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22 お姉様の考え
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フィアナから詳しく聞いたところによると、私とクレイが結婚した後から、元恋人が、お姉様の事をとても褒める様になったそうです。
フィアナはお姉様の本性を知っていますから、彼の言う事で明らかに間違っている評判について同意せずにいると、天使の様なブランカ様の事を悪く言う女性と付き合いたくない、と言われてしまったのだそうです。
なぜ、自分の恋人の言う事よりも人伝で聞いたお姉様の噂を信じてしまうんでしょう。
その意味がわかりません。
それにしても、フィアナが可哀想です。
もし、その恋人の事を本当に好きだったのなら、かなりショックだったはずです。
「あの、フィアナ」
なんて声を掛けたら良いのか迷いつつも、彼女に話しかけようとすると、クレイが口を開きました。
「別れられて良かったんじゃねぇの?」
「えっ?!」
「それは私も思っております」
クレイが無神経な言葉を発した!
と思って、声を上げてしまいましたが、フィアナが大きく首を縦に振りましたので、今回は正しい発言だったようです。
「僕の為に別れてくれてありがとう」
「サルケス様の為ではありません。私はリサ様の侍女です。それなのに、リサ様がブランカ様にひどい事をされているのに、何も出来ませんでした。それだけでも申し訳ないのに、恋人がブランカ様の肩を持つだなんてありえません。足に重石をつけて湖にでも沈めてやりたい気分です」
「僕も手伝おうか?」
「あなたも一緒に沈みます?」
フィアナが笑顔でバーキン様に尋ねましたが、慌てて、私が止めます。
「駄目です! フィアナの気持ちはありがたいですが、犯罪をしてはいけません! それに、バーキン様は私の味方ですし、クレイの大事なお友達なんです!」
「リサ様がそう仰るのなら止めておきます」
フィアナが私に向かって頭を下げました。
フィアナとはもう3年くらいの付き合いになりますが、こんな一面があるだなんて知りませんでした。
だって、いつも私には笑顔で優しいですのに!
それに、バーキン様とクレイの話をしたじゃないですか!
自分が言い寄られていると、どうしてその時に言ってくれなかったんでしょう。
…そういえば、否定はしてくれてましたね。
色々な思いがこみ上げてきて、フィアナが悪いわけではないですが見つめていると、彼女は苦笑して言います。
「サルケス様が私に言い寄って来られる様になったのは、本当に最近の事なんです。リサ様に隠していたわけではございません」
「でも、フィアナが恋人と別れた事を、なぜバーキン様は知ってるんですか」
ちょっと子供っぽいとは思いますが拗ねて言ってみますと、バーキン様が答えてくれます。
「彼女と元恋人が別れる場面に、ついつい通りかかっちまったんだよ。だって、ダイニングルームの近くの廊下で喧嘩してたもんだから、聞きたくなくても聞こえてきたんだ。いやぁ、その時のフィアナの啖呵がすごくてさぁ」
うっとりした様子で言うバーキン様を、フィアナはものすごく気持ち悪そうな目で見たあと、彼から少しでも離れるためか、窓の方に寄っていきます。
「フィアナ、リサの横に座ればいい。そう詰めなくても横に3人並んで座れるから」
「恐れ多くて、そんな事出来ません!」
「いいから、そいつから少しでも離れた方がいい」
「私がそちらに寄りますと、リサ様とクレイ様がばい菌により近くなりますので」
「ばい菌っていう言い方はひどくないか!?」
クレイとフィアナの会話を聞いていたバーキン様が叫びます。
バイキンとバーキン…。
そんな失礼な事を考えてはいけません!
