あなた方には後悔してもらいます!

風見ゆうみ

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19   クレイの好きな人?

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 アール様のネタに関しては、国に帰ってから、どのタイミングでお姉様にお知らせするかを考える事にして、まずは今日の夜のパーティーに集中する事にしました。
 なぜなら、今日はポピー様と会ってしまう可能性がありますからね!

 クレイには聞きづらいので、バーキン様にこそっと聞いてみたところ、バーキン様の方にポピー様からパートナーになってほしいとの打診があったようですが、丁重にお断りしてくれたそうで、後から調べて下さった結果、クレイがちらりと言っていた仲の良い伯爵令息と出席する事を決められたそうです。
 
 気になったのですが、バーキン様はポピー様からの告白をお断りした様ですが、ポピー様はバーキン様の事を諦められたのでしょうか?
 かといって、これを誰に聞いて良いのかわかりません。
 辺境伯夫妻は、私よりも年上で、お父様達の年齢に近いくらいですから、こんな話を聞くわけにはいきません。
 同じ年頃でしたら、ゴシップ話として聞いてみる事が出来たのかもしれませんが…。

 今日の目標は、クレイをポピー様に近付けない様にしなければならない事!
 他の男性と腕を組んでいたりするのを見るのは辛いでしょうしね。
 ただ、問題は私はポピー様の顔を知らないという事です!
 今回、招待されているのはクレイですので、私はおまけの様なものです。
 ですので、今回、お招き下さった辺境伯夫妻など、覚えておいた方が良い人物に関しては、クレイに教えてもらい、頭に入れてきましたが、ポピー様の事はクレイから教えてもらえなかったので、詳しい内容を聞けなかったのです。
 バーキン様に頼んで、パーティー会場で見つけたら、こっそり教えてもらうようにお願いはしました。

 ただ、バーキン様も公爵家から独立したとはいえ、彼の事を元公爵家だという事を知っている方はたくさんいるでしょうし、お医者様という職業もあり、お嫁さんとして、自分の娘を紹介してくる貴族は多そうです。
 ですので、話せない可能性もありますので、パーティーが始まる前に教えてもらおうと思っていたのですが、そう上手くはいきませんでした。
 
 私達三人が正装をして、パーティー会場に行くと、ちらちらと女性達が、クレイやバーキン様を見てきます。
 パーティーは夜がメインのため、夕方頃には人がたくさん集まってきていました。
  
 バーキン様が女性達に話しかけられる可能性もありますし、ポピー様の事を聞いてしまおうと、彼の方に振り返った時でした。

「クレイ殿下、お久しぶりです」

 私の横にいたクレイに、話しかけてきた女性がいました。

 背中に流れる金色のストレートの美しい髪、小顔で儚さを感じさせる切なげな雰囲気を醸し出す、息を呑むほどの美人がクレイに挨拶されました。
 スレンダーな体型ですのに、水色のプリンセスラインのドレスから、こぼれんばかりの大きな胸を持っていらして、私もついつい目がいってしまいます。

 お胸が好きなバーキン様はさぞかしお喜びかしら、と思っていましたら、彼の顔を見てみると、厳しい表情をしていらっしゃいます。

「バーキン、そんなに睨まないでちょうだい。クレイ殿下に結婚のお祝いを伝えたかっただけなの」
「睨んでなんかいない」

 バーキン様の態度がいつもと違います。
 苦手だという、お姉様に対しても、こんなにそっけない態度はとられませんのに…。

 そして、声を掛けられたクレイはというと、彼も難しい顔をされていました。

 困惑していると、女性が私に笑顔で話し掛けてこられました。

「クレイ殿下の奥様でいらっしゃいますか」
「…はい。クレイの妻ですが、失礼ですが、どちら様でしょう?」
「申し遅れました。わたくし、ポピー・パーカーと申します。クレイ殿下とは学友でしたの」

  ど、どうしましょう!
 避けようと思っていた人に、しょっぱなから捕まってしまいました。
 いえ、今は動揺している場合ではありません。
 私がクレイを守らないと!

「そうなんですね。クレイがお世話になっていた様で、ありがとうございます」

 笑顔で返してみましたが、これ、私がクレイのお母様みたいな会話ですね!
 このままではいけません!

「わざわざ、ご挨拶いただき、ありがとうございました。私達も、他の方へのご挨拶がありますので、こちらで失礼させていただきますね」

 クレイの腕を引っ張り歩き出そうとすると、彼は少し驚いた表情をしていましたが、素直に付いてきてくれます。

「バーキン!」

 バーキン様も一緒に私達に付いて来ようとされましたが、ポピー様が呼び止められます。

「リサ殿下の主治医になると聞いたわ。そんなにお金に困っているのなら」
「金の問題じゃない。僕はクレイ殿下の紹介で、リサ殿下の主治医になっただけだ。僕の事を君が気にする必要はない」
「待って、バーキン! あなたが私の気持ちを受け入れないのは、クレイ殿下のせいなの?」

 ポピー様の言葉に、なぜかかちんときてしまって、バーキン様への質問なのに、私が答えます。

「自分の気持ちが伝わらないからって、それを人のせいにしないで下さい!」
「で、ですが…。断る理由がないじゃないですか!」
「そういう所だよ。君は誰にでも優しいから、皆に優しくされてたよな。だから、君が僕を好きになったら、僕も君を好きになると思ったのかもしれないけど、君が言葉遣いの悪い人が好きという様に、僕も言葉遣いの悪い女性が好きでね。君はタイプじゃない。それだけ」

 バーキン様はポピー様にばっさり言うと、呆気にとられている私とクレイに言います。

「空気悪くしてごめんな。パーティーが終わるまで、大人しくしてるわ」
「バーキン様は悪くありません」

 私が言うと、バーキン様は苦笑されましたが、パーティー会場の外へ向かって、歩いて行かれたのでした。
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