【完結】お姉様ごめんなさい。幸せになったのは私でした

風見ゆうみ

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19  効果のない脅し ①

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 ロヴァンスは目の前のファリアーナに、驚きと共に興味深さを感じていた。自分の妻になった時は大人しい女性で、こんなことを言うタイプではなかった。短期間でこんなにも人が変わることがあるのだろうかと、無言でファリアーナを見つめた。

「「話を聞いておられますか?」」

 眉根を寄せたアシュとファリアーナに尋ねられたロヴァンスは、慌てて答える。

「そのことについては本当に申し訳なく思っている。ただ、彼女も大人だ。してはいけないこととそうでないことくらい自分で判断できる年齢なんだ。部屋に閉じ込めるまではしなくても良いと思っていた。これは俺の判断ミスだ。許してほしい」
「謝罪だけでは意味がないと、先程もお伝えしました。社交場ならまだしも、わざわざ公爵家に訪ねてくるような暴挙を許すことはしないでください」

 アシュに睨まれたロヴァンスは何度も頷く。

「許すことはしません。ただ、彼女がこれこらどうするかは私が関与できるものではない。なぜなら、私は彼女と離婚するからだ」

 今まで下手に出ていたロヴァンスだったが、強気な口調で答えた。

(離婚すれば何もなかったことになるとでも思っているのかしら)

 ファリアーナが眉間のシワを深くすると、ロヴァンスは微笑む。

「ファリアーナ、シルは君の姉だろう。縁を切ったと言っているようだが、血の繋がりを切ることはできない。今回は君の姉ということで」
「許しはしません。ただ、私からニーカ侯爵に迷惑料や謝罪を求めることはいたしません」
「……ありがとう」

 ロヴァンスはホッとした顔をすると、勢いよく立ち上がる。

「では、本日は失礼させてもらう」

 ファリアーナたちの気が変わらないようにと、焦って出ていくロヴァンスをメイドたちが追いかけていく足音が聞こえてきた。

(私はと言っただけで、レイン公爵家からについては何も言っていないのに……)

 二人きりになった部屋で、ファリアーナが呆れていると、アシュが大きなため息を吐く。

「本当に僕はまだまだなめられているな」
「相手は自らが爵位を継いでいますし、アシュ様はまだ爵位を継いでいませんから、上に立った気になっているのでしょう」

 ファリアーナはそう答えたあと、アシュの返事を待たずに話題を変える。

「ニーカ侯爵の件はあとで改めて対処の方法を考えましょう。それよりも、シルフィーナさんはアシュ様になんと言ってきたのですか?」
「……秘密をファリアーナに知られたくなければ、自分をもう一度妻にしろって。しかも、ファリアーナは愛人にしろとまで書いてあった。どうしても君の幸せを阻止したいらしい」
 
(私の目の前でアシュ様と仲良くするつもりなのね。本当に悪趣味だわ)

 ファリアーナは苛立ちを抑えて、アシュに尋ねる。

「もし、その秘密を私に知られたら、アシュ様の命が危なくなったりするのでしょうか」
「それはない。ただ、ファリアーナに嫌われるかもしれない」

 目を伏せたアシュを見たファリアーナは、普段とのギャップに胸を高鳴らせたあと、すぐに気持ちを切り替える。

「では、シルフィーナさんに暴露される前にアシュ様から私に、その秘密を教えていただけませんか? そうすれば、シルフィーナさんの脅しは無意味なものになります」
「……情けない話だけど、嫌われると思うと怖いんだ」
「嫌ったりなんかしません。……あ、隠し子とか、愛人がいらしたら、嫌いはしませんが驚きます」
「……わかった」

 笑顔のファリアーナを見て覚悟を決めたアシュは、彼女を隠し部屋へと案内したのだった。
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