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21 バーキン様の好きな人
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次の日、もう一泊と言って下さった辺境伯夫妻には丁重にお断りさせてもらい、今度はこちらの国に用事がある際にはお声掛け下さいと告げて、お別れしました。
お二人共、良い方でしたので、今度はこちらがおもてなししたいです。
私の国では、たまにお仕事で貴族の家に行くと、お姉様には好待遇ですが、私はおまけみたいな扱いでしたから、こんな私をもてなして下さったお二人には余計にお礼がしたいです。
あと、使用人の方々にも何かプレゼントしたいです。
とまあ、帰りの道中は、そんな呑気な事を考えていたのですが、それどころではない事が起こっていました。
今回の旅にはメイドが二人と、侍女のフィアナも同行してくれていたのですが、この旅行中、フィアナとバーキン様の間で何かあったのかはわかりませんが、バーキン様は帰りの馬車はフィアナと一緒が良いと言い出されたのです。
フィアナが乗る馬車はメイド達も乗っていますし、バーキン様を乗せるわけにはいきません。
フィアナは伯爵令嬢ですが、メイド達は貴族ではありません。
バーキン様に何かお願いされたら、きっと断りづらいはずです。
しょうがないので、フィアナに私達と一緒の馬車に乗ってもらう様にお願いしました。
「何か監視されてるみたいで嫌だよな」
「監視してんだよ」
バーキン様が呟くと、彼の向かいに座っているクレイがツッコミました。
「どうして監視されないといけないんだよ」
「お前がフィアナにちょっかいかけようとするからだろ」
喧嘩を始めた二人をおいておいて、バーキン様の隣であり、私の向かい側に座っているフィアナに声をかけます。
「ごめんなさいね、フィアナ。無理矢理、こちらの馬車に乗ってもらう事になって…。こんな事を言っても無理かもしれませんが、楽にして下さいね。今は仕事じゃありませんから」
「リサ様が謝らないで下さい。リサ様は何も悪くありません」
今日のフィアナは薄い緑色のワンピースドレスで、いつもシニヨンにしている髪を全ておろしているせいか、いつもと様子が違って新鮮です。
少し幼くなった感じです。
たしかフィアナは私よりも4つ上の21歳でしたでしょうか。
ですが、それよりも若く見えます。
もちろん、21歳でも十分若いのですが。
「いえ、私のせいでバーキン様に付いてきてもらいましたから、私のせいですよ」
「お医者様は一人しかいないのですから当たり前の事です。リサ様はお気になさらないで下さい」
「そうそう。もし何か悪いものを探すとしたら、僕のフィアナが美しすぎるのが悪い」
「あんたのものじゃないし、静かにして」
クレイかと思いましたが、違いました。
静かにして、と返したのは真顔になったフィアナでした。
キョトンとしている私とクレイの顔を見て、フィアナは慌てて口をおさえ、私達二人に頭を下げます。
「申し訳ございません。私ったら」
「いや、そのギャップが可愛いんだよ」
バーキン様がフィアナの肩に手を回そうとした瞬間、ばちん、とバーキン様の手の甲をフィアナが叩きました。
「申し訳ございません。虫が…」
「え? ちゃんと殺せた?」
「いえ、殺せてません。目の前でピンピンしていますね」
デレデレしているバーキン様に対し、気持ち悪い様なものを見る目で彼を見るフィアナ。
彼女がこんな顔や低い声を出しているところを初めて見ました。
すると、また私達の視線に気が付いたフィアナが謝ります。
「本当に申し訳ございません」
「いいえ。そうしたくなる気持ちはわかります。バーキン様、たまに面倒くさい事を言いますものね」
「リサちゃん、ひどい」
バーキン様が口を尖らせて言います。
すると、フィアナが彼に向かって叫びました。
「リサ様になんて無礼な!」
「……申し訳ございませんでした」
気が緩んでしまったのでしょう。
私とクレイ以外の前でリサちゃん呼びをしてしまったので、バーキン様は素直に謝ってこられました。
