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5 犬派、猫派
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ロード様が第二王子殿下ではなく公爵になった理由が気になるものの、触れられたくない話題かもしれないので、こちらからは聞き出しにくい。
しかも、ちゃんとした話をしたのは昨日が初めてで、こうやってじっくり話すことだって、今が初めてだった。
信頼関係ができていない今、無理に聞き出すのも良くない。
ロード様の件は貴族の間でも折り合いが悪かったという噂しか流れてきていない。
ということは、王族以外の人間が知ってはいけないような秘密が関係している可能性だってある。
「僕が父からここに追いやられたという話は聞いてるよな?」
「は、はい」
「どうしてか気になると言った感じかな」
「気にはなりますが、無理に知りたいとは思っていません」
「別に教えられるから教えるよ。でも、あまり人には言わないでくれ」
「承知しました」
頭の中で考えていたことが顔に出てしまっていたのか、それとも、普通ならそう考えるだろうと読み取ってくださったのかはわからない。
どんな話なのだろうとドキドキしながら頷くと、ロード様は苦笑してことの真相を話し始める。
「父上は猫派なんだよ」
「……はい?」
突然、どうでも良い情報を聞かされたような気がしたので聞き返すと、ロード様は失笑する。
「そうなるよな。そういう反応になるだろうということはわかっていた。だから、世間には折り合いが悪いとか曖昧な理由で、僕はこっちにやって来たんだ」
「どういうことでしょうか。犬派、猫派という喧嘩ということですか」
「喧嘩まではいかないけど、それに近い」
嘘でしょう。
よくわからないけれど、犬も猫も両方可愛いで良いと思う。
どちらかが好きで、どちらかはあまり好きじゃないという場合にしても、人の好みなんだからどっちでも良いと思うんだけど、それでは話がおさまらなかったということなのかしら。
「……王妃陛下が止められたとお聞きしましたが、そういう理由でしたら止めますわよね」
「僕でさえも馬鹿馬鹿しいと思うから、話を聞いた人たちはもっと思うだろう。ことの発端は、僕が犬を拾ったからなんだ。自分の部屋で飼いたいと言ったら、父上は自分は猫派だと激怒したんだよ」
「国王陛下は犬に恨みでもあるのですか?」
「特にないと思う。それに、犬よりも猫が好きなことは悪くないし、この国では猫好きのほうが多いのかもしれない。だけど、それは個人の考えだと思うんだ」
「そうですわね。それに、激怒までする理由がわかりません」
自分が猫を好きだからって犬を飼いたいと言った息子を除籍するなんてやり過ぎだわ。
「そんな理由で僕を追い出すだなんて、こんな人間が国王でこの国はよくもっているなと思ったものだ。だから、余計にこの地に来たんだけどね」
「私が姉と離れたいという感覚と似たようなものかもしれません」
「そう言われてみればそうかもしれない。でも、僕の場合は駄目な父親だからこそ、そんな父親をどうにかするべきだったと今となっては思う。後悔先に立たずというやつかな。せめて、自分の管轄する領民だけでも幸せにしようと思っている」
「ロード様はどんな領地にすることが目的なのですか」
ロード様のことはまだ会ったばかりなので詳しくは知らない。
だから、素直に聞いてみると、ロード様は微笑んで答える。
「そうだな。できれば税も少なくて暮らしやすい領地にしたいけど、中々難しい。あとは、好きなものを好きと言える偏見のない領地にできれば良いと思っている」
「陛下が猫優先の国にするつもりでしたら、ロード様の領地だけでも犬が認められる地にするとかですか」
「そうだな。父上は犬派も一定数いるから、全て猫派にするために犬を殺そうだなんて馬鹿なことを言ったから、兄上には却下されたし、母上にもかなり怒られていたよ。こう言ってみると、本当に酷い国王だな」
王太子殿下がいなかったら、本当にこの国はおかしな国になっていた可能性があるわ。
犬が国内では絶滅してしまっていた可能性があったかもしれないなんてことを思うと恐ろしい。
失礼な言い方になるけれど、どうしてそんな人を即位させたのかしら。