バーキン様の言葉を無視して、私はクレイに尋ねます。
「でも、どうしてフィアナの元恋人は、いきなりお姉さまを褒め始めたのでしょうか」
「今まではそうじゃなかったのか?」
「はい。どちらかというと、私がリサ様の侍女だからかもしれませんが、リサ様寄りの発言が多かったです。けれど、最近になって、ブランカ様は美しいだとか、ブランカ様は天使の様な性格らしい、だとか言い始めたんです」
フィアナの答えを聞いて、クレイは少し考えたあと口を開きます。
「もしかすると、ブランカの嫌がらせかもしれないな」
「嫌がらせ?」
「エンディ様が動かれるようになってからは、リサの評判が城内で良くなってる。だから、リサの周りの人間を自分の方に引き入れようとしてるのかもな」
「私を孤立させようとしてるという事ですか?」
私が聞き返すと、クレイは難しい顔をして頷いてから続けます。
「エンディ様の事も昔みたいに丸め込めると思ってるんだろう」
「さすがにお父様も今回は甘い顔はされないと思いますが」
「ブランカはそんな事を考えられる人間じゃないだろう。何より、バーキン、お前、いつからフィアナにちょっかいかけてる?」
クレイに尋ねられたバーキン様は、顎に手を当てて少し考えてから答えます。
「初めて会った時に一目惚れしたから…」
「えっ!?」
バーキン様の言葉に、私達三人が声を揃えて聞き返してしまいました。
「いや、その時は一目惚れだけ。調べたら、彼氏いたし、諦めるつもりだったって」
バーキン様は苦笑しながら横に手を振ったあと続けます。
「アプローチしはじめたのは、フィアナが男と別れるシーンを見た、その時からかな」
「うぜぇ。そこは、もう少し間を置けよ」
「そんなシーンを見るなんて、神様に背中を押されてるとしか思えなかったんだよ」
クレイの言葉に答えるバーキン様に対して、少し同感してしまいます。
好きだった人が目の前で恋人と別れるなんてなったら、運命かもしれない、と思ってしまう気持ちはわからないでもないです。
ただ、すぐにアプローチ開始はしませんがね…。
…でも、そういう事なら…。
「お姉様はバーキン様がフィアナを気に入っていらっしゃる事に気が付いて、フィアナに嫌がらせしようとしたんでしょうか?」
「それもあるかもしれないな…。その結果、思っていた事とは別の方に動いたのかもしれない。まあ、自業自得ってやつだな」
「そうですね! 自滅するなんて、ちょっといい気味です! このままの勢いで、アール様の裏切りも教えてさしあげましょう」
帰ったら仕事がたまっているかもしれませんが、お姉様やアール様の件も仕事の合間に頑張らなくては!
フィアナはお姉様の本性を知っていますから、彼の言う事で明らかに間違っている評判について同意せずにいると、天使の様なブランカ様の事を悪く言う女性と付き合いたくない、と言われてしまったのだそうです。
なぜ、自分の恋人の言う事よりも人伝で聞いたお姉様の噂を信じてしまうんでしょう。
その意味がわかりません。
それにしても、フィアナが可哀想です。
もし、その恋人の事を本当に好きだったのなら、かなりショックだったはずです。
「あの、フィアナ」
なんて声を掛けたら良いのか迷いつつも、彼女に話しかけようとすると、クレイが口を開きました。
「別れられて良かったんじゃねぇの?」
「えっ?!」
「それは私も思っております」
クレイが無神経な言葉を発した!
と思って、声を上げてしまいましたが、フィアナが大きく首を縦に振りましたので、今回は正しい発言だったようです。
「僕の為に別れてくれてありがとう」
「サルケス様の為ではありません。私はリサ様の侍女です。それなのに、リサ様がブランカ様にひどい事をされているのに、何も出来ませんでした。それだけでも申し訳ないのに、恋人がブランカ様の肩を持つだなんてありえません。足に重石をつけて湖にでも沈めてやりたい気分です」
「僕も手伝おうか?」
「あなたも一緒に沈みます?」
フィアナが笑顔でバーキン様に尋ねましたが、慌てて、私が止めます。
「駄目です! フィアナの気持ちはありがたいですが、犯罪をしてはいけません! それに、バーキン様は私の味方ですし、クレイの大事なお友達なんです!」
「リサ様がそう仰るのなら止めておきます」
フィアナが私に向かって頭を下げました。
フィアナとはもう3年くらいの付き合いになりますが、こんな一面があるだなんて知りませんでした。
だって、いつも私には笑顔で優しいですのに!
それに、バーキン様とクレイの話をしたじゃないですか!
