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31 公爵令嬢の裏の顔?
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「困ったな。まだ僕のことを諦めてくれないのか」
クレイ達と一緒に城へ帰る馬車の中で、フィアナに今日の話をしたところ、バーキン様に伝えた方が良いのではと言われたので、夕飯前の時間帯に、バーキン様に私の部屋に来ていただき、お話をしたところ、大きなため息を吐かれました。
ちなみに、クレイはまだ私の部屋に来ていません。
部屋にいるのは、私とバーキン様とフィアナだけです。
「手を出したりしたんじゃないですよね?」
フィアナの言葉にバーキン様が長い髪を揺らして、ソファーから立ち上がって言います。
「そんな事するわけないだろ! 元々はクレイの好きな女性だったんだぞ! それに僕だって、一応、公爵家の人間だったんだ! チャラチャラしていたとしても、付き合ってもいない女性に手を出したりしない!」
「申し訳ございません」
フィアナが私の後ろで立ったまま、深々と頭を下げると、バーキン様は前髪をかきあげてから言います。
「僕もムキになって悪かった」
「サルケス様はクレイ様の事を大事に思っていらっしゃいますものね」
フィアナに言われ、バーキン様は立ち上がったまま眉を寄せて尋ねます。
「もしかして、僕とクレイの仲を疑ってたりするのか?」
「疑っているといいますか、そうなのかな、と。あ、もちろん、クレイ様は別です」
「僕は君が好きだと何回も言ってるよな!? 何で伝わらないんだよ!? もしかして、この国では嫌いが好きとかだったりするのか!?」
「そんな訳ありません」
バーキン様の言葉に私とフィアナは同時に答えます。
「別に男同士が友人として仲良くしてもおかしくないだろ? あいつは真面目だし、からかいがいがあるんだよ」
「人の見方からすれば、かまいすぎ、と見えたのかもしれませんね。ただ、バーキン様がフィアナを好きと知ってからは、あまり、そう見えなくなりましたが」
「それでもあまりなのか…。付き合い方を考えないといけないな」
バーキン様は肩を落とします。
「別に悪い事をしているんじゃないんですから、今まで通りになさればいいのではないでしょうか?」
「必要以上にクレイと仲良くしたら、フィアナは妬いてくれる?」
「妬きません」
「冷たい…」
フィアナの言葉にバーキン様は、しゅんとしたかと思うと、パッと顔を上げて笑顔で言います。
「でも、そういうとこが好きなんだよなあ」
「……」
フィアナがものすごく嫌そうな顔をしました。
「そんなに嫌なんですか?」
「嫌といいますか、どう対処すべきか困っています」
「そういえば、二人は思ってた以上に仲が良さそうですが、私の知らない間に会っていたりします?」
「……」
フィアナが黙ってしまったので驚きます。
「会ってたんですか?」
「お医者様だと聞きましたので、その関係で…」
「どこか具合が悪かったりするの?!」
「いえ…」
フィアナは苦笑するだけで答えてくれませんので、バーキン様の方を見ますと、代わりに答えてくれました。
「リサちゃんに何かあった時の応急処置の仕方とかを教えてほしいって言われたんだ」
「フィアナ…」
感動してしまい、立ち上がって彼女の方に体を向けると、フィアナは微笑んでくれます。
「大した事はできませんが、サルケス様が近くにいない時に、少しでもお役に立てればと思いまして」
「ありがとう、フィアナ!」
「とんでもございません」
こんな風に思ってくれる侍女がいて、本当に幸せです!
もしかして、最初は一目惚れだったのかもしれませんが、フィアナの優しいところを知ったから、バーキン様は彼女の事を本当に好きになってしまったのでしょうか?
「ところでサルケス様、あなたがパーカー公爵令嬢を好きにならないのは、好みではないからなのですか?」
私が座り直したのを確認してから、フィアナがバーキン様に尋ねました。
「どうしたんだよ、いきなり」
「よくわからないのですが、クレイ様が好きになる方ですし、きっと性格の良い方なのだと思ったんです。ですけど、性格の良い方が、いくらサルケス様を諦められないからと言って、一度ふった相手に、わざわざ接触しますか? しかも馴れ馴れしい態度で…」
「だから、僕は交際を断ったじゃないか。気の強い子は好きだが、性格の悪い女性は好きじゃない」
バーキン様の言葉をフィアナが聞き返します。
「という事はパーカー公爵令嬢は性格が悪いという事ですか?」
「そうなるな」
「クレイ様がそれに気付かれない理由は何なんです?」
「ブランカ様が表向きは性格がよく見えるというのと一緒だよ。あと、性格が悪いというのは、僕がたまたま知っただけだ」
バーキン様は小さく息を吐いてから続けます。
「僕は卒業する前から、平民の格好をして何度も屋敷から抜け出してた」
「どうしてです?」
「答えたら、フィアナは僕と結婚してくれる?」
「何でそうなるんですか!」
フィアナが怒ると、バーキン様は苦笑してから話を続けます。
「昔から医者になりたくてね。平民には医者にかかれない貧乏な人達がたくさんいる。その時の僕は資格を持っていなかったし、独学でしかなかったけど、知識ゼロの人よりかは遥かにマシだったわけ。だから、治療を受けられない貧困層の多い地域に行ってたんだ。消毒液や包帯も買えない人が多いから、持参して行ってた。で、やたらと鞭で打たれた様な怪我をしてる人が多かったから、聞いてみたら、貴族の女性を怒らせたから、鞭で打たれたって言われたんだ」