「フィアナ、バーキン様には私とクレイの前ではリサちゃん呼びを許可していたの。フィアナの前でも許可してあげてもいいかしら」
「いけません! こんな…って、申し訳ございません」
口答えしてしまったと思ったのか、フィアナが頭を下げてきました。
「謝らないで。それに、バーキン様に対応しているフィアナが面白くて、私は好きです」
「俺もそうだな。それに、どっちが素なのかわからんけど、バーキンへの塩対応を見てるとスッキリするから、もっと好きな様にやってくれ。もちろん、俺達の前以外ではするなよ」
「かしこまりました」
楽しそうに笑うクレイに、フィアナは申し訳無さそうに肩を落として頷きました。
「フィアナは実際は、そういう性格だったんですね」
「あの、リサ様。猫をかぶっていた事は謝罪いたします。ですので、どうか解雇だけは」
「する訳ないじゃないですか! どうしてそんな事を言うんです?」
「三女とはいえ、伯爵令嬢のくせに気が強すぎると、家族からも散々言われておりまして、侍女として雇って下さったのもリサ様だけなんです」
「そうだったのですね! では、これからも一緒にいてもらえると助かります!」
「そして、僕の嫁に」
「ちょっと黙っててくれます?」
私とフィアナの会話にバーキン様が入ってきましたが、フィアナはピシャリとはねのけてしまいました。
クレイが苦笑して言います。
「フィアナ、こんな事を言っちゃ悪いが、こいつを本気で殺したくなる前に言ってくれ」
「今すぐにでも殺したいです」
「そういう冷たい所が好きだーー!」
バーキン様が叫んで、フィアナに抱きつこうとしましたが、顔面をフィアナに裏拳されてしまい、お腹の方はクレイに蹴られて痛みで無言になってしまわれました。
おかしいです。
バーキン様は恋人がいる人にはちょっかいをかけないと言っておられましたのに…。
もしかしたら、別れてしまった…?
こんな事を聞いても良いか迷っていると、フィアナが私の表情から悟ってくれたのか答えてくれます。
「元恋人とは、ブランカ様を悪く言う君とは付き合えないと言われて別れました」
「えっ!?」
恋人同士が別れるというのは、別におかしい事ではありません。
ですが、どうしてお姉様の名前が!?
お二人共、良い方でしたので、今度はこちらがおもてなししたいです。
私の国では、たまにお仕事で貴族の家に行くと、お姉様には好待遇ですが、私はおまけみたいな扱いでしたから、こんな私をもてなして下さったお二人には余計にお礼がしたいです。
あと、使用人の方々にも何かプレゼントしたいです。
とまあ、帰りの道中は、そんな呑気な事を考えていたのですが、それどころではない事が起こっていました。
今回の旅にはメイドが二人と、侍女のフィアナも同行してくれていたのですが、この旅行中、フィアナとバーキン様の間で何かあったのかはわかりませんが、バーキン様は帰りの馬車はフィアナと一緒が良いと言い出されたのです。
フィアナが乗る馬車はメイド達も乗っていますし、バーキン様を乗せるわけにはいきません。
フィアナは伯爵令嬢ですが、メイド達は貴族ではありません。
バーキン様に何かお願いされたら、きっと断りづらいはずです。
しょうがないので、フィアナに私達と一緒の馬車に乗ってもらう様にお願いしました。
「何か監視されてるみたいで嫌だよな」
「監視してんだよ」
バーキン様が呟くと、彼の向かいに座っているクレイがツッコミました。
「どうして監視されないといけないんだよ」
「お前がフィアナにちょっかいかけようとするからだろ」
喧嘩を始めた二人をおいておいて、バーキン様の隣であり、私の向かい側に座っているフィアナに声をかけます。
「ごめんなさいね、フィアナ。無理矢理、こちらの馬車に乗ってもらう事になって…。こんな事を言っても無理かもしれませんが、楽にして下さいね。今は仕事じゃありませんから」
「リサ様が謝らないで下さい。リサ様は何も悪くありません」
今日のフィアナは薄い緑色のワンピースドレスで、いつもシニヨンにしている髪を全ておろしているせいか、いつもと様子が違って新鮮です。
少し幼くなった感じです。