あまりにも酷すぎるわ。
周りは止めなかったのかしら。
疑問を口に出していないのに、またロード様が話し出す。
「今のもう一つ前の代の宰相が悪い人間だったんだ。父上を傀儡にするために馬鹿に育て上げたんだ」
「馬鹿、ですか。でも、先代の両陛下はそのことについて何も仰らなかったのですか。 ……と、失礼しました。早くに亡くなられていたのですよね」
先代の両陛下は流行り病にかかり、今の国王陛下が子供の頃に亡くなってしまっていた。
だから、当時の宰相閣下が幼い国王陛下にとんでもないことを教えたのね。
しばらくは、宰相閣下の操り人形で国王陛下を続けられていたけれど、王妃陛下とご結婚されてからは、少しずつマシになってきているのかもしれない。
王太子殿下が生まれ、王太子殿下に物事の判断がつくようになってからは、国王陛下の周りにいる人物もどんどん変わっていったと聞いたことがある。
周りがおかしいことに気が付いた王太子殿下が良くない人間を排除した感じかしら。
そのことを考えると、王太子殿下が出来過ぎていて逆に怖い気もする。
でも、王太子殿下がいてくださったから、国民は陛下があんな人だとは知らずに過ごしているのかもしれないけれど。
悪い人を一掃したあと、王太子殿下と王妃陛下が外国に行かれ、いない間にロード様が除籍されたという感じかしら。
そして、今回の婚約破棄で堪忍袋の緒が切れたのかもしれない。
「兄上は父上をジーギスと一緒に山奥に追いやり、世間には体調が良くないから退位という方向に持っていきたいんだと思う。父上にもう少し頑張らせようかと思っていたみたいだが、これ以上は無理だと判断したみたいだね」
「そうですね。明らかにハニートラップにかかっておられましたし」
いくら、お姉様が好みのタイプだったとしても、国王陛下なんだから簡単に引っかかったりはしちゃ駄目だもの。
そういえば、王太子殿下は大丈夫だったみたいだけれど、ロード様はお姉様に会っても大丈夫かしら。
お姉様に夢中になったりしたら困る。
今回に限っては、婚約者を奪われることだけは避けたいわ。
ロード様やルシエフ公爵邸の人たちはとても良い人たちだし、あんなに可愛い犬たちに出会ってしまったんだから、このまま一緒に住み続けたいと思うのはおかしくないことよね。
この幸せを守り抜くようにしなくちゃ!
しかも、ちゃんとした話をしたのは昨日が初めてで、こうやってじっくり話すことだって、今が初めてだった。
信頼関係ができていない今、無理に聞き出すのも良くない。
ロード様の件は貴族の間でも折り合いが悪かったという噂しか流れてきていない。
ということは、王族以外の人間が知ってはいけないような秘密が関係している可能性だってある。
「僕が父からここに追いやられたという話は聞いてるよな?」
「は、はい」
「どうしてか気になると言った感じかな」
「気にはなりますが、無理に知りたいとは思っていません」
「別に教えられるから教えるよ。でも、あまり人には言わないでくれ」
「承知しました」
頭の中で考えていたことが顔に出てしまっていたのか、それとも、普通ならそう考えるだろうと読み取ってくださったのかはわからない。
どんな話なのだろうとドキドキしながら頷くと、ロード様は苦笑してことの真相を話し始める。
「父上は猫派なんだよ」
「……はい?」
突然、どうでも良い情報を聞かされたような気がしたので聞き返すと、ロード様は失笑する。
「そうなるよな。そういう反応になるだろうということはわかっていた。だから、世間には折り合いが悪いとか曖昧な理由で、僕はこっちにやって来たんだ」
「どういうことでしょうか。犬派、猫派という喧嘩ということですか」
「喧嘩まではいかないけど、それに近い」
嘘でしょう。
よくわからないけれど、犬も猫も両方可愛いで良いと思う。
どちらかが好きで、どちらかはあまり好きじゃないという場合にしても、人の好みなんだからどっちでも良いと思うんだけど、それでは話がおさまらなかったということなのかしら。
「……王妃陛下が止められたとお聞きしましたが、そういう理由でしたら止めますわよね」
「僕でさえも馬鹿馬鹿しいと思うから、話を聞いた人たちはもっと思うだろう。ことの発端は、僕が犬を拾ったからなんだ。自分の部屋で飼いたいと言ったら、父上は自分は猫派だと激怒したんだよ」