「……バーキン様、それってまさか…」
話の流れ的に、その貴族の女性というのがわかった気がして、私とフィアナは顔を見あわせたのでした。
クレイ達と一緒に城へ帰る馬車の中で、フィアナに今日の話をしたところ、バーキン様に伝えた方が良いのではと言われたので、夕飯前の時間帯に、バーキン様に私の部屋に来ていただき、お話をしたところ、大きなため息を吐かれました。
ちなみに、クレイはまだ私の部屋に来ていません。
部屋にいるのは、私とバーキン様とフィアナだけです。
「手を出したりしたんじゃないですよね?」
フィアナの言葉にバーキン様が長い髪を揺らして、ソファーから立ち上がって言います。
「そんな事するわけないだろ! 元々はクレイの好きな女性だったんだぞ! それに僕だって、一応、公爵家の人間だったんだ! チャラチャラしていたとしても、付き合ってもいない女性に手を出したりしない!」
「申し訳ございません」
フィアナが私の後ろで立ったまま、深々と頭を下げると、バーキン様は前髪をかきあげてから言います。
「僕もムキになって悪かった」
「サルケス様はクレイ様の事を大事に思っていらっしゃいますものね」
フィアナに言われ、バーキン様は立ち上がったまま眉を寄せて尋ねます。
「もしかして、僕とクレイの仲を疑ってたりするのか?」
「疑っているといいますか、そうなのかな、と。あ、もちろん、クレイ様は別です」
「僕は君が好きだと何回も言ってるよな!? 何で伝わらないんだよ!? もしかして、この国では嫌いが好きとかだったりするのか!?」
「そんな訳ありません」
バーキン様の言葉に私とフィアナは同時に答えます。
「別に男同士が友人として仲良くしてもおかしくないだろ? あいつは真面目だし、からかいがいがあるんだよ」
「人の見方からすれば、かまいすぎ、と見えたのかもしれませんね。ただ、バーキン様がフィアナを好きと知ってからは、あまり、そう見えなくなりましたが」
「それでもあまりなのか…。付き合い方を考えないといけないな」
バーキン様は肩を落とします。
「別に悪い事をしているんじゃないんですから、今まで通りになさればいいのではないでしょうか?」
「必要以上にクレイと仲良くしたら、フィアナは妬いてくれる?」
「妬きません」
「冷たい…」
フィアナの言葉にバーキン様は、しゅんとしたかと思うと、パッと顔を上げて笑顔で言います。
「でも、そういうとこが好きなんだよなあ」
「……」
フィアナがものすごく嫌そうな顔をしました。
「そんなに嫌なんですか?」
「嫌といいますか、どう対処すべきか困っています」
「そういえば、二人は思ってた以上に仲が良さそうですが、私の知らない間に会っていたりします?」
「……」
フィアナが黙ってしまったので驚きます。
「会ってたんですか?」
「お医者様だと聞きましたので、その関係で…」
「どこか具合が悪かったりするの?!」
「いえ…」
フィアナは苦笑するだけで答えてくれませんので、バーキン様の方を見ますと、代わりに答えてくれました。
「リサちゃんに何かあった時の応急処置の仕方とかを教えてほしいって言われたんだ」
「フィアナ…」
感動してしまい、立ち上がって彼女の方に体を向けると、フィアナは微笑んでくれます。
「大した事はできませんが、サルケス様が近くにいない時に、少しでもお役に立てればと思いまして」
「ありがとう、フィアナ!」
「とんでもございません」
こんな風に思ってくれる侍女がいて、本当に幸せです!
もしかして、最初は一目惚れだったのかもしれませんが、フィアナの優しいところを知ったから、バーキン様は彼女の事を本当に好きになってしまったのでしょうか?
「ところでサルケス様、あなたがパーカー公爵令嬢を好きにならないのは、好みではないからなのですか?」
私が座り直したのを確認してから、フィアナがバーキン様に尋ねました。
「どうしたんだよ、いきなり」
「よくわからないのですが、クレイ様が好きになる方ですし、きっと性格の良い方なのだと思ったんです。ですけど、性格の良い方が、いくらサルケス様を諦められないからと言って、一度ふった相手に、わざわざ接触しますか? しかも馴れ馴れしい態度で…」
「だから、僕は交際を断ったじゃないか。気の強い子は好きだが、性格の悪い女性は好きじゃない」
バーキン様の言葉をフィアナが聞き返します。
「という事はパーカー公爵令嬢は性格が悪いという事ですか?」
「そうなるな」
「クレイ様がそれに気付かれない理由は何なんです?」
「ブランカ様が表向きは性格がよく見えるというのと一緒だよ。あと、性格が悪いというのは、僕がたまたま知っただけだ」
バーキン様は小さく息を吐いてから続けます。
「僕は卒業する前から、平民の格好をして何度も屋敷から抜け出してた」
「どうしてです?」
「答えたら、フィアナは僕と結婚してくれる?」
「何でそうなるんですか!」
フィアナが怒ると、バーキン様は苦笑してから話を続けます。
「昔から医者になりたくてね。平民には医者にかかれない貧乏な人達がたくさんいる。その時の僕は資格を持っていなかったし、独学でしかなかったけど、知識ゼロの人よりかは遥かにマシだったわけ。だから、治療を受けられない貧困層の多い地域に行ってたんだ。消毒液や包帯も買えない人が多いから、持参して行ってた。で、やたらと鞭で打たれた様な怪我をしてる人が多かったから、聞いてみたら、貴族の女性を怒らせたから、鞭で打たれたって言われたんだ」
「……バーキン様、それってまさか…」
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