーキン様は計画を邪魔するつもりでしょうか…。
って、バーキン様は悪くないですね。
私が考えている間にも、二人の会話は進んでいきます。
「いえ、でも、僕はリサ様の専属の医師ですので」
「なんですって!?」
バーキン様の言葉を聞いたお姉様が、すごい顔をして私の方を睨んできました。
昔は恐れおののいていましたが、今は、クレイという味方がいるからでしょうか、恐怖の気持ちは湧いてこず、お姉様の顔をちょっと面白く感じてしまいます。
なんて、こんな事を言ってはいけませんね!
「リサ! どうやってこんな素敵なお医者様を探してきたの!?」
「クレイのお友達です。お姉様が知らなくて当たり前ですわ。この国の方ではありませんから」
「そうだったの!? 素敵なお友達をお持ちですわね、クレイ殿下」
「はあ、どうも」
クレイはうんざりした顔で答えます。
バーキン様は死んだ魚の様な目になっておられて、さすがに少し可哀想になってきた時、私の頭の中に、ある日のバーキン様の言葉が浮かんできました。
そうです!
これなら、バーキン様の目的も達成でき、なおかつ、お姉様もさすがにバーキン様を嫌いになるでしょう!
「バーキン様!」
「どうしました、リサ殿下」
「あの、あれです!」
声に出すには、ちょっとはしたない気がしましたので、口を動かして伝えます。
お姉様の胸はどうですか?
「?」
一回では伝わらなかった様なので、ジェスチャーを混じえながら伝えてみます。
お姉様の…揉みます?
「リサ!」
クレイは何を言っているのか気が付いたみたいで、私の頬を横から軽くつねってきました。
痛いです。
「一体、どうしたんだよ」
バーキン様は不思議そうにしていて、残念ながら伝わっていません。
どうしたら良いか、クレイに助けを求めてみると、大きなため息を吐いてから、バーキン様に言ってくれます。
「リサはお前がリサにお願いした事をブランカ王女にお願いしてみたらどうだ? って言ってる」
「は! そう言えば良かったんですね!」
クレイはすごいです!
そう思ってから、笑顔でバーキン様の方に振り向き、大きく首を縦に振ったのですが、バーキン様は真顔になって手を横に振られます。
「いや、無理」
「どうしてですか!?」
せっかくのチャンスなのに…と思っていると、クレイが耳打ちしてきます。
「あいつは断られるのを覚悟で言ってるだけだから、別に本気でそうしたい訳じゃないんだよ」
「そうなのですか? それなら、なぜクレイはバーキン様を蹴ったりしたんです?」
「あれが挨拶なんだよ」
「男性同士の友情には色々な形があるのですね!」
感動していると、お姉様が立ち上がって言います。
「さあ、参りましょう、バーキン様。ぜひ、わたしの身体も診ていただけますか?」
「あ、いや、別に体調が悪くないのであれば、診なくても大丈夫だと思いますが…」
「そう言われてみれば、胸が苦しい気がします…」
お姉様が頬紅などなくても頬を赤らめて苦しげに、バーキン様を見上げながら言いました。
ああ。
何か、お姉様の事を好きではないからでしょうか。
見ているだけで気分が悪くなってきました。
「よし、バーキン、出て行け」
クレイも同じ気持ちになったのでしょうか。
立ち上がると、バーキン様の腕をつかみ、無理矢理、バーキン様を立ち上がらせると、ずるずると引っ張っていきます。
「おい、クレイ!」
「サルケス伯爵、俺は第2王女の夫だぞ」
「…失礼しました、クレイ殿下」
そう言って、クレイを見つめるバーキン様の表情を見てみますと「くそ、こんな時だけ!」という様な顔をされておられて、ちょっと面白くなってしまいました。
って、このままでは計画が上手くいかなくなりますね。
まあ、バーキン様がお姉さまをフッて下さればいい事だけなんでしょうけれども…。
バーキン様の見た目はとても素敵ですから、わからないわけではないのですが、お姉さまは許可もしていないのに、バーキン様の隣に座り、勝手に話を始めてしまいます。
