あなた方には後悔してもらいます!

風見ゆうみ

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20   バーンと一発

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 その後、ポピー様は私達に話しかけてくる事もなく、クレイも何事もなかったかの様なフリをしてくれていましたが、私としては、バーキン様の様子が気になって、しょうがありませんでした。

 私がバーキン様の事を詳しく知らないだけかもしれませんが、さっきの態度は明らかに今までのバーキン様とは違います。
 もしかして、先程のバーキン様が本当の彼の姿なのでしょうか…。
 そういえば、クレイも今では素だとは言ってましたが、元々はチャラけていなかったみたいですし、本当は今も、おちゃらけたフリをしているだけなのでしょうか?

「リサ、今はバーキンの事は気にしなくていいから」
「ですが…、クレイだって気にならないですか?」
「気にはなるが、今日のパーティーの主役は辺境伯夫妻なんだよ」
「そうでしたね。ご結婚されて10周年という素敵なパーティーですし、お祝いしないといけませんよね」

 個人的な都合よりも今はお付き合いを優先しないと…。
 こちらから、お礼やお祝いの品を持ってきているとはいえ、宿泊など高待遇していただいてますものね。

 気にはなりましたが、パーティーが終わるまでは、私もクレイも頭を切り替える事にしたのでした。
 パーティーが始まっても、ほとんどの時間は、クレイのお知り合いの方と歓談する事になり、話す人全ての人から結婚を祝われ、少し申し訳ない気持ちになりました。

 白い結婚だなんて知ったら、皆さんはどう思われるのでしょう。

 しばらくすると、アール様がわざわざやって来て、私達を見て鼻で笑って言います。

「こんな所で出会うとは」
「こんな所と言うのはおかしいだろ。他国の人間にどうこう言われたくない」
「あなただって、リサと結婚したんだから、この地は他国だろう!」
「まあ、そう言われてみればそうか。一応、家族はこっちにいるけど、俺自身はミドノワールの人間だもんな」

 クレイが頷くと、アール様はなぜか後ろを振り返りながら言います。
 視線の先には、どなたかと談笑されているポピー様がいらっしゃいます。

「殿下が好きだったというお相手、本当に美人ですね。あなたは駄目だったみたいですが、僕が先程話しかけたら、とても素敵な笑顔で応対してくれましたよ。僕の事が好きなのかもしれない」
「はあ」

 クレイが間の抜けた声を出しました。

 アール様は、やはりお馬鹿さんの様です。
 相手の愛想笑いも見抜けない様です。
 それに、そんな事を言っていた事が、お姉様にバレたらどうするつもりなんでしょう。

 この調子だと、バーキン様から私達は何も聞いていないと思ってるのでしょう。
 お姉様にお伝えする話は、お気に入りの女性がいるという話だけでなく、さっきのポピー様への発言も追加しましょう。
 私達の話では信じられないというなら、バーキン様に証言してもらえばいいだけです。
 言うなと言われただけで、聞かれたら答えるな、とは言われてないようですから。
 
 この人が王配になっていたら大変でしたでしょうね。
 それを考えれば、図ったかの様なタイミングで、私の国花が出たものです。
 誕生日パーティーのあの日に出ていなければ、ロンバルディ陛下とお話をする事もなく、クレイとも出会えていなかったかもしれません。

「馬鹿にしやがって! 僕が王配になったら、まずは目障りな君達を城から追い出してやる」
「無理だな」
「無理ですね」

 二人で否定すると、アール様は鼻を鳴らしてから立ち去られました。
 一体、何がしたかったのでしょうか。
 ポピー様は自分に気があると、クレイに伝えたかっただけ?

 その後は大したトラブルはなく、ある程度、時間が経ったところで、私達は会場を出る事にしました。

 会場から出ても、バーキン様の姿が見受けられなかったので、私達は辺境伯家が用意してくれた、バーキン様の部屋へと急ぎました。

「二人共ごめんな」

 バーキン様は部屋にいらっしゃり、私とクレイに謝ると、部屋の中に通してくれながら言います。

「あんな所であんな発言をしてくる女性だと思ってなかった。僕の事を諦めてると思ってたが、見誤ってた。ほんと悪い」
「謝るなよ、気持ち悪い」

 クレイが眉根を寄せて言った言葉に同意します。

「そうですよ。ヘラヘラしているのが、私の知っているバーキン様です! せめて、私の前ではヘラヘラして下さい!」
「あの、リサちゃん。ヘラヘラって褒め言葉じゃないからな?」
「それくらい知っていますが?」

 聞き返すと、バーキン様は困った様な顔をされました。
 もしかして、嫌味だととらえられてしまったのかもしれません!

「あの、本当に褒めたつもりといいますか、ヘラヘラしているバーキン様を嫌いじゃないからでして」

 オロオロしていると、クレイが助けに入ってくれます。

「あまりフォローになってない気もするが、リサはお前を慰めたいんだと思うぞ」
「それはわかるよ」
「申し訳ございません。もっと褒め言葉を勉強しようと思います。ですが、外面だけでの付き合いでしたら、こんな事は言いませんから」

 さすがに、仲良くもなんともない人に、こんな事を言ってはいけない事くらいわかっています。
 ヘラヘラは失礼に当たりますから。
 ああ、でも、それはそれで、失礼な事を言っているのは確かになってしまいます!

「バーキン様、お詫びに、私の頬をバーンと一発!」
「駄目だ!」
「出来るわけないだろ!」

 なぜか、クレイに反対され、バーキン様からも拒否されてしまいました。
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