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エピローグ
しおりを挟むルピノがフィール様に連れ去られたと、昼食を食べ終え、お茶をゆっくり飲んでいる時に部屋にやって来たアズから教えられた。
フィール様はルピノ達に暴行したことで罪に問われていたけれど、最近になって保釈されていたため、ルピノの顔が治ったと同時に、彼女の前に現れたようだった。
「シイナレンラジ伯爵夫妻はルピノ嬢を憎んでいるし、フィールは彼女を逃さないだろう。よっぽどのことがない限り、彼女は表舞台に姿を現さないと思う」
「そうですか……。教えてくださり、ありがとうございます」
「……大丈夫か?」
アズが心配そうに尋ねてきた。
大丈夫か大丈夫じゃないかと問われれば、大丈夫じゃないかもしれない。
この先のルピノのことを思うと、彼女には明るい未来など見えやしないから。
そして、ルピノに対して、シイナレンラジ家が動いても何もしない様にとお願いしたのは私だから、余計に罪悪感がある。
しかも、ルピノが絶望して生きることを諦めないように仕向けたのだから余計に、そう思うのかもしれない。
ルピノはこの国に来てからアズに一度も会えていない。
女優になることを決めたのだってアズに会う為だった。
アズと再会するまでは、ルピノは生きることを諦めない。
そして、長く生きていくうちに精神的にも大人になって、自分のやったこと、思ったことが間違っていたんじゃないかと思ってくれるようになってほしいと願う。
「ルピノ嬢のことについては、引き続き見張らせるから心配しなくていい」
アズは忙しいのか、話を終えるとすぐに座っていたソファーから立ち上がった。
「アズ、ありがとうございました」
「どういたしまして。というか、当たり前のことだろう?」
「ルピノのことだけでなく、今までのことも含めてです。アズがいなかったら、私は今のように暮らせていなかったと思います」
言葉を区切ると、立ち止まって話をしてくれていたアズは黙って体をこちらに向け、私の言葉の続きを待ってくれた。
そんな彼に近付いて口を開く。
「アズが助けに来てくれたから、今みたいに笑っていれると思います。そして、強くもなれました。本当にありがとうございます」
ヒールが高い靴を履いているからか、いつもよりも彼の顔が近く感じて、勢いで頬にキスをした。
「諦めなくて良かった」
アズはそう言って微笑むと、私を抱きしめてきた。
「ア、アズ!?」
「……心配事も落ち着いたし、王太子妃教育も進んでるようだから、そろそろ、結婚の話を進めようか」
さっきまで帰ろうとしていたのに、アズは一度体をはなし、私を横抱きすると、そのままの状態で歩き、ソファーに座った。
「お仕事がお忙しいのでは!?」
「忙しいけど、今は君のほうが大事かな」
上機嫌なアズを見て思う。
こんなにアズに大事に思ってもらっているんだもの。
価値がないなんて言われたことがあったけれど、そんなことはないわよね?
「アズ」
「なに?」
「幸せにしますね」
「それ、僕が言うセリフじゃないか?」
「特にどちらが言わなければならないなどとは、決まっていないと思います」
微笑んで言うと、アズは歯を見せて笑う。
「そうだな。僕も君を幸せにするよ」
人の考え方や価値観なんて、すべての人が同じであるわけがない。
とある誰かにとって、私は価値のない人間かもしれない。
だけど私には、私を必要としてくれる人がいる。
それだけで十分だわ。
王太子妃として、王妃として、ソラウの国民が1人でも多く幸せになれるように、アズと一緒に尽力していきたいと思った。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、他作品でお会い出来ますと幸せです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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