たしかフィアナは私よりも4つ上の21歳でしたでしょうか。
ですが、それよりも若く見えます。
もちろん、21歳でも十分若いのですが。
「いえ、私のせいでバーキン様に付いてきてもらいましたから、私のせいですよ」
「お医者様は一人しかいないのですから当たり前の事です。リサ様はお気になさらないで下さい」
「そうそう。もし何か悪いものを探すとしたら、僕のフィアナが美しすぎるのが悪い」
「あんたのものじゃないし、静かにして」
クレイかと思いましたが、違いました。
静かにして、と返したのは真顔になったフィアナでした。
キョトンとしている私とクレイの顔を見て、フィアナは慌てて口をおさえ、私達二人に頭を下げます。
「申し訳ございません。私ったら」
「いや、そのギャップが可愛いんだよ」
バーキン様がフィアナの肩に手を回そうとした瞬間、ばちん、とバーキン様の手の甲をフィアナが叩きました。
「申し訳ございません。虫が…」
「え? ちゃんと殺せた?」
「いえ、殺せてません。目の前でピンピンしていますね」
デレデレしているバーキン様に対し、気持ち悪い様なものを見る目で彼を見るフィアナ。
彼女がこんな顔や低い声を出しているところを初めて見ました。
すると、また私達の視線に気が付いたフィアナが謝ります。
「本当に申し訳ございません」
「いいえ。そうしたくなる気持ちはわかります。バーキン様、たまに面倒くさい事を言いますものね」
「リサちゃん、ひどい」
バーキン様が口を尖らせて言います。
すると、フィアナが彼に向かって叫びました。
「リサ様になんて無礼な!」
「……申し訳ございませんでした」
気が緩んでしまったのでしょう。
私とクレイ以外の前でリサちゃん呼びをしてしまったので、バーキン様は素直に謝ってこられました。
「フィアナ、バーキン様には私とクレイの前ではリサちゃん呼びを許可していたの。フィアナの前でも許可してあげてもいいかしら」
「いけません! こんな…って、申し訳ございません」
口答えしてしまったと思ったのか、フィアナが頭を下げてきました。
「謝らないで。それに、バーキン様に対応しているフィアナが面白くて、私は好きです」
「俺もそうだな。それに、どっちが素なのかわからんけど、バーキンへの塩対応を見てるとスッキリするから、もっと好きな様にやってくれ。もちろん、俺達の前以外ではするなよ」
「かしこまりました」
楽しそうに笑うクレイに、フィアナは申し訳無さそうに肩を落として頷きました。
「フィアナは実際は、そういう性格だったんですね」
「あの、リサ様。猫をかぶっていた事は謝罪いたします。ですので、どうか解雇だけは」
「する訳ないじゃないですか! どうしてそんな事を言うんです?」
「三女とはいえ、伯爵令嬢のくせに気が強すぎると、家族からも散々言われておりまして、侍女として雇って下さったのもリサ様だけなんです」
「そうだったのですね! では、これからも一緒にいてもらえると助かります!」
「そして、僕の嫁に」
「ちょっと黙っててくれます?」
私とフィアナの会話にバーキン様が入ってきましたが、フィアナはピシャリとはねのけてしまいました。
クレイが苦笑して言います。
「フィアナ、こんな事を言っちゃ悪いが、こいつを本気で殺したくなる前に言ってくれ」
「今すぐにでも殺したいです」
「そういう冷たい所が好きだーー!」
バーキン様が叫んで、フィアナに抱きつこうとしましたが、顔面をフィアナに裏拳されてしまい、お腹の方はクレイに蹴られて痛みで無言になってしまわれました。
おかしいです。
バーキン様は恋人がいる人にはちょっかいをかけないと言っておられましたのに…。
もしかしたら、別れてしまった…?
こんな事を聞いても良いか迷っていると、フィアナが私の表情から悟ってくれたのか答えてくれます。
「元恋人とは、ブランカ様を悪く言う君とは付き合えないと言われて別れました」
「えっ!?」
恋人同士が別れるというのは、別におかしい事ではありません。
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