「国王陛下は犬に恨みでもあるのですか?」
「特にないと思う。それに、犬よりも猫が好きなことは悪くないし、この国では猫好きのほうが多いのかもしれない。だけど、それは個人の考えだと思うんだ」
「そうですわね。それに、激怒までする理由がわかりません」
自分が猫を好きだからって犬を飼いたいと言った息子を除籍するなんてやり過ぎだわ。
「そんな理由で僕を追い出すだなんて、こんな人間が国王でこの国はよくもっているなと思ったものだ。だから、余計にこの地に来たんだけどね」
「私が姉と離れたいという感覚と似たようなものかもしれません」
「そう言われてみればそうかもしれない。でも、僕の場合は駄目な父親だからこそ、そんな父親をどうにかするべきだったと今となっては思う。後悔先に立たずというやつかな。せめて、自分の管轄する領民だけでも幸せにしようと思っている」
「ロード様はどんな領地にすることが目的なのですか」
ロード様のことはまだ会ったばかりなので詳しくは知らない。
だから、素直に聞いてみると、ロード様は微笑んで答える。
「そうだな。できれば税も少なくて暮らしやすい領地にしたいけど、中々難しい。あとは、好きなものを好きと言える偏見のない領地にできれば良いと思っている」
「陛下が猫優先の国にするつもりでしたら、ロード様の領地だけでも犬が認められる地にするとかですか」
「そうだな。父上は犬派も一定数いるから、全て猫派にするために犬を殺そうだなんて馬鹿なことを言ったから、兄上には却下されたし、母上にもかなり怒られていたよ。こう言ってみると、本当に酷い国王だな」
王太子殿下がいなかったら、本当にこの国はおかしな国になっていた可能性があるわ。
犬が国内では絶滅してしまっていた可能性があったかもしれないなんてことを思うと恐ろしい。
失礼な言い方になるけれど、どうしてそんな人を即位させたのかしら。
あまりにも酷すぎるわ。
周りは止めなかったのかしら。
疑問を口に出していないのに、またロード様が話し出す。
「今のもう一つ前の代の宰相が悪い人間だったんだ。父上を傀儡にするために馬鹿に育て上げたんだ」
「馬鹿、ですか。でも、先代の両陛下はそのことについて何も仰らなかったのですか。 ……と、失礼しました。早くに亡くなられていたのですよね」
先代の両陛下は流行り病にかかり、今の国王陛下が子供の頃に亡くなってしまっていた。
だから、当時の宰相閣下が幼い国王陛下にとんでもないことを教えたのね。
しばらくは、宰相閣下の操り人形で国王陛下を続けられていたけれど、王妃陛下とご結婚されてからは、少しずつマシになってきているのかもしれない。
王太子殿下が生まれ、王太子殿下に物事の判断がつくようになってからは、国王陛下の周りにいる人物もどんどん変わっていったと聞いたことがある。
周りがおかしいことに気が付いた王太子殿下が良くない人間を排除した感じかしら。
そのことを考えると、王太子殿下が出来過ぎていて逆に怖い気もする。
でも、王太子殿下がいてくださったから、国民は陛下があんな人だとは知らずに過ごしているのかもしれないけれど。
悪い人を一掃したあと、王太子殿下と王妃陛下が外国に行かれ、いない間にロード様が除籍されたという感じかしら。
そして、今回の婚約破棄で堪忍袋の緒が切れたのかもしれない。
「兄上は父上をジーギスと一緒に山奥に追いやり、世間には体調が良くないから退位という方向に持っていきたいんだと思う。父上にもう少し頑張らせようかと思っていたみたいだが、これ以上は無理だと判断したみたいだね」
「そうですね。明らかにハニートラップにかかっておられましたし」
いくら、お姉様が好みのタイプだったとしても、国王陛下なんだから簡単に引っかかったりはしちゃ駄目だもの。
そういえば、王太子殿下は大丈夫だったみたいだけれど、ロード様はお姉様に会っても大丈夫かしら。
お姉様に夢中になったりしたら困る。
今回に限っては、婚約者を奪われることだけは避けたいわ。
ロード様やルシエフ公爵邸の人たちはとても良い人たちだし、あんなに可愛い犬たちに出会ってしまったんだから、このまま一緒に住み続けたいと思うのはおかしくないことよね。
この幸せを守り抜くようにしなくちゃ!
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