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3 兄の来訪
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職場の人達は迷惑をかけたにも関わらず、怪我をしていないかなど、私を心配する言葉と同情の言葉をたくさんかけてくれて、私のいる職場がとても温かい心の持ち主の人が多いのだと実感したし、感謝もした。
上司の方からは、国王陛下に直接は無理でも、宰相や大臣に苦情の連絡を入れておくと言ってくれた。
最終的にはそこから、国王陛下への耳に入れてもらえるのだと思う。
私の知っている両陛下は息子が可愛いからといって甘やかしたり贔屓したりする人ではないから、今回の件ではしっかりと怒ってくださるはずだし、それ以上のアクションも起こしてくださると信じている。
ただ、国王陛下がセイン様の婚約破棄を認められるかどうかは、その時の私にはわからなかった。
アズアルド殿下がルピノを指名しているのであれば、セイン様の望み通り、ルピノを彼の婚約者に出来ないでしょうから、セイン様が勝手に婚約破棄をして、ルピノを婚約者にしようとしている事を陛下が知ったら激怒されるはず。
何にしても、その時の私には婚約破棄について何かする事は出来なかった。
それから2日後の仕事が休みの日の朝、陛下から正式に連絡があり、セイン様がした事に対してのお詫びの言葉と、婚約破棄を受け入れるかどうかの確認がきた。
もちろん、お父様が帰宅してから決める事ではあるけれど、私の意思を先に確認しておきたいという事だった。
陛下からの連絡では、アズアルド殿下はルピノを求めているわけではないから、私が嫌でなければ、婚約者をセイン様からアズアルド殿下に変更して欲しいという考えの様だった。
ルピノはお父様と血の繋がりがないから、私を嫁がせたいのかしら。
その真意は今はおいておく事にして、婚約破棄や新たな婚約の件は、お父様と相談してからでないといけないので、確実とは言えないけれど、私自身は婚約破棄を受け入れるつもりで、アズアルド殿下がご迷惑でないのなら、嫁入りする覚悟はあるという答えを返した。
セイン様の事は好きだった。
けれど、それはあんな酷い事を言う人だなんて思っていなかったからだ。
誰かから注意されたのか、それとも、本当に反省したのかはわからないけれど、昨日、手紙で謝罪の文章がセイン様から送られてきた。
ただ、謝罪の手紙というよりかは仕事をやらせたいだけの様な気がして、返事を返す事を迷っていた。
なぜなら、謝ってくれてはいるけれど、婚約者じゃなくなったからといって仕事をしなくなるなんて公私混同はしないでほしいだなどと、セイン様の仕事をしなくなった事について責めてくる内容ばかりだったから。
彼にとっての私は、仕事をしない限り、無価値な人間らしかった。
そんな事を言われると、悲しいのは確かだった。
だって、つい最近まではセイン様と上手くいっていると思っていたから。
彼が優しかったのは、仕事をやらせたかっただけなのかと思うと悲しかった。
しかも、やりきれなかった仕事を私にさせているのかと思っていたら、そういうわけでもなく、本人は全く何もしていなかった。
そして、それを見抜けなかった自分にも腹が立った。
でも、出会った時は仕事なんてしてなかったし、純粋な感じだった。
成長していくにつれてずる賢くなる事を覚えてしまわれたのかもしれない。
そんな人が相手なら婚約破棄してもらって良かったわよね。
でも、これを知ったお父様はどう思われるかしら?
そんな事を考えていた時だった。
言い合う様な声が聞こえてきた。
その声はどんどん近付いてくる。
「ボラウン様! お待ち下さい! ボラウン様は邸内に入っていただく事は出来ません!」
「うるさいんですよ! 私に命令しないで下さい!」
お兄様がメイドを叱る声がはっきりと聞こえた。
お父様がいない時に、お兄様には会いたくなかった。
3年くらい前までは、私とお兄様は仲が良かった。
お兄様はお父様に言われた通り、私の事もルピノの事も可愛がってくれて、良いお兄様だった。
けれど、私にとって、今では良いお兄様ではない。
なぜなら、お兄様は――。
「ルリ! どういう事なんですか! どうして、セイン殿下の仕事をしてあげないんです!? ノーラルが困っているじゃないですか!」
「ごきげんよう、お兄様。どうして、セイン様の仕事をしないからってノーラル様が困るんです?」
「セイン殿下の仕事をルリがする事によって、セイン殿下に空き時間が出来るんです。その空き時間でルピノと過ごすんですから」
「お兄様、冷静になって考えてくださいませ」
「私は冷静ですよ」
お兄様の話し方が敬語なのは、わざとではなく、こういう癖がついている。
お父様は直そうとされたけれど、中々直らず、それが絶対に悪いことでもなかった事と最終的にはノーラル様がそれを認めてしまった為、余計に直らなくなった。
そして、お兄様は自分の事を理解してくれていると勘違いしてしまい、ノーラル様に恋をした。
本人は一切、そんな事を口にしないけれど、彼女を見つめる目がそうだと物語っていて、私としては複雑な気分だった。
血は繋がっていないけれど、ノーラル様はお兄様の母なのだから、世間体的に許されるはずがない。
お父様もその事に気が付いていて、お兄様が私よりもノーラル様の肩を持つ様になってからは、お兄様を別邸に近付けさせないようにした。
それなのに、お兄様はお父様がいない事を良い事に、命令を破って私の所まで来たのだ。
「冷静だとは思えませんわ。お兄様はこの邸内には立入禁止のはずです」
「緊急事態ですからしょうがありません」
お兄様は細い目をより細くし、金色の肩まであるストレートの髪を揺らして、言葉を続ける。
