価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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38.5 願いが届かないルピノ視点

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 裁判に勝って、私はシイナレンラジ家から、慰謝料を払ってもらえるようになった。

 これで、私の顔も元に戻る。

 そう思って浮かれていたけれど、色々と問題があることに気が付いた。

 その一つが裁判が終わると、今まで私を世話してくれていた人が、いきなりいなくなってしまったことだった。

 仮住まいとしていた小さな木造の小屋みたいな家は、そのまま使っても良いと言ってくれたけれど、食べ物も飲み物もほとんど家の中には残っていなくて、どうすれば良いかわからなかった。

 自分で料理をするだなんて、ありえないことだから、パンでも買おうと思った。

 だけど、今、現在、お金を持っていなかった。

 シイナレンラジ家からもらう慰謝料の支払いについては、すぐに支払ってくれるとのことだったし、近いうちに家に持ってきてくれるというので、それまでは家にあるものを、調理はせずに、そのまま食べたりして過ごしていた。

 そして、2日後の朝、食料のストックがなくなり、途方に暮れていると、家の扉がノックされる音が聞こえた。

「どちら様?」

 お金を持ってきてくれた人かと思った。

 でも、どんな人かはまだわからないから、鍵は開けずに尋ねた。

「シイナレンラジ家の遣いの者です」

 お爺さんらしき声が返ってきた。
 窓から、こっそり外を覗くと、知らないお爺さんだけれど、身なりの良い男性が立っていて、扉を開けると袋に入った現金をくれた。

 私はそのお金で、まずは顔を治すことにした。

 手術をしてから包帯をはずすまでは長い日にちがかかった。
 顔を元に戻す治療は、とても痛かったし大変だったから、もう二度とやりたくない。

 買い出しなどは慰謝料のお金の一部で人を雇って、色々としてもらった。

 そして、やっと包帯が取れた日。
 鏡の中の自分を見て幸せな気分になった。

 以前の私に近い姿に戻っていたから。

 かなり痩せてしまったけれど、美しさは治す前とは比べ物にならない。 
 もちろん、怪我をする前の私の方がもっと可愛かったけれど、これについてはしょうがない。

 お金もなくなってきたし、これからはこの顔でパトロンを探さないと。

 ずっと待っているのに、アズは一度も私を訪ねてきてはくれなかった。

 それなのに、私はアズを諦められなかった。

 私が片思いで終わるだなんてありえなかったから。

 通いの家政婦に作ってもらった夜の食事を終え、物思いに耽っていると、扉が叩かれた。

「……誰なの?」
「僕だよ」
 
 この時の私は、アズの事を考えていたから、相手がアズだと思い込んだ。

「アズなの!? アズなのね!?」

 会いに来てほしいと願っていたから、願いが叶った!

 そう思って、迷うことなく扉を開けた。

 けれど、扉の前に立っていたのはアズではなかった。

 黒のフードをかぶっていた男性は、私と目があうと、にやりと笑った。

「やっぱり、王太子殿下とつながってたのか……。くそっ。でも、前ほどではないけれど、美しさが戻ったね。さあ、俺と一緒に行こう。それで許してやる」
「あ、あなたは……!」

 私の前に現れたのは、私に暴力をふるったフィール様だった。

 そのことに気が付いた私は慌てて扉を閉めようとしたけれど扉をつかまれてしまい無理だった。

「どうしてあなたがここに……?」
「ルピノのせいで、俺の人生は無茶苦茶になった。その責任を取って、ルピノは一生、俺と一緒に生きるんだ」

 フィール様はそう言うと、私のお腹にパンチをした。

 痛くて苦しくて床にしゃがみ込む。

 すると、いつからいたのか、フィール様の後ろから人が現れて、家の中に入ってくると、わたしを担ぎ上げた。

「アズ……」

 助けて!

 祈ったけれど、私の願いは届かなかった。

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