「お初にお目にかかりますわね。わたしの名前をご存知?」
「もちろん、存じ上げております。ブランカ王女殿下にお会いできて光栄です」
「まあまあ! そんな堅苦しい態度をとらないで下さいな!」
バーキン様は笑顔を作っていらっしゃいますが、どことなく引きつっている様にも見えます。
自分から声を掛けるのは良いみたいですが、女性からぐいぐい来られるのは苦手みたいですね。
「バーキン、せっかくだからブランカ王女殿下と違う場所でゆっくりお話させてもらったらどうだ?」
「そうですわ、お姉様。私の部屋ですと、私達が気になって、お話もしにくいのではないですか?」
クレイはバーキン様を、私はお姉様を追い出したいがために、協力する事にしました。
バーキン様は「裏切り者」と言わんばかりの顔でクレイを睨みましたが、クレイは一切気にした様子はありません。
お姉様はというと、普段なら私の言葉なんて聞きもしないくせに、バーキン様の腕にしなだれかかりながら言います。
「リサの言う通りですわ。よろしければ、わたしのお部屋にいらっしゃいません?」
「いや、ありがたいお申し出ですが、婚約者がいらっしゃる未婚女性の部屋に入るのは…」
「何を言ってらっしゃいますの。婚約者に関しては保留中ですのよ?」
そう言って、お姉様は頬紅のついた頬をぐりぐりとバーキン様の腕に当てます。
ああ。
バーキン様の着ていたシャツが白いだけに、お姉様の頬紅の色がついて目立ちます。
後で、バーキン様の服をメイド達に洗濯してもらう様にお願いしましょう。
それにしても、このままでは、お姉様とオッサムを結婚させるのが難しくなります。
お姉様を選んだオッサムを後悔させたいのに、意味がなくなってしまうじゃないですか!
バーキン様は計画を邪魔するつもりでしょうか…。
って、バーキン様は悪くないですね。
私が考えている間にも、二人の会話は進んでいきます。
「いえ、でも、僕はリサ様の専属の医師ですので」
「なんですって!?」
バーキン様の言葉を聞いたお姉様が、すごい顔をして私の方を睨んできました。
昔は恐れおののいていましたが、今は、クレイという味方がいるからでしょうか、恐怖の気持ちは湧いてこず、お姉様の顔をちょっと面白く感じてしまいます。
なんて、こんな事を言ってはいけませんね!
「リサ! どうやってこんな素敵なお医者様を探してきたの!?」
「クレイのお友達です。お姉様が知らなくて当たり前ですわ。この国の方ではありませんから」
「そうだったの!? 素敵なお友達をお持ちですわね、クレイ殿下」
「はあ、どうも」
クレイはうんざりした顔で答えます。
バーキン様は死んだ魚の様な目になっておられて、さすがに少し可哀想になってきた時、私の頭の中に、ある日のバーキン様の言葉が浮かんできました。
そうです!
これなら、バーキン様の目的も達成でき、なおかつ、お姉様もさすがにバーキン様を嫌いになるでしょう!
「バーキン様!」
「どうしました、リサ殿下」
「あの、あれです!」
声に出すには、ちょっとはしたない気がしましたので、口を動かして伝えます。
お姉様の胸はどうですか?
「?」
一回では伝わらなかった様なので、ジェスチャーを混じえながら伝えてみます。
お姉様の…揉みます?
「リサ!」
クレイは何を言っているのか気が付いたみたいで、私の頬を横から軽くつねってきました。
痛いです。
「一体、どうしたんだよ」
バーキン様は不思議そうにしていて、残念ながら伝わっていません。
どうしたら良いか、クレイに助けを求めてみると、大きなため息を吐いてから、バーキン様に言ってくれます。
「リサはお前がリサにお願いした事をブランカ王女にお願いしてみたらどうだ? って言ってる」
「は! そう言えば良かったんですね!」
クレイはすごいです!