「いいですか、ルリ。セイン殿下は君に仕事をしなくても良いと仰ったようですが、それはいけません。今まで通り、君が仕事をしなさい。いいですね?」
上司の方からは、国王陛下に直接は無理でも、宰相や大臣に苦情の連絡を入れておくと言ってくれた。
最終的にはそこから、国王陛下への耳に入れてもらえるのだと思う。
私の知っている両陛下は息子が可愛いからといって甘やかしたり贔屓したりする人ではないから、今回の件ではしっかりと怒ってくださるはずだし、それ以上のアクションも起こしてくださると信じている。
ただ、国王陛下がセイン様の婚約破棄を認められるかどうかは、その時の私にはわからなかった。
アズアルド殿下がルピノを指名しているのであれば、セイン様の望み通り、ルピノを彼の婚約者に出来ないでしょうから、セイン様が勝手に婚約破棄をして、ルピノを婚約者にしようとしている事を陛下が知ったら激怒されるはず。
何にしても、その時の私には婚約破棄について何かする事は出来なかった。
それから2日後の仕事が休みの日の朝、陛下から正式に連絡があり、セイン様がした事に対してのお詫びの言葉と、婚約破棄を受け入れるかどうかの確認がきた。
もちろん、お父様が帰宅してから決める事ではあるけれど、私の意思を先に確認しておきたいという事だった。
陛下からの連絡では、アズアルド殿下はルピノを求めているわけではないから、私が嫌でなければ、婚約者をセイン様からアズアルド殿下に変更して欲しいという考えの様だった。
ルピノはお父様と血の繋がりがないから、私を嫁がせたいのかしら。
その真意は今はおいておく事にして、婚約破棄や新たな婚約の件は、お父様と相談してからでないといけないので、確実とは言えないけれど、私自身は婚約破棄を受け入れるつもりで、アズアルド殿下がご迷惑でないのなら、嫁入りする覚悟はあるという答えを返した。
セイン様の事は好きだった。
けれど、それはあんな酷い事を言う人だなんて思っていなかったからだ。
誰かから注意されたのか、それとも、本当に反省したのかはわからないけれど、昨日、手紙で謝罪の文章がセイン様から送られてきた。
ただ、謝罪の手紙というよりかは仕事をやらせたいだけの様な気がして、返事を返す事を迷っていた。
なぜなら、謝ってくれてはいるけれど、婚約者じゃなくなったからといって仕事をしなくなるなんて公私混同はしないでほしいだなどと、セイン様の仕事をしなくなった事について責めてくる内容ばかりだったから。
彼にとっての私は、仕事をしない限り、無価値な人間らしかった。
そんな事を言われると、悲しいのは確かだった。
だって、つい最近まではセイン様と上手くいっていると思っていたから。
彼が優しかったのは、仕事をやらせたかっただけなのかと思うと悲しかった。
しかも、やりきれなかった仕事を私にさせているのかと思っていたら、そういうわけでもなく、本人は全く何もしていなかった。
そして、それを見抜けなかった自分にも腹が立った。
でも、出会った時は仕事なんてしてなかったし、純粋な感じだった。
成長していくにつれてずる賢くなる事を覚えてしまわれたのかもしれない。
そんな人が相手なら婚約破棄してもらって良かったわよね。
でも、これを知ったお父様はどう思われるかしら?
そんな事を考えていた時だった。
言い合う様な声が聞こえてきた。
その声はどんどん近付いてくる。
「ボラウン様! お待ち下さい! ボラウン様は邸内に入っていただく事は出来ません!」
「うるさいんですよ! 私に命令しないで下さい!」
お兄様がメイドを叱る声がはっきりと聞こえた。
お父様がいない時に、お兄様には会いたくなかった。
3年くらい前までは、私とお兄様は仲が良かった。
お兄様はお父様に言われた通り、私の事もルピノの事も可愛がってくれて、良いお兄様だった。
けれど、私にとって、今では良いお兄様ではない。
なぜなら、お兄様は――。
「ルリ! どういう事なんですか! どうして、セイン殿下の仕事をしてあげないんです!? ノーラルが困っているじゃないですか!」
「ごきげんよう、お兄様。どうして、セイン様の仕事をしないからってノーラル様が困るんです?」
「セイン殿下の仕事をルリがする事によって、セイン殿下に空き時間が出来るんです。その空き時間でルピノと過ごすんですから」
「お兄様、冷静になって考えてくださいませ」
「私は冷静ですよ」
お兄様の話し方が敬語なのは、わざとではなく、こういう癖がついている。
お父様は直そうとされたけれど、中々直らず、それが絶対に悪いことでもなかった事と最終的にはノーラル様がそれを認めてしまった為、余計に直らなくなった。
そして、お兄様は自分の事を理解してくれていると勘違いしてしまい、ノーラル様に恋をした。
本人は一切、そんな事を口にしないけれど、彼女を見つめる目がそうだと物語っていて、私としては複雑な気分だった。
血は繋がっていないけれど、ノーラル様はお兄様の母なのだから、世間体的に許されるはずがない。
お父様もその事に気が付いていて、お兄様が私よりもノーラル様の肩を持つ様になってからは、お兄様を別邸に近付けさせないようにした。
それなのに、お兄様はお父様がいない事を良い事に、命令を破って私の所まで来たのだ。
「冷静だとは思えませんわ。お兄様はこの邸内には立入禁止のはずです」
「緊急事態ですからしょうがありません」
お兄様は細い目をより細くし、金色の肩まであるストレートの髪を揺らして、言葉を続ける。
「いいですか、ルリ。セイン殿下は君に仕事をしなくても良いと仰ったようですが、それはいけません。今まで通り、君が仕事をしなさい。いいですね?」
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