自分が言い寄られていると、どうしてその時に言ってくれなかったんでしょう。
…そういえば、否定はしてくれてましたね。
色々な思いがこみ上げてきて、フィアナが悪いわけではないですが見つめていると、彼女は苦笑して言います。
「サルケス様が私に言い寄って来られる様になったのは、本当に最近の事なんです。リサ様に隠していたわけではございません」
「でも、フィアナが恋人と別れた事を、なぜバーキン様は知ってるんですか」
ちょっと子供っぽいとは思いますが拗ねて言ってみますと、バーキン様が答えてくれます。
「彼女と元恋人が別れる場面に、ついつい通りかかっちまったんだよ。だって、ダイニングルームの近くの廊下で喧嘩してたもんだから、聞きたくなくても聞こえてきたんだ。いやぁ、その時のフィアナの啖呵がすごくてさぁ」
うっとりした様子で言うバーキン様を、フィアナはものすごく気持ち悪そうな目で見たあと、彼から少しでも離れるためか、窓の方に寄っていきます。
「フィアナ、リサの横に座ればいい。そう詰めなくても横に3人並んで座れるから」
「恐れ多くて、そんな事出来ません!」
「いいから、そいつから少しでも離れた方がいい」
「私がそちらに寄りますと、リサ様とクレイ様がばい菌により近くなりますので」
「ばい菌っていう言い方はひどくないか!?」
クレイとフィアナの会話を聞いていたバーキン様が叫びます。
バイキンとバーキン…。
そんな失礼な事を考えてはいけません!
バーキン様の言葉を無視して、私はクレイに尋ねます。
「でも、どうしてフィアナの元恋人は、いきなりお姉さまを褒め始めたのでしょうか」
「今まではそうじゃなかったのか?」
「はい。どちらかというと、私がリサ様の侍女だからかもしれませんが、リサ様寄りの発言が多かったです。けれど、最近になって、ブランカ様は美しいだとか、ブランカ様は天使の様な性格らしい、だとか言い始めたんです」
フィアナの答えを聞いて、クレイは少し考えたあと口を開きます。
「もしかすると、ブランカの嫌がらせかもしれないな」
「嫌がらせ?」
「エンディ様が動かれるようになってからは、リサの評判が城内で良くなってる。だから、リサの周りの人間を自分の方に引き入れようとしてるのかもな」
「私を孤立させようとしてるという事ですか?」
私が聞き返すと、クレイは難しい顔をして頷いてから続けます。
「エンディ様の事も昔みたいに丸め込めると思ってるんだろう」
「さすがにお父様も今回は甘い顔はされないと思いますが」
「ブランカはそんな事を考えられる人間じゃないだろう。何より、バーキン、お前、いつからフィアナにちょっかいかけてる?」
クレイに尋ねられたバーキン様は、顎に手を当てて少し考えてから答えます。
「初めて会った時に一目惚れしたから…」
「えっ!?」
バーキン様の言葉に、私達三人が声を揃えて聞き返してしまいました。
「いや、その時は一目惚れだけ。調べたら、彼氏いたし、諦めるつもりだったって」
バーキン様は苦笑しながら横に手を振ったあと続けます。
「アプローチしはじめたのは、フィアナが男と別れるシーンを見た、その時からかな」
「うぜぇ。そこは、もう少し間を置けよ」
「そんなシーンを見るなんて、神様に背中を押されてるとしか思えなかったんだよ」
クレイの言葉に答えるバーキン様に対して、少し同感してしまいます。
好きだった人が目の前で恋人と別れるなんてなったら、運命かもしれない、と思ってしまう気持ちはわからないでもないです。
ただ、すぐにアプローチ開始はしませんがね…。
…でも、そういう事なら…。
「お姉様はバーキン様がフィアナを気に入っていらっしゃる事に気が付いて、フィアナに嫌がらせしようとしたんでしょうか?」
「それもあるかもしれないな…。その結果、思っていた事とは別の方に動いたのかもしれない。まあ、自業自得ってやつだな」
「そうですね! 自滅するなんて、ちょっといい気味です! このままの勢いで、アール様の裏切りも教えてさしあげましょう」
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