そう思ってから、笑顔でバーキン様の方に振り向き、大きく首を縦に振ったのですが、バーキン様は真顔になって手を横に振られます。
「いや、無理」
「どうしてですか!?」
せっかくのチャンスなのに…と思っていると、クレイが耳打ちしてきます。
「あいつは断られるのを覚悟で言ってるだけだから、別に本気でそうしたい訳じゃないんだよ」
「そうなのですか? それなら、なぜクレイはバーキン様を蹴ったりしたんです?」
「あれが挨拶なんだよ」
「男性同士の友情には色々な形があるのですね!」
感動していると、お姉様が立ち上がって言います。
「さあ、参りましょう、バーキン様。ぜひ、わたしの身体も診ていただけますか?」
「あ、いや、別に体調が悪くないのであれば、診なくても大丈夫だと思いますが…」
「そう言われてみれば、胸が苦しい気がします…」
お姉様が頬紅などなくても頬を赤らめて苦しげに、バーキン様を見上げながら言いました。
ああ。
何か、お姉様の事を好きではないからでしょうか。
見ているだけで気分が悪くなってきました。
「よし、バーキン、出て行け」
クレイも同じ気持ちになったのでしょうか。
立ち上がると、バーキン様の腕をつかみ、無理矢理、バーキン様を立ち上がらせると、ずるずると引っ張っていきます。
「おい、クレイ!」
「サルケス伯爵、俺は第2王女の夫だぞ」
「…失礼しました、クレイ殿下」
そう言って、クレイを見つめるバーキン様の表情を見てみますと「くそ、こんな時だけ!」という様な顔をされておられて、ちょっと面白くなってしまいました。
って、このままでは計画が上手くいかなくなりますね。
まあ、バーキン様がお姉さまをフッて下さればいい事だけなんでしょうけれども…。
51
あなたにおすすめの小説
私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる
迷い人
恋愛
お爺様は何時も私に言っていた。
「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」
そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。
祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。
シラキス公爵家の三男カール。
外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。
シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。
そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。
でも、私に愛を語る彼は私を知らない。
でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。
だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。
なのに気が付けば、婚約を??
婚約者なのだからと屋敷に入り込み。
婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。
そして……私を脅した。
私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!
【完結】優雅に踊ってくださいまし
きつね
恋愛
とある国のとある夜会で起きた事件。
この国の王子ジルベルトは、大切な夜会で長年の婚約者クリスティーナに婚約の破棄を叫んだ。傍らに愛らしい少女シエナを置いて…。
完璧令嬢として多くの子息と令嬢に慕われてきたクリスティーナ。周囲はクリスティーナが泣き崩れるのでは無いかと心配した。
が、そんな心配はどこ吹く風。クリスティーナは淑女の仮面を脱ぎ捨て、全力の反撃をする事にした。
-ーさぁ、わたくしを楽しませて下さいな。
#よくある婚約破棄のよくある話。ただし御令嬢はめっちゃ喋ります。言いたい放題です。1話目はほぼ説明回。
#鬱展開が無いため、過激さはありません。
#ひたすら主人公(と周囲)が楽しみながら仕返しするお話です。きっつーいのをお求めの方には合わないかも知れません。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
婚約破棄に全力感謝
あーもんど
恋愛
主人公の公爵家長女のルーナ・マルティネスはあるパーティーで婚約者の王太子殿下に婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。でも、ルーナ自身は全く気にしてない様子....いや、むしろ大喜び!
婚約破棄?国外追放?喜んでお受けします。だって、もうこれで国のために“力”を使わなくて済むもの。
実はルーナは世界最強の魔導師で!?
ルーナが居なくなったことにより、国は滅びの一途を辿る!
「滅び行く国を遠目から眺めるのは大変面白いですね」
※色々な人達の目線から話は進んでいきます。
※HOT&恋愛&人気ランキング一位ありがとうございます(2019 9/18)
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】時戻り令嬢は復讐する
やまぐちこはる
恋愛
ソイスト侯爵令嬢ユートリーと想いあう婚約者ナイジェルス王子との結婚を楽しみにしていた。
しかしナイジェルスが長期の視察に出た数日後、ナイジェルス一行が襲撃された事を知って倒れたユートリーにも魔の手が。
自分の身に何が起きたかユートリーが理解した直後、ユートリーの命もその灯火を消した・・・と思ったが、まるで悪夢を見ていたように目が覚める。
夢だったのか、それともまさか時を遡ったのか?
迷いながらもユートリーは動き出す。
サスペンス要素ありの作品です。
設定は緩いです。
6時と18時の一日2回更新予定で、全80話です、よろしくお願い致します。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる